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薔薇密室 みんなのレビュー

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みんなのレビュー27件

みんなの評価4.3

評価内訳

  • 星 5 (8件)
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27 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

思うに、桐野夏生の『OUT』がMWAの候補になったように、皆川の一連の第二次大戦中のドイツを扱った小説だって、英語になればかなり評判になるぞ、って思うわけ

2004/12/18 21:15

3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

何度も書いて恐縮だけれど、皆川博子のよい読者ではない。期待して手にしながら、読まずに終わった作品数という点では、多分最多安打記録更新中の作家である。しかしだ、途中で断念した理由は、単に読む時間がないだけ。実は、読みたくてしょうがない。だから、彼女の新作が出るたびに飛びつく。

でも、我が家には読まれることを待っている本が、常に30冊以上(書棚に埋もれた数千冊の本には触れずにおこう)。一作読むだけで一ヶ月もかかるような作品は、どうしても後回しになる。くだらない作品であれば、もうその作家と別れればいいのだけれど、偶に読み通せば十二分に報いられる作家となると、困るのである。

で、久しぶりに読み上げたのが『薔薇密室』。皆川博子といえばミステリ作家というのが私の頭には抜きがたくあって、おまけにタイトルに「密室」だから、久しぶりに推理の世界に帰ってきたのか博子ちゃんなどと不遜にも大先輩にためぐちをききながら読み始めたら、これが全くの勘違い、空振り三振。ただし、これは相手の投手が偉大だったなあ、という感じで完全脱帽だった。

物語の中心にあるのは、ドイツのシュレージェン南部、深い森におおわれた山地の中腹に建つ、シトー会が12世紀ころに建造したという、そして今はラオレンツ・ホフマン博士が所有する古い「薔薇の僧院」。これを中心に、ベルリン、ブレスラウ、シュレージェン、国で言えばドイツ、ポーランドを場面転換に使いながら、戦争を背景とした濃密な三つの物語が進行していく。

メタ化している部分もあって、その構造は極めて複雑。だから、これをミステリ的な読み方で楽しむこともできない相談ではない。ただし、皆川の文章はそのような気楽なお付き合いを拒絶してしまうような、耽美で凝縮されたものであるのだけれど。

一つは、パン焼き職人として1914年の戦争に参加しながら戦闘に巻き込まれ、助けた騎馬士官とともにホフマン博士の僧院にたどり着くことになった22歳の私と美貌の士官〈オーディン〉、そして醜い士官ヨリンゲルと、秘密の研究を続ける博士の話。その博士の研究の成果『〈ヴィーナスの病〉の病原体とその治療薬に関する研究』は、全編を貫く通奏低音となる。

もう一つは、ハイニ率いるSSによって接収された僧院で自らを痴愚の唖者と偽り、子供たちやグラツィア尼と暮らす庭師である私の話。私は僧院でアルベルト、ベルンハルト、エンゲル、あるいはユリアンといった少年たちの姿や軍人の姿を記録する撮影技師などから隠れるように知られることのない秘密の薔薇園の手入れをしている。

そして最後がポーランド人で、ある事件が元で両親をSSに逮捕され、その後、映画の撮影技師であるナタニエル・ホフマンの家に引き取られることになるミルカ・コヴァルツィカの物語。彼女の姉ルツィアの恋と死は、両親の逮捕以上にミルカの心を引き裂くことになる。そのミルカの前に現れては消えるのが『〈ヴィーナスの病〉の病原体とその治療薬に関する研究』である。

あとは、Rachel Ruyschの手になるBouquet of Flowers(部分)をあしらった柳川貴代+Fragment装幀の本の扉を開いてもらえばいい。戦塵を戦火の気配を遠くに聞きながら、むせ返るような濃密な薔薇の薫りに酔いしれ、稀代の文章家の仕掛けに身も心も蕩かすがいい。幻想とも狂気とも現実ともつかない世界は、いつしか一つになってその見事な伽藍を読者の前に露にする。それは予想だにしなかった完結し世界である。

私が読み通した数少ない皆川作品の傑作の一つ『死の泉』に勝るとも劣ることのない強烈な世界が、ここにある。ヨーロッパを舞台に、戦争の悲惨を昏い筆致で繰り返し描く。はたして欧米の人には、皆川のこれら一連の話は、どう映るのだろう。個人的には、塩野七生のイタリアもの同様、彼らの反応を知りたくてならない。

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紙の本

少年時代、ポーランド映画アンジェイ・ワイダ『地下水道』『灰とダイヤモンド』に感激したオジサンはこう読んだ。

2004/10/28 14:49

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

まず冒頭第1章で語られる異常な情景・極彩色の地獄図に驚かされてしまった。
ポーランド。独立の夢を果たせないままに第一次世界大戦の中でその民族の運命は列強に翻弄される。ドイツの支配下におかれたシュレージェン地方の「私」=コンラートはロシア軍の侵略攻撃から脱走し、人知れず建つ古びた僧院にかくまわれる。僧院の主・医学博士ホフマンの梅毒スピロヘーター研究から派生する異常な人体実験。「私」は薔薇園の中に腐乱した人体が植物の細胞と融合し華麗に咲き誇る薔薇の生命力に支えられ生きつづける様を見ることになる。
時を異にしているかのようであるが同じ僧院に住まう記憶喪失状態からわれにかえった「俺」はひとつの下半身からなるふたつ人格という畸形児や貝殻骨が異常に突き出ている畸形児らとともにナチス将校の支配下で生活をしている。

そして第2章。ワルシャワで比較的恵まれた生活を送る「わたし」=ミルカの家庭は一転してナチスドイツの侵攻により迫害を受ける。「わたし」はドイツのカメラマン・ホフマンの住居に軟禁され、薬物と心理的作為によって、夢と現実の区別がつかない生活を強いられる。

戦争という恐怖からか、ナチスの狂気か、すべての登場人物が病的な精神状態で語るところのどこまでが真実であるのか。この悪夢と恐怖の世界に惑乱するのは登場人物だけではない。読者もまたそのシュールで耽美的な語りの世界をさまようことになるのだ。推理小説のようであり、怪奇小説のようであり、幻想文学のようでもある。

しかし、この冒頭の驚きが大きいだけに、読み進むにつれ、当初の期待は全部、尻つぼみになってしまった。退屈になってしまった。目の覚めるような終結は、これもなかった。

読み終えて著者が語りたかったことは何だったのだろう。ナチスへの怒りが表現されているのだろうか。ポーランド国民の抵抗運動になんらかの評価をしているのだろうか。エンタテインメントであれば文芸性や社会性への野心を捨てて、面白さに徹底してほしい。それにしては面白くないのである。

むしろ著者は語るべき視点を欠いているのではないかと思いすらするのだ。
ポーランド人の歴史的悲惨を素材にしている。ナチスの狂気を素材にしている。生まれながらに背負わされた畸形という不幸を素材にしている。そうでないのならこれだけ重い素材なのだ。はっきりとした主張もなしにうかつな姿勢でそれぞれを描いてはならないだろう。
著者の『死の泉』には構成の巧さ・緻密さに感心させられたが、やはり同様の印象が残ったものだ。

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内容紹介

2004/08/26 17:44

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:bk1 - この投稿者のレビュー一覧を見る

豊穣な物語世界と円熟した文体で多くの読者を魅了し続ける著者の、書き下ろし長編小説。第二次世界大戦下のドイツ・ポーランド国境にある、外界から閉ざされた謎の僧院を舞台に繰り広げられる常軌を逸した世界。3人の語り手のうち、誰が真実を語っているのか。幻惑の末、ある人物の壮大な「悪意」が明らかになる。現地での徹底した取材をもとに、独特な世界を見事に作り上げた本作は、数々の文学賞を受賞した著者の代表作「死の泉」以来、7年ぶりの書き下ろしとなる。

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2005/08/04 09:17

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2006/08/21 17:51

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