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紙の本
独創性って言う点じゃあ、今一歩なんだけれど、それでもぐいぐい読ませる。とくに「時分割の地獄」、いいです。敬意を表して甘めの五つ★
2004/12/04 20:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
うわっ、空に街が逆さまに浮かんでる!って冷静に見ればわかるけれど、そうでないと???という感じのカバー装画は、私の大好きな影山徹、色使いが相変わらず素敵。でDirection&Design=岩郷重力+WONDER WORKZ。ご活躍です。
でだ、山本弘である。読むのは、これが二冊目。最初が2003年出版の『神は沈黙せず』、そこに詰め込まれた情報量にひたすら圧倒された。無論、量をこれ見よがしにひけらかすのならば、その時点で投げ出すのが私の常だけれど、山本はそういう愚を犯さない。その奥ゆかしさは、さすが1956年、京都生まれ。トンデモないものをウォッチングする団体「と学会」の会長である。
そして一読、むむ、これは凄い長篇にぶつかったぞと思うのだ。で、一気に最初の章を読み終わった!と思ったときに???となる。あれ、これってもしかして…。そう、短篇集だったのだねえ、明智くん。なに、これ、と思わせないところが立派なのだ。どれを読んでも、例えば独創的であるか、といえば決してそうではない。どこかで読んだような、そんな思いを抱かせる。紹介しよう。
モンゴルに恐竜発掘の調査に行ってしまった恋人萌衣、気持ちよく送り出したはずの僕が思いついたハッブル定数問題の矛盾を解決する理論「闇が落ちる前に、もう一度」。たん、すたたん、すたたたた、たん、たたん、たんたん……。誰もいないはずのマンションの屋上から聞こえるかすかな響き。会社の同僚が航空写真で見つけた僕が住むマンションの「屋上にいるもの」。
私があなたを殺そうと決意したのは、私が生きていくうえでどうしても必要なことだと判断したから。テレビの深夜トークショーで口広げられる悪意のインタビュー「時分割の地獄」。結婚を目前にして顔を見せなくなった恋人。彼の部屋に押しかけた女性が打ち明けられたのは「夜の顔」。夢の中でイエスかノーの選択を迫られた私。ラジオから聞こえたプシューという音が世界を変えて「審判の日」。
例えば表題作にもなっている「審判の日」。何だか懐かしくなる設定ではないか。でも、これが実にいい。相手のことを考えるということの出来ない、それでいて決して狂信的だとか、おかしいとかいうのではなく、もしかしてそれって自分?て思わせる女性を主人公に据えることで、ありそうにも無い話がこんなにも身近になる。
それは「時分割の地獄」にしても同じだろう。先入観で人を断じる人間、例えば政治家たちの、或は右翼と呼ばれる他人の言うことなど全く聞こうともしない連中の姿を見るにつけ、ここで殺意を固める存在の心に見事にシンクロできるのである。それは他の作品にも言えるだろう。SFというよりはホラー、あるいは単なるエンタテイメントと割り切ったほうがいい。
にもかかわらず、例えばどれ一つとして虚構ではない、などと感じさせはしない。絵空事、と読者に納得させたうえで、読み手を切歯扼腕させ、苛つかせ、絶望させる。いや、甘いよと言わせながら、安心させる。重松清や角田光代といった現実感のなかで読者を自然に物語りに引き込むタイプとは全く違う、ある意味フィクションの王道を歩む作家、といったら褒めすぎだろうか。
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