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紙の本
雨に濡れても
2006/05/04 13:06
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:松井高志 - この投稿者のレビュー一覧を見る
今年は小泉信三没後40年にあたる。この本は、一昨年にまとめられた、小泉信三のスポーツに関する随想集である。テニスプレーヤーであり、また多くのスポーツ、とりわけ野球を愛好した著者の「教育・人生とスポーツとの関わり」についての数々のエッセイ(講演録を含む)がまとめられたものである。
表紙のタイトル(これ自体が著者の名言である)の上に、いわば英題として、「Be a hard fighter、 and a good loser」(帯の日本語訳は「果敢なる闘士たれ、潔き敗者たれ」)とあるが、これも著者の口癖であった。元プレイヤーであるだけに、あくまで勝敗にはこだわり、しかも公正に勝つことにこだわり、また、いくつになっても勝負に熱くなる。悟ったようなふりはしない。それでいいのだ、と著者は教える。
私はスポーツ選手ではなく、今はただの野球観戦者でしかないから、小泉博士のこの本から得た教訓は2つ。ひとつは、リードされたからといって試合途中で席を立たないこと(208ページ「信なきものは去る」ほか参照)、もうひとつは雨が降ったぐらいでじたばたして傘などさしたり逃げ出したりしない」(270ページ「衣食と礼節」参照)ことである。「雨に濡れる濡れ方一つにも、国民の教養と礼節とが窺われる」といい、「小人は窮すれば乱す」という。
章間コラムは著者ゆかりの人々が語る「わが小泉信三」といった趣。「先生は勝ちたがり屋であった」という、始球式の想い出などを語った前田祐吉元慶大野球部監督のコラムが良い味わいである。
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