紙の本
性中枢は正常化したようです
2004/07/06 07:43
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:13オミ - この投稿者のレビュー一覧を見る
見てきたようにモノをいいという講談のセリフを借りたくなるような矯正の全記録。まあ、本人への取材がなかったとすればここに書かれていることが本当のことなのかどうか疑わしい。でも本人と会えるわけないし、本人が語るはずもないから矯正したかどうかは闇ですね。
神戸児童連続殺傷事件の犯人Aが仮退院しました。彼は本当に矯正したのかという世間の疑いの目を晴らす物語。この更生プロジェクトが成功したという観点から描かれている。説得力があるのは、少年Aと矯正官たちの医療少年院での言葉の掛け合いや動きが詳細に載っている点である。また、矯正手法が論理的で納得のいくようなものであるという点。ここまで細かい矯正ルポはないと思う。
彼が犯した罪の根源にあるのは「性的サディズム」だ。人を殺すという妄想で自慰行為をした。それが昂じて本当に人を殺すという行為に走ってしまったらしい。だから、彼は女性の身体には全く欲情を感じたことはなかった。それが、矯正施設内において遅ればせながら女性に欲情を感じて自慰行為に走ることになった。この部分は矯正の一段階を経たという説得力がある。性中枢の未発達が存在していたのだ。
脳の部分に関しては「直観像素質者」であるという鑑定結果が出ている。これは見たものを写真のように記憶できる。本書では論じられていないが、直観像は短期記憶の異常の疑いがあると推測できる。
また、少年Aの生い立ちについても触れているが、精神鑑定にあたった医師の言及の中で「母子一体関係の時期の短さが、Aに最低限の満足を与えなかった」とある。ここで著者は次男が年子で生まれたことを理由に挙げているが、年子なんてのはよくあることでそれは愛情不足の原因としては弱い。また、随所に母親の躾の問題を挙げているが、子どものSOSのシグナルなどはそうそう簡単に発見できるものではない。2面性についても触れているが、そんなものは誰でも持つ。
精神鑑定医らは親の虐待を指摘しているが、本書ではあまり触れていない。私見だが、かなりの虐待があったように思う。その部分の解明が待たれる。が、誰ももう解明しないだろうなあ。
矯正プロジェクトの一環の中で内観法やロールレタリングといった手法を取り入れたことが書かれているが、所内における少年Aと矯正官たちとの葛藤がよく描かれていると思う。
重大殺人を引き起こす者に共通して見えるのではないかということを研究した人がいる。3つの条件がそこにはあると言う。脳の器質的障害・精神疾患・幼少期の被虐待だ。今回のケースも強引かもしれないが当てはめることが出来る。直観像は左脳への問題に疑いがある。離人症状や解離傾性の存在。親の虐待。この仮説に基づいて矯正をしていくという考え方を国はもっと真摯にやっていくことが必要だと思う。そうしないと重大殺人者出現の予防につなげることはできない。予防は大切。それについて論じている本はほとんどない。
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どんな治療を受けてきたのか、ほかのこういった本は、読んだことないので比べられないが そのときの彼の状態などくわしく載っていた。
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これは少年Aの本の中で一番好き。少年Aの全てが書いてあるといってもいいくらい。少年院での出来事も書いてあるし。事件前から事件後まで幅広く書いてある。
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『少年A矯正2500日全記録』草薙厚子著(文藝春秋)を読む。
少年犯罪は後を絶たない。そして悪質化している。ネット社会がこれだけ急激に発達し、子供は大人の手の届かない場所に行こうとしている。
まだ心の柔らかいこども達。彼らの心の中に今のこの社会は何を植え付けているのかな?すべてがなんだか早すぎる世の中。
このままじゃ、いけないよね。。。
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少年が更正(本当か?)していく姿を彼の生活を追って描写している。僕が彼の吐く言葉に透明感を最後まで感じることができなかったのは、文字でしか情報が伝わっていないからであろう。
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事件があったときから少し気になっていて、読んでみた。
初めて買った事件の本。すごく詳しく書いてある。
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「少年A」の状態や矯正プログラムに関わった人たちの思いが客観的に伝わってきて読みやすかった。こういう積み重ねがこれからも大事なんだなぁ,と思った。
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少年A(酒鬼薔薇事件)と呼ばれた人物の『矯正』が載ってます。
かなり詳しく書かれています。
矯正というか、更正というか…出来ているんでしょうかね?
加害者に対してどうするつもりなのか。
その後もリアルタイムで追って欲しい事件です。
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少年院での矯正の記録がリアルに描かれた一冊。
性的サディズムであった少年の異常と言われた性癖で
起こった残虐な事件。
このような事件を二度と繰り返してはいけないと大人たちが立ち上がり真正面から少年と向き合った記録に私は感動しました。
被害者側の著書も読みましたが、この事件は一言では片付けられない人間の複雑な心理が絡み合っているように感じられました。
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好奇心が満たされるという点では面白いんです。Aのご両親の手記を読んだときもそうだった。だけど、この本を読んで何がよかったのかと訊かれると、答えに窮してしまう。それは多分、被害者や被害者のご遺族のお気持ちを考えると、「これでは届かない」とどうしても感じてしまうからだろう。書かれていることは事実でしょう。Aが「矯正」され、目に見える変化があるのは事実でしょう。私は、本当に矯正されたのかだとか、仮退院は大丈夫なのかだとか、そういう心配はしてないんです。ただ、被害者やご遺族のことを考えると、Aの現状との乖離というか、あまりにも世界が違う気がしてしまって。つまり、Aの目覚しい(?)変化に対して、ご遺族のお気持ちは事件からずっとずっと変わっていないということを考えると、このような本を読んだときどうしてもすっきりしないんです。また、Aのご家族のことも。
想像を絶するので、軽率なことは言えない。だけど、Aのように動ける者は動ける分、苦しいと同時に救われる部分もあると思うんです。努力の余地があるって、未来があるってことだから。一方、時間が過ぎるのを待っているだけだったり、動き方がわからなくてどうにも留まるしかない者、その、自分は動けないのに流れ続ける時間のなかに身をおく苦しみっていうのは、それはそれは、自らと社会を引き破られるような痛み、人生をうらんでも仕方のないような苦しみではないのだろうかと思います。個人的な意見だけれども。
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こういってはなんだが、さして、面白くなかった。
だが、これをきっかけに、作者が少年事件にのめっていくのは、よく理解できる。書き足りない書けない、物足りないもどかしい感がそこかしこにあふれていると思う。
だが、リベンジともいうべき、「パパ殺しちゃった」はもっと、別の書き方があったと思うし、なんでもかんでもカミングアウトすることが、真実に近づくことでもあるまいに。
とはいえ、参考書として、すぐれているのは否定しようがなく、当事者にとって、永山則夫事件同様、少年Aからスタートするしかないっしょ、といった感じ。
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母親の手記とは印象が異なる内容。こちらの方が興味深かった。
概ね、内容には満足。最後の一章とあとがきは蛇足かとも感じたが、それ以外は作者の感覚や、整理のついてない感情が抑圧されていて、ノンフィクションとして読みやすい。
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日本中を震撼させた、神戸連続児童殺傷事件(1997年)。 事件についてはWikipediaを参照。 事件当時14歳だった犯人の少年Aは、医療少年院に送致され、社会復帰に向けての治療、教育を受けることになりました。性的サディズムは克服できるのか。社会復帰は可能なのか。 事件を起こすに至った精神状態がどのように形成されたのかを検証し、それを克服するためのプログラムが組まれます。 少しづつ成長してゆく少年の精神を追ったドキュメント。 少年院で何が行われているのかを知るのにも役立ちました。 (本の感想と、この事件の処理に対する私の感想は別です。念のため)
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神戸児童連続殺傷事件から七年、少年Aがついに仮退院した。医療少年院で行われた極秘の贖罪教育・矯正教育を初めて明かす衝撃のリポート!東京少年院の単独室に取り付けられたカメラで、Aの生活は二十四時間監視されていた。壁にぐったり寄りかかっている丸坊主のAは、まるで萎びた野菜のようだった。少年に生きるエネルギーを取り戻させるには、赤ん坊から育て直すプロセスが必要だ。「赤ん坊包み込み作戦」がスタートした―。
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少年Aといえばこの人、というようにすっかり有名になった彼。少年院での記録を淡々を書いたもの。こういうのって表によく出てきたなって感じ。ほんとに取材に応じて話す人がいるんだろうか。超極秘事項じゃないのか。被害者側にしてみれば到底許せないだろうけど、やはり即死刑というのには賛成できない。性的サディズムが治るのか。今彼はどうしているのか。どこかで跡を追ってる人はいるんだろうな。とは思う。恐ろしい。そっちの方が気持ち悪いけどな。犯罪を犯した人が叩かれるのはともかく、その家族や周囲の人まで責められる必要はないと思う。鬼の首をとったように弱いものいじめのように群がって叩くマスコミ&一部一般人にはへどが出る。