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みんなのレビュー27件

みんなの評価4.0

評価内訳

27 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

調子込んだ言葉で絶賛すると安っぽくなるから避けたいのだが——美しいものに幻惑されたくて小説を読んでいる人がこれを逃したら、大きな損失かもしれない。

2004/07/21 12:56

5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本当に人を好きになると、呆けたようになる。自分を強引に律して仕事や勉強に集中させようとしても、少し気がゆるむと途端にいとしい人のことに覆い尽くされ、取り憑かれたように思いにふけり数時間が過ぎてしまっている。
 この小説は「魔性の女」、男性を破滅に追い込む「ファム・ファタール」の話ではあるが、作品自体が、読んだ者に魔性のように絡みついてくる感じがある。

 物語の筋を多く語るのは野暮だと思い、淡々と、心理や事物、風景の描写の素晴らしさを先ずは伝えるよう、付箋を手に、いいなと感じた部分を抜き書きしようとして先ほど本をパラパラめくり始めたのだったけれども…。
「そうだ、ここ、ここ」「ここも見事な書きっぷり」などと確かめているうち、いつのまにか再読に近いほど読んでいたりした。それこそ呆けたように…。そうしている間に、こまかい美点を書き出すのが妙にけだるくなってしまい、「小説が好きな人なら、とにかく読んでみることをお薦めします。何かしら感じ入るところがあると思うから」ぐらいで退散してしまおうかという誘惑に駆られた。

 何とか書くように自分を律して、割にどうでもよく話の本筋にさほど関係ないと思われる特徴と描写から挙げてみるとするならば…。
「わたし」という一人称で物語をするフィリップ・アシュリーは英国コーンウォールの領主一族の青年で、名門校での勉学を終え領地に戻って暮らしている箱入り息子である。ごく幼いときに両親をなくしたフィリップを育てたのは20歳近く年長の従弟アンブローズで、静かな生活を好む彼は独身の女嫌いだった。領民には親しまれていたけれど、一種の奇人とも言える。
 そのアンブローズは庭園を訪れる目的でイタリアへ旅に出たが、滞在は長きに及び、あろうことか当地で結婚したという便りがコーンウォールへと届く。ところが、しばらくすると連絡が絶え、次いでトラブルをほのめかす便りが舞い込む。心配になったフィリップはイタリアへ渡る。

さて、ここでひとつ面白いのは、イタリアの印象である。英国文学ひいてはアングロ・サクソンの文学や芸術において、イタリアという土地はローマ帝国時代への復古という意味も伴って永らく憧憬の対象とされてきた。
 フィリップの心は従弟への心配でふたいでいるから、イタリアの風光に見向きもしないということもあるが、トスカーナの乾燥や炎暑も、フィレンツェの水の流れの濁りも実にいまいましい感じに書かれている。そして、彼の目の前に女乞食が現れるのであるが——「まるで女のしなやかな体に、死ぬことのできない老いた魂が宿っていたかのようだった。そのふたつの瞳からは、何百年もの時がのぞいていた。あまりにも長いこと人生について考えてきたため、彼女にはもうそんなものはどうでもよくなっているのだ」(48P)
 イタリアという土地を象徴するかのように、若い乞食の様子が描写される。このような調子で、女性の涙というものが考察されたり、コーンウォールの生き物や植物、風土が再現される。そうして読み手の頭のなかに構築されたゴシックの趣き深い世界で、黒真珠のように妖しい光を放つ魅力的な年上の女性に翻弄され、若き紳士は恋に堕ち、底に落ちていく。従弟アンブローズをめぐる謎解きも真実は最後までもつれ込み、ファム・ファタールの真の姿に大きな衝撃を受ける。この小説は、恋の対象としてふさわしい。

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紙の本

青年と年上の女性の組み合わせ。

2021/10/14 17:17

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:名取の姫小松 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「わたし」こと、フィリップ・アシュリーは二十四歳。早くに両親を亡くしたフィリップは父方の従兄アンブローズに育てられる。アンブローズは転地療養先のイタリアで結婚し、急病で命を落とす。フィリップは従兄の妻レイチェルに激しい敵意を抱く。しかし実際に会って過すうちにフィリップの気持ちは傾いていく。
レイチェルは後妻業の女なのか、優しく社交的な年上の女性なのか。恋心の不思議と十九世紀イギリスの地主階級の暮らしが描かれる。
あなたはレイチェルがどのような女性に見えるだろうか?

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紙の本

『レベッカ』のうつし絵

2004/11/14 23:13

2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る

「ここには何が書いてありますか?」と或る絵を掲げ、二人に問うてみる。
「花瓶です。」「二人向かいあっている顔です。」
なぜ全く似ていない答えになったのか。答えは簡単。
一人は、黒い部分を絵として見、もう一人は白い部分を絵として見たのだ。人間だって同じだ。どの面を見て、どの面を見ないかで、その人の印象が全く異なる。その異なった印象のまま語られた物語は、別の人に語ってもらうと、全く別の様相を呈してくる。

デュ・モーリアの『レベッカ』では、英国紳士マキシム・ド・ウィンターに求婚され、前妻レベッカの思い出が色濃く立ちこめるマンダレー屋敷にやってきた女性が善、迫害する側が悪と見なされる。ヒッチコックの映画では、演じるジョーン・フォンテーンのはかなげなイメージもあいまって、ヒロインに多大な同情が寄せられた。しかし、この作品を一転、迎えるダンバース夫人の立場から見てみるとどうだろう。前妻ド・ウィンター夫人への尊敬の念が深ければ深いほど、マキシムの後妻として現れた彼女を、若さと美貌で旦那様を籠絡し、愛する主人の思い出を壊しに現れたファム・ファタールと頭から敵視してかかるのは、自然な反応ではないだろうか。

本作は、『レベッカ』とは逆の、いわばダンバース夫人側の視点から描かれた物語である。従兄アンブローズの客死に強い不審を抱くフィリップは、一度も会った事がないのに、アンブローズの妻となったイタリア人女性レイチェルに敵意を抱いている。教父ケンダルやその娘で幼なじみのルイーズが、彼女の訪問を危惧するほどに。
しかし実際に彼女と出会ったフィリップは、
「そして、わたしは思った-望郷の念でも、遺伝的な病でも、熱病でもない。アンブローズはこのせいで死んだのだ」と疑惑を抱きつつも惹かれていく。レイチェルが卑屈に媚びたわけでも、色仕掛けで迫った様子もないので、惹かれる過程がちっとも不自然ではない。知れば知るほど、アンブローズの言う悪女なのか、それともケンダルの言う「本人にはなんの咎もないのに、災厄をもたらす女」なのか、いずれがレイチェルの真の姿なのか、謎は深まるばかりだ。
そしてその謎を引きずったまま、「かつて、罪人は四つ辻で吊されたものだ。いまはもうそういうことはない。」という、とても物騒な冒頭の二文をもう一度繰り返して本書は終わる。この周到な繰り返しにより、謎の中に取り残された読者はもう一度心に問いかける。果たして、冒頭に登場したあの人は、そしてもう一人のあの人は、被害者だったのか、それとも加害者だったのか、と。
ああ、デュ・モーリアとは、なんと罪作りな作家である事よ。

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2008/06/22 20:39

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2008/12/21 16:51

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2009/11/22 22:25

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2012/02/23 14:24

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2012/03/30 19:58

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2013/10/08 19:11

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2015/08/06 15:33

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2015/12/19 10:08

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2016/02/17 09:01

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2016/02/24 12:11

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2017/09/08 10:29

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