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紙の本
情報も論文も取捨選択が大事です
2006/04/15 01:20
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:半久 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトルから見て、統一の取れていないバラバラな「論文集」になっている。内容も玉石混淆。サワリのサワリにしかなっていないものもある。
例えば第2章、『情報ハンディキャップ』は7ページしかない(ページあたりの字数も少ない)。短いことのみで悪いというのではない。やりようによっては中身の濃いものも書ける。だがこれは、ネット検索と数冊の参考書に新聞記事などを参照すれば大学生にも書ける程度のもの。結論も凡庸↓。
《しかし、このような情報ハンディキャップは適切な教育によりかなりなものが回避できると考えられる。そのためには、インターネット利用者が経験的学習ではなく系統的にネットワークリテラシと情報ハンディキャップ、トラブルの関係を認識し学習していくことが必要である。》
第11章『聴こえない英語の音』は、テーマは興味深い。日本人が、ネイティブスピーカーの発音が聞き取りにくいのはなぜかという話だ。英語と日本語では子音と母音の出現頻度が異なる。英語の方が子音の密度が高く、英語の子音には相対的に日本語と比べて周波数が高いものが多いという事実を教えてくれる。そこから「英語耳」を作るという話になっていくのだが、これも7ページしかなく、尻切れトンボとなっている。
いやはやなのが、第7章『コミュニケーションは会話から』。《最近の若者たちを見ると、どうも将来、われわれ世代のような人付き合いや、人脈作りができるかどうか、心配な人達のように思えてならないのである。》と、よくある根拠のない「今時の若者論」から始まる(あなた達だって上の世代から「心配」されていたんですってば)。
そうして、人付き合いや人脈の作り方をレクチャーしてくれるのだが、引き合いに出す格言も含めて、ノウハウ本に書いてあるようなことばかり。最後はお決まりの、(さりげなくだが)経験自慢というパターン。
そもそも、これは情報の「ウソ」と「マコト」とは、何も関係ない話ではないか。
主題と関係があってそこそこ水準レベルなのは、第1章『ダイオキシン訴訟』、第5章『ネット取引と消費者トラブル』、第6章『遺伝子組み換え食品表示の「ウソ」と「マコト」』、第8章『マネーをめぐる情報の「ウソ」と「マコト」』くらいか。
関係は薄いが読めるものとして、第10章『コンビニの利便性とリスク』をあげる。
『ダイオキシン訴訟』は、テレビ朝日の『ニュースステーション』の報道に端を発した所沢農家風評被害訴訟を追っていて、読み応えはある(本書の4分の1弱を占めている)。
ただ「おわりに」でこう述べているのが気になった。
《この番組が社会に対して及ぼした衝撃度は大きく、国民の不安を最高潮に高め、ついにダイオキシン法制定の起爆剤的役割を果たした。しかし、この番組が周到に練られたように、この番組そのものも、遠大な計画の下に練られた一齣にすぎないと私は考えている。この放送の前後に何があったか、それに気がつけば一連のシナリオを読み解くことができるだろう。
ダイオキシン法は、およそ二〇年かけた遠大な構想の下に練られてきた最終産物であり、裁判官といえども容易にその全貌を見抜くことができなかったことは同情に値する。》
「遠大な計画」とか「およそ二〇年かけた遠大な構想」って何だろう?
なにやら背後に得体の知れない巨大ものがいるようで不安になるが、著者は具体的には明らかにしてくれない。
これは、論拠を提示せず「不安をかき立てる」論法の一種に思えるのだが・・・。
まとめると、アンソロジーものでは、編集者の役割が死命を握ると言っても過言ではない。編集者には、論文の吟味と適正な取捨選択をお願いしたい。かなり大甘の★3つ。
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