紙の本
我が家では、恩田の傑作と家族全員の意見が一致したのが『ドミノ』『蛇行する川のほとり』、あとはバラバラ。で、この話なんぞもかなり意見が割れそう。でも私は推します
2004/12/25 21:52
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み終わったときはさほど感心しなかったけれど、時間が経つに従って、もしかするとこの作品て恩田のベストの一つになるのではないだろうかと思い始める。少なくとも、ここには私が愛してやまないパターンがある。例えば、煮詰まったとでもいいたい閉じられた旧家の人間関係がある。禁断の恋が暴かれる。女優が登場する。評論家がいる。姦しい老女たちが語る。
引用文献として『去年マリエンバードで/不滅の女』アラン・ロブグリエ著天沢退二郎・蓮見重彦訳(筑摩書房)が冒頭に挙げられ、その後主題、第一変奏、第二変奏とバリエイションが第六変奏まで続く。それに、あとがき「二つのマリエンバードの狭間で」、「心地よく秘密めいた恩田陸(杉江松恋)」、「恩田陸スペシャル・インタビュー」、「恩田陸著作リスト」と、本格ミステリマスターズ御馴染みの構成となる。
しかし、変奏曲が始まる前の主題の提示部は、あっけないくらいに分量が少ない。国立公園の監獄というか、自分たちだけが楽しむという三老女の待つ山荘という趣のホテル、そこへ向かう私が視点を持つのは、僅か2頁である。これを主題というのは、少し無理かもしれない。変奏曲を奏でるには材料不足だろう。
その材料というのが以下の人たちだ。まず三人の老女、小柄ながら他を圧する存在感を示す沢渡伊茅子、娘に似て女優のような丹伽子、にこやかな未州子の三姉妹がいる。それに一見儚げな日本的美女 桜子とその弟で評論家の湊時光の姉弟がいる。それに、伊茅子の甥で桜子の夫 隆介、丹伽子の娘で舞台女優の瑞穂、彼女のマネージャーの40そこそこの田所早紀、沢渡家出入りの高級外車のディーラーで40代半ばの辰吉亮、そして大学の商法の先生 天知がいる。
ついでに基本的な事実を押さえておけば、桜子と時光は姉弟ではあるが肉体関係がある。そして桜子は、夫の隆介、時光だけではなく様々な男たちと関係を持つ。外見からは想像もつかない、虚無的な部分をもった美女である。そして、六つの事件が起きる。いや、起きたのだろうか、それはこの本を読めば分かる。
そして、巻末のインタビューまで読めば、きっと映画「去年マリエンバードで」を見たくなるはずだ。そう、私はこの映画、名前だけは知っているけれど見たことは無い。今までも、恩田が小説の題材にした映画を見ていなくて、せっかくの恩田の工夫を楽しんだとはいえない私だけれど、この物語ではとくにその感が強い。
しかし、そういう彼女を触発した映画を見ていなくても楽しめるのが、この本のいいところ。ここで示される人間関係は濃密であるにも拘わらず、耽美的という感じはしない。如何にも恋愛小説でございという小池真理子の諸作というよりは、例えば男性作家、中井英夫や赤江獏、塚本邦雄といった薔薇小説により近い印象を受ける。
いずれにしても、第二変奏が終わりに近づいた時に感じる違和感、視点の変化の意味に気づくと、にわかに残りの変奏に期待を抱かずにいられなくなる。残りの変奏曲が終わった時、もう一度最初から読み直してみようかと思う。如何にも恩田らしい含みのある話だ。
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読了後、首筋がゾゾゾゾ…っとしました。それは多分、最後みんな狂ってたから。怖いわー…
記憶は常に改ざんされ続けるもの。それを突き詰めていくのが恩田作品なんだな、と。
Q&Aから続けて読んでやっとわかるこの恐ろしさ。
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恩田さんの新作ー!おもしろいのはいうまでもないですが・・・でも、ちょっと最後のほうのまとめが弱かった気がします。構成はすごくおもしろいんだけれども。ツメになる場面で、329ページのとある一行の中に、「彼女」というべきところを「彼」と書いてあるようなミスを見つけてしまったせいでしょうか(^^;
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頭の中に浮かんだ映像をそのまま文章にした 映画のシナリオのような文章が、物語の間に差し挟まれている。
読み慣れないうちは 意味するところがよくわからなかったのだが、読み進むうちに それが もやもやとした予感を誘う効果があるように思われてきた。
そのシナリオは、実際にはなかった去年の約束を さもあったように思い込ませて女と出奔するというものなのだが、思い込まされようとしている間の女の捉えどころのない不安定感が、物語の本筋への不安感との相乗効果をあげているようなのだ。
このホテルでの数日間に起こったことと起こらなかったこと。
この場所では 同じ人びとによる いくつものまったく別の時間が流れているようにも見える。
どれが実際に起こったことなのか、都合のいいように改ざんされた記憶なのか。
真実は読者の数だけあるのかもしれない。
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ミステリー。だけど、謎を解くわけでもなく、それぞれの登場人物の中でそれぞれの殺人が起きてるのだ。何か不安にさせるような語り口調と、登場人物の魅力的な書き方は、さすが恩田陸だなーって感じだ。普通に面白い。挿入されてる文は賛否両論あるだろうが、私はあんまり好きじゃなかった。
☆☆☆+
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山奥のクラシックなホテルで、毎秋開かれる豪華なパーティ。その年、不吉な前兆とともに、次々と変死事件が起こった。果たして犯人は…。『別冊文芸春秋』連載を単行本化。
【感想】
http://plaza.rakuten.co.jp/tarotadasuke/diary/200501080000/
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まず言いたい、私だけかもしれないけれどこの本は読むと疲れる。なぜなら人間関係がリアルすぎて泥沼だからだ。個人個人の目線で書く恩田さんを尊敬。
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「去年マリエンバートで」を観た直後に読んだ。まんま映画っぽかった。(笑)
人の記憶はかくも曖昧で、主観的で、意図せぬ捏造に満ちている。
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これは 冒険だったろうなあとおもった。今にして思うと恩田さんらしいのかなあとも思う。結構好きなオムニバス形式だ
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んー、期待していたんだけどな。イマイチでした。
これは以前から、理瀬シリーズの完結編だとネット上ではうわさされていましたが・・・全然違いますね。
私はこの作品を読み、恩田陸らしからぬ作品だと思ってしまいました。
恩田陸の描く人物というのは、必ず抜きん出てインパクトが強く魅力的ないキャラがいるのですが
今回の作品は登場人物全てにインパクトが無く、全体的にピンボケした物語だと感じました。
桜子がメインの人物なのだと思いますが、とても中途半端な存在で、個人的にとても残念に思ってしまいました
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恩田先生独特の雰囲気がよく出ていて素敵な作品。山荘の豪華ホテルという閉じた空間、華やかな美男美女、知的で非現実的な会話の数々。これで胸をときめかさずにすみますか!とっても素敵でした。ただ、最後のまとめがあまり納得いかなかったのが残念。おまけとして恩田陸先生へのインタビューが入っていて嬉しかったです。
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山奥の館に毎年開かれるお茶会での現実と虚構が混じる話。視点が次々と変わって行く辺りが恩田氏らしいなと思いました。ホラーテイストでもあり面白かったです。
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題名が好き。
結局どれが本当なのかわからないまま進んでいく感じも好き。
舞台か映画っぽい。
桜子さんが素敵。
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二つのお話が同時進行でこんがらがってよくわからなくて途中からメインっぽいほうしか読みませんでした。もう一個も読んだほうがやっぱり面白いのかなぁと読み終わってから思い、微妙に残念ですが、普通に読んでたら疲れすぎるのであきらめます。
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ミステリー的には反則と思う方もいるかもしれませんが,私はアリだと思います。作品全体に漂う雰囲気が恩田陸らしいです。