臆面もなく同じような作品を書き続けることができる、というのが直木賞作家であることの証なら、なんてつまらない賞なんでしょう。藤田が例外であることを望みます
2006/05/08 21:06
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
「妻に先立たれ、息子と暮らす仕立て屋の淳蔵。彼の前に旧友の高瀬が突然現れた。高瀬の妻美保子と関係を持ったことのある淳蔵の心は穏やかではない」恋愛小説。
戦略的に恋愛小説を書いていると豪語する作家の直木賞受賞作ですが、その傲慢な宣言に、もう読んでやるか、と思ったのは私一人。ま、小説さえ良ければ文句は言えないんですけどね、結局『絵画修復師』あたりが頂点だったかな、なんて思ったりして・・・
東京の港区白金でテーラー・ムサシを営む宮武淳蔵。彼は妻に先立たれ、21歳になる息子 信也と2人暮らしをしています。彼の元に、昔の遊び仲間 高瀬昌平が現れました。28年ぶりの再会ですが、探偵を雇ってまでして彼の店を探し当てたという昌平の真意が見えて来ません。淳蔵と高瀬の妻美保子が関係をもったことがある、ということは昌平には知られていないはずです。
そうした淳蔵の不安をよそに、高瀬が持ち出したのは、美保子が重症筋無力症となり、昔のことを思い出しては淳蔵に会いたいと言っているということでした。既に終わったこととして片付けてきたことが、今になって自分に降りかかってきます。昌平の服を作るという口実で、高瀬夫妻が住む上田の塩田平を訪ねた彼を待っていたのは病み衰えながら、昔の恋にすがる美保子の姿でした。
そして、淳蔵の父親が経営していた旅館で働いていた太一と、その娘の佳世の出会うのです。佳世の母の千代子は、淳蔵が子供のころに密かに恋心を抱いた女性でした。その面影を残す佳代、今は画を教え、何とか画家としても暮らしている彼女との出会いが、2人の運命を大きく変えていくのです。
昌平との過去、美保子との不倫、佳世の起こした事件、父親 太一の不審な動き。そして淳蔵の息子 信也の心の底、亡くなった妻の思い。それらが絡みながら、銀座、軽井沢などを舞台に愛の劇が繰り広げられていきます。過去とは、一方的に縁を切ることの出来ないものなのでしょうか。
53歳の男と、39歳の女、2人が巻き起こす恋の波紋。こうかくと如何にも美しい物語に思えるのですが『艶紅』のときと同様、決してすっきりする話ではありません。まず、淳蔵が自分の意思を殆ど見せずに、巻き込まれていく姿が、あまりに受身で、いい加減こういう男ばかり書くのはやめてほしい気がするのです。
50代の男は、不倫やその類のことしか出来ないのか、渡辺淳一にしてもそうですが、いい加減手垢にまみれたこの手の話しを繰り返し書いて、「戦略」などというのは、無能な経営者の戦略談義ににて、傲慢どころか噴飯もの。しかも、『絵画修復師』にみられた文章の香というものすらこれ以降の作品では消えうせています。北上次郎はこの前後から藤田の作品を絶賛しはじめますが、私には皮肉としか聞えません。同工異曲の濫作より、もっと心の底から納得できる恋愛小説を読みたいものです。
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仕立て屋の涼蔵と友人高瀬昌平の再会から始まる。昌平の妻、美保子が印象的。
題名の『愛の領分』については「お前と佳世は愛の領分を分け合えるってことだ。」という昌平の会話で納得。光と影のコントラストが望めない影と影の関係を、愛の領分を分け合うという言い方は好きだけれど、全体的にずっと重くて共感できる部分も少なくて、しばらく読み返すことはないかなぁと。
表紙はそんな光と影の関係を表しているのね。
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第125回直木賞作品。渡辺淳一が文庫の背表紙にミニ解説をしている。仕立て屋の淳三が昔の親友とその妻に会いに信州に行く。そこで知り合ったもうひとりの女性、佳世との新しい恋。雰囲気が渡辺淳一に似ていなくもない・・。男と女だけに留まらない、長い人生にわたる心理描写が評価のポイントでしょうか。
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3月17日読了。仕立屋を経営する五十代の主人公が、過去の苦しい恋愛・本人たちは隠し通したつもりの三角関係などにとらわれつつ新しい恋愛を手に入れようとするが、そこにはいつも乾いた空虚さが漂い・・・。巻末の後書きを渡辺淳一が書いていることから分かるとおり、ま、大人の恋愛小説というべきか。主人公が作るスーツの描写が物語りに重厚さ・上質感を与えている。東京・長野(軽井沢)の距離感も心地よくもどかしい感じで、雰囲気を味わう小説か。この人の奥さんが小池真理子か〜プレッシャーのきつそうな夫婦だな〜
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年代が全然違うのにー。
これでハマってしまい、他の作品もたくさん読みました。
他のも同じ雰囲気で期待を裏切らないです。
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熟年の愛。
個人メモ
宮武淳蔵・・・仕立て人。若いころ、昌平とつるみ遊びまわる。美保子に恋する。
佐智子・・・淳蔵の妻
信也・・・淳蔵の息子。歪んだ性格?淳蔵に愛されていないせい?
高瀬昌平・・・事業に失敗し若かりしことのパワーを失う。急に淳蔵を探しだし会いに行く。
美保子・・・昌平の妻。いっとき淳蔵と関係をもつ。不治の病に冒される。
太一・・・淳蔵の父に救われる?
佳世・・・太一の娘。絵描き。昌平の愛人。淳蔵に惹かれる。
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中年ビバリーヒルズ高校白書。
なんていうと身も蓋もないけど、 ドロドロ恋愛劇場。
深い内容があるのかもしれないけど。
愛には、周波数がある。
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直木賞受賞作品ってことで、すごく楽しみにして読みました。
情景をものすごく緻密に思い浮かべることができるので、私は藤田さんがとても好きです。
息子のその後がちょっと気になります。
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125回 2001年(平成13)上直木賞受賞作。東京、長野が舞台の恋愛小説。洋服の仕立て屋を営む主人公は、旧友から背広のオーダを受けて家を訪ねる。しかし、その友人の妻とはかつて不倫関係にあったのだ。そして新たな出会いと熱愛の始まり。これは本物のオトナ小説なので、中学生以下は読んではいけません。青年以上におすすめ。
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心地よい文体でスラスラと読み進むことができた。長く生きれば過去を背負う。相手の背負ったものを意識すまいと思えど、そのこだわりを払拭することは難しい。経験を重ねた恋愛であればこそ相手を思いやれる反面、相手の恋愛経験をも受け入れなければならない。過去への嫉妬、燃え上がる中でも理性を保った想い、大人の恋慕が綴られる。
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この人は同じ世界の人だ、違う世界の人だ、そう考える私にとって頷ける部分が大いにあった。人間関係において偏見はいけないけど、愛についてはやはり愛の領分、大事だと思う。
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中年になってからの恋愛は過去のしがらみやら、現在の自分の立場やら何かと絡んできて、感情のまま突っ走ることができない大人の恋愛を楽しませて貰いました。
主人公の淳蔵は友人である昌平の妻美保子とも関係を持ち、二十年ぶりに再会。
淳蔵を探し出したのは夫である昌平だけど、その理由がラストの方で明かされる。
美保子の淳蔵に対する執着は重い病気を患った故なのか、結局夫の方を選んでしまった後悔なのか、どちらにしても哀れでした。
巻末に書かれていた小池真理子さんとの出会いのエピソードも興味深かった。
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50歳を越えての恋愛ながら、それまでの遍歴がスゴい。友達の妻から、同じ女性に向かうところまで、ここまで行きますか。という感じ。女性の執着心というか、嫉妬心というかその辺りも全面にだし、普通の恋愛小説ではないがやっぱりある意味の恋愛小説ということなんだろうと思う。
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そだなあ。゛大人の恋模様”を描きたかったんだろうし、そこはドキドキして読んだけど。
ちょっとACすぎでしょ。大体、「だって母ちゃんのせいじゃん・泣」って言っていいのは、せいぜい20代までじゃない? ごめん、ドン引きだよ‥。(2018.5.10読了)
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図書館で。これ、直木賞受賞作なんだ~
こういう言い方をすると語弊があるかもしれませんが若くも美しくもない恋の話、みたいな感じ。まあ若ければ美しいのかと言われるとそこも微妙な所ですが。昔「恋は遠い日の花火では無い」なんてお酒のCMがあったけどまあ実際問題として遠い日の花火だからこそ美しいんだろうなぁ。やはり野に置け蓮華草って所なのか。
同性としてミホコさんの老醜を晒す姿がツライ。老いや病気で変わった事は恥ずべき事ではないのですが、何十年もたった後でなお、過去の男にいまだに影響力があると考えて取りすがる姿が痛々しくて悲しい。とは言え同じ年周りのダンナは普通に一回り以上年下の女性と浮気出来るんだから男性ってずるいなと思わなくもない。まあでもそう言う男性と平気で関係出来る若い女性ってのも良くわからないけど。
登場人物に共感出来る人がおらず、皆なんか自分の思い込みと過去の思いでに生きている感じなので、ここで終わりか、というような気持でした。それにしても主人公と息子は圧倒的コミュニケーション不足だと思うので犯罪に走る前にきちんと息子のことぐらい理解しようと努力するべきだとは思う。50になっても今の人ってどこか子供で、自分がやらなくてはいけないことよりもやりたい事ばかりを優先しているんじゃないのかなってこの本を読んで思いました。だから子供の事とかもどこか他人事なのかもしれないな。大人としての責任、親としての責任の方が自分の恋とか過去よりも優先されないのかな~
後書きがあった。ナルホド、アダルトチルドレンってこういう人なのか…。でも、きちんとした大人というロールモデルが居ないで成人した大人って事ならACは主人公の息子だよな、ウン。
それにしても母親に認めてもらえなくても自分で自分を認めてあげる事は出来ないんだろうか。そんな親にあてつけるような生き方をしなくても…と個人的には思ったりもする。