紙の本
笑える小説、っていうのとは正直、違う気がするんですね。どちらかというと、脱力小説。もう、それってありかよって。ま、タイトルからして、わかるんですけど
2004/09/20 18:25
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
じつは、新聞でこの本の広告を見た時、愕然としたのである。タイトルの馬鹿馬鹿しさは分かるのである。いかにも田中らしい匠の技である(でもないか)。勿論、綿谷りさ『蹴りたい背中』を意識した、いかにも脱力作家田中らしい一冊であると。しかし、遺稿集とは何だ? あの田中啓文が死んだ? いつ? ドーシテ?
慌てた。久しぶりに日本文学界に登場したワライ(話題ではない、決して)の作家である。もう、読めないのか、もう途中で本を投げ出させる《なげやり》《うっちゃえ》という大技を読者に掛けることは無いのか、文学事典を、人名事典を、世界文学全集を、吉本お笑い人物名鑑を探したのである。
死亡記事どころか田中の名前(爆笑問題のほうは、載っていた)すらないではないか。思わず、高一長女に言ってしまったのである「タナカガシンダ」うーむ、逆さまから読むと「ダンシガカナタ」、「男子が彼方」、いかにも女子校に通う娘にふさわしい言葉である、ん? 混乱してるか。
ともかく、カバーがいい。小松藤茂は、いつもこういう作品を描くのだろうか。気になるなあ。
「第二次大戦下で鬱屈する少年兵たちの、複雑な心象を描破した珠玉作「蹴りたい田中」で第130回茶川賞受賞後、突如消息を絶った伝説の作家・田中啓文。以来10年、その稀有なる才能を偲んで、幼少時から出奔までの偉大なる生涯を辿る単行本未収録作8篇+αを精選、山田正紀、菅浩江、恩田陸などゆかりの作家・翻訳家・編集者らによる証言、茶川賞受賞時の貴重なインタビュウ「未到の明日に向かって」までを収録した遺稿集」
でだ、まず目次が笑えるのである。
はじめに、として『蹴りたい田中』編集委員の文がある。以下【茶川賞受賞記念インタビュウ】「未到の明日に向かって」、【昭和41年 田中啓文、3歳】寄稿:北野勇作「地球最大の決戦 終末怪獣エビラビラ登場」、【昭和49年 田中啓文、11歳】寄稿:浅倉久志「トリフィドの日」、【特別収録 幻の続編発掘!】寄稿:山岸真「トリフィド時代」、【昭和51年 田中啓文、13歳】寄稿:山田正紀「やまだ道 耶麻霊サキの青春」、【平成4年 田中啓文、29歳】寄稿:恩田陸「赤い家」、【平成7年 田中啓文、32歳】寄稿:月亭八天「地獄八景獣人戯」、【平成13年 田中啓文、38歳】寄稿:塩澤快浩「怨臭の彼方に」、【平成16年 田中啓文、41歳】寄稿:大森望×豊崎由美「蹴りたい田中」、【平成26年 田中啓文、51歳?】寄稿:菅浩江「吐仏花ン惑星 永遠の森田健作」。
以上に、あとがきにかえて、田中啓文年譜、田中啓文文学大賞創設のおしらせ、がつくのである。
嘘か誠か、自伝風に過去を語る「未到の明日に向かって」、本当に扉の画は、3歳の田中少年のもの?「地球最大の決戦 終末怪獣エビラビラ登場」、巨大なきのこ?「トリフィドの日」、これで終わるの?「トリフィド時代」、山田正紀は偉大なり「やまだ道 耶麻霊サキの青春」、本格推理?「赤い家」、きったねえなぁ「地獄八景獣人戯」、くっせぇなぁ「怨臭の彼方に」、アイデアは凄いかも「蹴りたい田中」、ルビがないから読めんかった「吐仏花ン惑星 永遠の森田健作」。
ちなみに、各章の扉に出ている山田正紀や恩田陸といった綺羅星のごとき作家たちの文章だが、本物なんだろうか。田中啓文のことである、けっしてまともなものではない、そんな疑惑が我が家では持ち上がっているのだが。
で、思うんですけど、田中啓文って横田順彌ではない? だって、駄洒落落ちのレベルが、あんまりにもハチャハチャで…
紙の本
自らをパロディ化
2017/01/13 10:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
福島正美の「SFの世界」や「バーミリオンサンズ」など、国内外のSFに対する敬意が感じられた。時空のかなたに消え去ることなく、新作を発表し続けてほしい。
投稿元:
レビューを見る
ひどい!
ここまでひどい小説を読んだ事はない。
でも、大好きだ!
茶川賞受賞作と帯にうってあって、冗談で済まされないんじゃないか、という凝り方(赤い帯というのも、蹴りたい背中のパロディであろう)
田中啓文さんのお話というのは、はっきり言って「通」好みで、決して文章も巧いというわけでもなく、ストーリーも面白い、と言えない(とくに短編はピンキリがはっきりしている)
では、何が魅力かと言えば、その脱力感であろう。
山田正紀に神狩り2を早く執筆するよう頼みたいけれど、きっと彼なら「やあ、まだまだ先」と言うだろう。
なんていう文章が、さらりと紛れ込んでいる。
「赤い家」なんてもっとひどい。肝心なトリック部分が駄洒落で終わっているのだ!
はっきり言って、途中に出てくる駄洒落も溜息しか出ない。
でも、大好きだ!
たぶん、普通の人が買ったら、本を壁に投げつけるか燃すかのどちらかであるが、私はこの本を是非ハードカバーで買いたかった。
素敵な装丁と、内容の凝り方をもっと突き詰めて頂きたかった。
この本は復刻版であるからついていない、という設定の付録も欲しかった。
はっきり言って、面白くはありません。
でも、良いんです。それが。
星一個は、最大の賛辞。
投稿元:
レビューを見る
「銀河帝国の弘法も筆の誤り」に続くSF短編集第二弾。例によってダジャレとグロとバカが基本で楽しい。アイディアの核がダジャレでも、プロットはSFが溢れてて、でも最後はダジャレで、もう大好きである。ヨコジュンのハチャハチャSFをどこかで既に越えて、ダジャレ小説に関してなら暫定チャンプではないか。「赤い家」なんて、SFハードボイルドの名作ですらあるのではないかとか、「地獄八景獣人戯」のラストの脱力感はもはや癒しではないかとか、いや、ほんと名作揃いであると俺は思うのだけど、どう?
投稿元:
レビューを見る
何が良いかと言えば、作者自身が「これは馬鹿馬鹿しい」と分かっていてやっているところ。下手に高尚ぶられては、最悪なのだが。万人には薦められないが、好きな人は好きだろうという類の作家だなあ。
投稿元:
レビューを見る
いやー、何て言ったらいいものやら(笑)。清水義範?パスティーシュ?読みにくいんですけど、駄洒落にところどころ爆笑しちゃったりもして。「おぬしもアルジャーノン」というセリフには吹き出してしまいました。ぎゃふん。あ、「蹴りたい背中」には全く関係なかったです(笑)。
投稿元:
レビューを見る
平成15年度下半期の第130囘「茶川賞」受賞作。
41歳の瑞々しい感性が描く青春群像。
くそっ、やられたっ!
ここまでやるかぁ?
2004年7月22日讀了
投稿元:
レビューを見る
気合を入れて読まないほうが良い。
駄洒落、オチなし、脱力、でも大爆笑は無い短編。
表紙のままの馬鹿馬鹿しさが渦巻いているので、一見まじめな文章に騙されると痛い目にあいます。
茶川賞受賞(そんなもの無いんだけど)に関する文章もどこまで信じたら良いのだろう?
でも悪くないんだよなコレ
投稿元:
レビューを見る
ギャグです。すべてが冗談の作品。でもあんまりおもしろくなかったなあ……B級っていうか3流って言うか。そう言うのが好きな人はどうぞ(笑)
投稿元:
レビューを見る
駄洒落含蓄SF本。
これはタイトルに魅かれて予約した本、内容は後から着いて来た感じ。
芥川賞だったか?《蹴りたい背中》って有ったやん?その同意的駄洒落に撃沈だわさ!
後書きに=作者失踪となっている。真実なのか?駄洒落なんか?
判断しかねるが、謎のままで読終しよーと思う。
投稿元:
レビューを見る
茶川賞受賞。タイトルからしてパロディな駄洒落SF。
####
本書に収録されているのは以下である。
未到の明日に向かって
地球最大の決戦―終末怪獣エビラビラ登場
トリフィドの日
トリフィド時代
やまだ道―耶麻霊サキの青春
赤い家
地獄八景獣人戯
怨臭の彼方に
蹴りたい田中
吐仏花ン惑星―永遠の森田健作
「未到の明日に向かって」
作者の対談という形式を取っている・・・が。
どこまでが真実でどこまでがネタなのかの判断ができない。
「地球最大の決戦-週末怪獣エビラビラ登場」
発想は「ΑΩ」と一緒。やっぱりウル○ラマン。
比べてみると面白いかも。
「トリフィドの日」
知性を持ったきのこが世界征服をたくらむ話。
ネタが飽和状態を起こして後半もう何がなんだか・・・。
最後の駄洒落に脱力。
「トリフィド時代」
上の姉妹作らしいが、これは実物を読んだほうが早い。
「やまだ道 耶麻霊サキの青春」
あ。いまこの作品のタイトルをIMEで出そうとしてようやく耶麻霊をなんて読むかわかった。
耶(や)麻(ま)霊(たま)サキ。ガクっ。
山田正紀の作品を読んでみたくなった。
「赤い家」
蚊というゲームのために書かれた作品。
蚊と人間が手を組んで事件を解決していく設定が新鮮。
なんだかんだと楽しんで読めた。
「地獄八景獣人戯」
これまた何がなんだかわからなくなる駄洒落が詰まった話。
ただ「おぬしもアルジャーノン」がやけにつぼにはまってしまった。
「怨臭の彼方に」
不老不死を手に入れる代償とは・・・。
絶対に食事前食事中には読んではいけない。
最後の駄洒落はオスカーワイルドですか。高尚ですな(エッ)。
「蹴りたい田中」
タイトルの元ネタとは何の関係もないと思われる。
大和魂万歳。
「吐仏花ン惑星―永遠の森田健作」
最後に向かううちに駄洒落の応酬になっているが、ラストは衝撃的。
いろいろな意味で。
全体として「銀河帝国の弘法も筆の誤り」よりネタ度と駄洒落度がパワーアップしている印象を受けた。中途半端な知識と理解力じゃ太刀打ちできない。絶対見落としているネタと駄洒落がいっぱいある。やっぱり駄洒落は知的で文化的なんだなと思った(本気かよ)。
投稿元:
レビューを見る
まず、「トリフィドの日」だ。
嬉しいじゃないですか、小林信彦だったかと思うけど原典のJ・ウインダムの「トリフィド時代」を絶賛されていて、集英社文庫の「トリフィド時代」を探し回った事があります。
結局、見つける事ができずに現在まで・・・
遂に田中啓文によって念願かなった?
やっぱり原典、読んでみたいです。
作品内容では「やまだ道 耶麻霊サキの青春」、「赤い家」が気に入りました。
投稿元:
レビューを見る
「蹴りたい背中」のパロディ……なんでしょうかな。
好きな人は好きなんだろうなぁ。
けど、私には面白いとは思えなかったけれど。
読む人を選ぶ作家という印象。
投稿元:
レビューを見る
「わしはシカゴのちりめんじゃこ問屋の隠居」
やられた!良い!パーフェクト!好き!
もうもう、ひたすら、ィエクセェレェーントッ!
ぜひとも音読をオススメする、アレでアレな傑作。
やわらかい頭で読むと、ますます脳がアレでアレなモッツァレラチーズになることうけあい。
田中先生の著書は、ひとりで読んで、ひとりでニヤニヤするに限ります。
え ふ ふ ふ ふ ふ !
投稿元:
レビューを見る
この年の上半期話題になったあの作品をパロったというか、題名だけ借りておちょくったような表題作の他、彗星の影響で知性を持ったキノコが人間に反旗を翻した……パニックSF風の【トリフィドの日】、永遠の若さを求めた美男俳優に、異星人が送った果実の副作用とは【怨臭の彼方に】等々短編9編他を収録。
えっと……「くっだらねー」の一言で済ませてもいいでしょうか。
駄洒落のオンパレードもこの著者の特色だし構わないんだけど、こうも立て続けにやられると少し疲れる。自分が好きなのはこれとはまた違う、この著者の味なんだけどなぁ……。
うーん。