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紙の本

シャーロットになりきってしまった私

2004/08/18 23:11

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:まざあぐうす - この投稿者のレビュー一覧を見る

 シャーロットは、画家である父親に連れられてアメリカからフランスに渡り、ノルマンディの田園地方ジベルニィという土地で過ごすことになりました。親友のリジーからもらった日記帳に、その日々をつづります。

 初めて覚えたフランス語が、en plein air 「外気の中で」でした。ジベルニィは、印象派の巨匠モネが最初の妻を亡くした後、アリス・オシュデと彼女の6人の子どもたちと43年間過ごした土地です。
 シャーロットの父親のような画家たちが、印象主義の絵を学ぶためにたくさん集まって来ていました。そして、アトリエから出て、戸外で絵を描いていました。
 「パパがかこうとしているのは、そのときに自分のとらえた光であり空気であり色であり、つまりそれらの印象なんだよ」というシャーロットの父親、お昼になることには、ジベルニィの原っぱじゅう印象派の画家たちと白い日傘でいっぱいになっていたと日記に書かれています。
 
 1892年4月24日に始まり、1893年4月14日に終わる一冊の日記帳は、パリの街を初めて見たときの感激、画家たちが泊まるホテルの壁に書かれた絵の由来、セーヌ川でのピクニック、ジベルニィが作った小さな菜園、月夜の舟遊び、果樹園の桃や杏やプラムのみずみずしさ、モネのお嬢さんの結婚式、モネのアトリエと庭園の美しさ…シャーロットの期待や喜びや感動に満ちています。
 「ジベルニィのシャーロット」は、最初にジベルニィを訪れたアメリカ人の画家セオドア・ロビンソンの膨大な量の日記から着想を得て創られた絵本です。シャーロットは実在の人物ではありませんが、40歳を過ぎた私はすっかりシャーロットになりきって、その日々を楽しみました。シャーロットがどこにでもいそうな普通の女の子だからこそ、シャーロットになりきることができたのだと思います。

 日記の間にちりばめられた印象派の絵が美しく、また、親友のリジーからの手紙やイラストがたまらなく可愛い。日記の続きが読みたいと思うのは私のわがままでしょうか? きっと明日もいい日になるだろう。そんな予感が私の心のガラスのビンにすみれの花の砂糖づけのように満ちてきました。大人になったあなたに、さりげなく子どもの心を取り戻してくれる一冊かもしれません。

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