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紙の本
後に続く人々のために地図を創る先駆者の仕事を記した好著
2004/11/27 10:04
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投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
劇団「青年団」の主宰者・平田オリザ氏の「受験の国のオリザ」は1982年の大学入試に向けた自身の受験生生活を綴った記録でしたが、本書「地図を創る旅」は大学入学後に創設した劇団の91年までの活動を記した書です。
あまりの面白さに、一日で一気に読み終えてしまいました。
ICUの学生演劇集団として始まった「青年団」が、その独自の演劇手法を試行錯誤しながら作り上げていく様子を丹念に綴っています。
「新しいオーソドックスを作る」ことを目指す創作への強い意欲、とはいうものの果たして認められるのかという大きな不安、そして「世間に絶対認められる」という(一見根拠薄弱な)自信。先駆者が抱く諸々の心情が素直に記されていて、とても魅力あふれる記録となっています。
当初は決して好意的とはいえなかった演劇評が、やがて激賞にまで変遷していく様や、それを時にシニカルに、そして時に喜びをもって受けとめる著者の言葉も大変興味深く読みました。
80年代の折々に著者自身が発表したかつての文章が本書ではたびたび引用されていますが、そうした文章に対して「あぁ、なんだかとても難しいことを書いているなぁ。」「それにしてもたいへんな自信だなぁ。と四十歳を過ぎた私は、二十四歳の私について思う次第です。」(123頁)などと苦笑してみせるのです。著者と同年齢の私も、自分の青かった時代を懐かしく、そして時に苦く思い出すことがよくあります。そうした思いを抱える年齢になった著者の「あの頃を振り返る」作業が、私の心に添いました。
「青年団」による舞台で私が見たことがあるのは「東京ノート」だけですが、欧州で起きている戦争とまるで無縁であるかのように、東京の(戦争に比べれば)些細な家族の出来事が静かに語られるこの芝居にとても心ひかれたものです。あの舞台に込められた思いや手法について、理解を深める上で本書は大変役に立つ一冊でもありました。
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