現代国語と古文の違いはあるけれど、田中貴子を知ったことは、斎藤美奈子を知ったとき以上の喜びといってもいい。それほどに共感できる本だった
2004/08/14 21:22
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波ジュニア新書の一冊。子供たちに、というよりは常識という名のもとに間違った教育を押し付けられて、それをそのまま次代に継いでいこうとする愚かな大人や教育者にぜひ読んでもらいたい一冊。ジュニア新書のなかでも、これほど筆者の言に共感を覚えた本はない。
「学校で習う古文には興味がもてなくても、実は古典はおもしろい! オカルトあり、恋愛ありのわくわくの宝庫から、おなじみの作品をわかりやすい現代語訳で紹介。自称「古文おちこぼれ」だった国文学者が、奥深くて不思議な古典の世界の楽しみ方、文法にしばられない原文の読み方を案内します。」
著者の田中貴子は1960年京都府生まれの文学博士。現在、京都精華大学の助教授。『あやかし考 不思議の中世へ』は、いずれ本書評で取り上げる予定だけれど、こんなにも痛快な意見を持った人とは思わなかった。正直、斎藤美奈子を読んだとき以上の衝撃というか、爽快感である。ぜひ、ご当人とお話をしてみたい。
全体は八章構成。教科書の古文が面白くないわけを教えてくれる序章「古文が嫌いになる前に」、もうこれだけで捻くれ屋の私を肯かせてしまうのだから、田中さん、あんたは偉い! 続いて、誰が教科書などに載っている「古典」を決めたのか、その政治的な意味合いを教えてくれる第一章「「古典」が生まれた背景」、いやあ、そうか、そうだよなとここでも納得。
で、ともかく文法の知識などを捨てて、まず面白そうなものを読みましょうという第二章「古文に慣れよう」。本当は、『徒然草』だって、面白い章がある、いや教科書に載っているところは、詰まらないものばかりだという第三章「『徒然草』を遊ぼう」。そして、まず、これくらいは暗記しても損はしないよと、第四章「百人一首うらばなし」。
夢枕獏もいいけれど、面白い話満載の古典、しかも皮肉に満ちた結末がいいぞ、と第五章「『堤中納言物語』より「花桜折る中将」を読む」。なぜ、紀貫之は女のふりして日記を書いたか第六章「女もすなる『土佐日記』」。説教の面白さを教えてくれる第七章「「しんとく丸」の死と再生」。田中が狂言の追っかけをやっていたと告白する第八章「能・狂言に描かれた女性たち」。現在も存在する愚かな教師像を見せてくれる、あとがきにかえて「私が古文を好きになるまで」。
カバーイラスト、本文カット=勝部尚子。カバーデザイン=シーズプランニングは、渋めだけれど、悪くはない。古文苦手の高一長女に読ませてみたら、やはり楽しんだらしい。ただし、彼女は文法、決して嫌いではないという。ふーむ、そうか、それは頼もしい。ま、それでも赤点スレスレというのが、我が子らしいのう、ほっほっほ。
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わたしは高校生の時にあまり古典について詳しく勉強してなかったから、頑張って勉強しようと思い、この本を選び、読んでみました。
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「古文が嫌いになる前に」という序章から始まる本。「みなさん、苦手でしょ」「嫌いでしょ」「つまらないでしょ」という語りかけで通すよくあるタイプ。
それなりに勉強していて好きな人は、こういうありきたりな語りかけに嫌気がさすと思う。
古典文の紹介が、ほぼ筆者の訳文のみなのも気になる点。本書を通じて「勉強しよう」という人には全く使えない本になってしまってる。
なお「つまらないでしょ」という問いかけには反論しておきたい。勉強それ自体が「おもしろい」必要なんて全くないんだと思うんだよな。後にある楽しみを想像して、きちんと「つまらない」(と思える)ポイントをおさえることこそ「勉強の才能」だから。
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フォトリーディング&高速リーディング。古典に親しまない人向け。親しみがある人は物足りないか、或いは、不満かも。
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[ 内容 ]
学校で習う古文に興味がもてなくても、実は古典はおもしろい!
オカルトあり、恋愛ありのわくわくの宝庫から、おなじみの作品をわかりやすい現代語訳で紹介。
自称「古文おちこぼれ」だった国文学者が、奥深くて不思議な古典の世界の楽しみ方、文法にしばられない原文の読み方を案内します。
[ 目次 ]
序章 古文が嫌いになる前に
第1章 「古典」が生まれた背景
第2章 古文に慣れよう
第3章 『徒然草』を遊ぼう
第4章 百人一首うらばなし
第5章 『堤中納言物語』より「花桜折る中将」を読む
第6章 女もすなる『土佐日記』
第7章 「しんとく丸」の死と再生
第8章 能・狂言に描かれた女性たち
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課題図書。期末テストの範囲。
興味がないことについて無理やり読まされることほどつらいことはないね。古典がもっと嫌いになる。
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ジュニア新書。教科書に取り上げられている『徒然草』は説教くさい。文法などこだわらなくても読める。著者自身がかつて古典が好きだったわけではないところからの指南書だ。
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国文学の大学の先生が、主に中高生に向けて古典の面白さを説いたもの。
注意すべきは著者自身が「正直いって、私も『古文』の授業はだいっきらいでした。」(p.3)、「『古文』のおちこぼれだった」(p.13)と述べているように、決して学校で古文の授業を学ぶ意義だとか、古文で点数を取る方法とか、そういったものを教えてくれるものではないということ。むしろ学校の古文教育批判が中心で、ただ本当の古典というのは学校の古文とは違うんだよ、古典に触れることは昔の人の生活や考え方、感じ方を知ることができて楽しいんだよ、ということを紹介する本。「いまだに『源氏』コンプレックスがあって、国文学者でありながらちゃんと読んでいないことを人に隠してきました。」(p.51)といった感じで、終始親しみが持てる。
まず「古文恐怖症を直すためには、あまり長い文章をはじめから読む、などということはしてはいけません。なるべく短い文章を、いろいろたくさん声に出して読んでみることが大切です。(略)古文のリズムがすっかり体になじんだ気がするはずです。内容に踏み込むのは、その後でいいのです。」(p.36)ということで、これは英語の勉強法と比較してみるとちょっと面白いなと思った。英語では「意味が分かった英文を何度も音読する」がセオリーだけど、ちょっと違うなあと思う。でも洋楽なんかはリズムが大事だから意味よりも歌えるようにしよう、なんていう場合もあるので、それと似ているのかなとも思った。あとは「受験用の『重要古語』といった参考書を丸暗記するより、古語は文脈にそくして読めば自然にわかってくる」(p.185)というのも、英語の勉強の場合と比べてみると面白い。ところで、p.35で紹介されている橋本治という人の本は面白そうだ。ぜひ読んでみたい。
あと、「古典」とかまして「古文」としって知っている世界がいかに限られた、作られたものであるかということを知った。古典は「何らかの権威によって保証される必要がある」(p.23)、「時代の思想や社会の要請によって作られるもの」(p.24)というのは、今までにない視点だった。「英語では『古典』をクラシックスと言いますが、それにトラディショナルといった意味を加えると、ここでいう『古典』に近くなるかも知れません。」(p.23)というのは考えさせられる。だいたい「説経」というジャンルさえ知らなかった。
最後に「わわしい女」の話のところで、「それをおもしろおかしく描く狂言には、冷ややかな『男の視線』が感じられるのです。ですから、中世の女が狂言のように本当に強かったのか、という問題を考えるとき、『男の視線』というフィルターがかかっているということを忘れてはならないのです。」(p.177)という部分は、著者が女性だからこそ考えられる部分なのか、それとも国文学の常識なのかは分からないが、重要な視点だと思った。(16/10)