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山間の別荘という非日常の中で起こる物語。
したたかな主人公を取り囲むチェンバロづくりの二人は優しく彼女を受け入れる。たとえ関係を持とうとも崩れない二人の関係。
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愛欲も叶わぬ、深い絆を築く新田と薫。そこに嫉妬する瑠璃子。別荘とチェンバロの周りでうごめくささやかな出来事や人間関係をシンプルで美しく描き出している。
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離婚寸前の夫から逃れ、山あいの別荘に住み着いたわたしは、ある日、チェンバロを作る新田氏とその女弟子薫と出会う。チェンバロを作る新田氏の佇まいに惹かれていくわたしだが、同時に新田氏と薫の強い絆に気付かされ打ちのめされていく・・・。
今まで読んだ小川氏の長編の中では、結構上位にくるのではないか。とにかく切ないのだ。作品の雰囲気もいい。チェンバロを作っても、決して人前で弾くことのないはずの新田氏が、薫のために曲を奏でている・・・。それを覗き見てしまったくだりなど(ついネタばらししてしまった!でも言いたいのだ!)極みである。
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外に女を作った夫から逃れるために、突然一人で別荘で生活することにする主人公。
近所のチェンバロ製作をする男性とその助手として働く女性と知り合う。
微妙な三角関係を続け最後は…、というよくある感じのストーリー。
小生が何故ミステリー好きかというと結論がはっきりするからで、本著のようなだからなんなのと読後に思うのはあまり好きではない。
著者の「博士の愛した数式」は結構面白かったから少し期待したのだが、作者で本を選ぶ身としては読んでみないと解らないから、こういう危険負担はしょうがない。
ところでこの別荘の場所は「早々に寒くなる」「ペンションがある」「新幹線で3時間ほど」「近くに温泉がある」などとなっているので、軽井沢や清里などではないけど、どこなのか気になった。
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切なかった。
瑠璃子には幸せになってほしい。
いつまでも静かに彼らはチェンバロを作り続けるのだろう
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自分が居心地のいい居場所を見つけるのはとても大変なことなんだな、
と思いました。
ドナを抱っこしたいです。
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瑠璃子 という女性の 物語。
家族で行った別荘。
そこに8年ぶりに 行く。
なんとはなしに、家出を したかったから・・・・
そこで、チェンバロ 製作者 新田氏と
恋人を失った経験を持つ 薫さん にあう。
森と湖の中で、物語は進んでいくが・・
何という 軽い ストーリーなのだろう。
いまの人たちは こういうのが好きなのだろうか?
チェンバロという楽器のもつもろさ、せつなさ、・・・
ピアノのように ハンマーで 弦をたたくのではなく
鳥の羽根で 引っかいて 音を出す。
ちょうど、そんな風な
鳥の羽根で 引っかくような 感じの物語。
人々は みなやさしく、
すべてをいわないで・・・ベールの中に包んでいく。
日本の 文化の中に
しっかりと 自分を閉じ込める。
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不倫?三角関係?
小川洋子の作品は、もっと少女趣味なのが好きだ。なんか、小川さんの作品のあの透明感が、今回のにはない。
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チェンバロを巡る不思議な話。
小川さんの描かれる恋愛小説は、どんなにどろどろの愛憎劇でも不思議と透明感があっておとぎ話のように感じてしまう。
この本もいわば三角関係、不倫、DV、殺人事件、トラウマetc。。。
題材としてはややもすれば陳腐になりがちなものばかりなのに、筆者はするするとすべてをチェンバロという不思議な楽器の音色で奏であげてしまっている。
「やさしい訴え」や、「懐かしい土地の思い出」等の名曲を知る良いきっかけを与えてくれたことにも感謝。
それにしても、筆者の多岐にわたる専門知識の深さには驚かされるばかり。
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2013/04/16
小川洋子の描く世界観はとても好きなのだけど、この作品は瑠璃子と新田氏にあまり感情移入できなかった。
自分勝手な主張を言いがちな瑠璃子と、大事な人がいるのに流されて結局やっちゃう新田氏。笑
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不倫をしている夫から逃れるため、山荘の別荘へとやってきた瑠璃子。
そこで、チェンバロ製作者である新田氏、彼の助手である薫さんと知り合い、仲良くなっていく3人。
瑠璃子は新田氏と特別な関係になるものの、やはり最後は薫さんの存在に負けてしまうというちょっと切ないようなストーリー。
なんとなく、異世界に紛れ込んでしまったような印象を受ける別荘での出会いと出来事。
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瑠璃子、薫、新田―それぞれ過去の深い傷を抱えた3人の物語が、幾分か非日常的な空間に展開してゆく。物語の舞台は、おそらく八幡平あたりの別荘地。しかも、新田と薫とは、この人里離れた地でチェンバロ製作という、なんとも優雅な仕事に従事している。そこに瑠璃子がやって来るのだが、この地は、3人のそれぞれにとってアジールだったのだろう。そこでの静かな暮らしと、瑠璃子の熱い情念の物語。そして、瑠璃子の情念は静かなチエンバロの透明な音に収斂してゆく。ラモーの「やさしい訴え」、そして「預言者エレミアの哀歌」が美しく響く。
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・「でも、どんな重大な出来事でも、紙に書くと一行か二行で終わっちゃうんですよ。『目が見えなくなった』とか、『無一文になった』とか、アルファベット十個か二十個で用が足りるんです。だから自叙伝の仕事をしていると、気が楽になることがあります。世の中何でも大げさに考えすぎない方がいいなあ、って」
・「 人前で、弾けなくなったんです」
♪『予言者エレミヤの哀歌』
・「私には祈らなければならない人がいるんです」
・待っていますと言ったのに、新田氏はわたしと入れ違いに、福島へ行ってしまった。
・「チェンバロが鳴っている間、僕はいくら無言でいても相手を傷つけることはない。うんざりさせるような余計な一言を、もらしてしまう心配もない。誰でも僕のチェンバロの前では、信頼に満ちた眼差しと、思いやりのこもった指先を向けてくれる。つまり、そういうことなんです」
♪『やさしい訴え』
・「でも時々、その形が見えなくなる。輪郭がぼやけて、手がかりが消えて、不安に陥る。迷いを持たない形のはずなのに、どうやってもそれをなぞれない。どこかがはみ出していたり、かすれていたり、うまくなじんでくれなかったりするんです。薄暗い防空壕の中で僕が探していたのも、そんな絶対的な形のロボットだったんだろうなあ」
・「眼鏡を直さなくちゃ」
薫さんがつぶやいた。
「壊れちゃったんです」
・「もうこれ以上、失いたくないんです」
わたしの胸に、薫さんは顔を埋めた。身動きできなかった。彼女を受け止める以外、ほかにしようがなかった。
♪チャイコフスキー『懐かしい土地の思い出』
・
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長い間、瑠璃子は夫に傷つけられていた。精神的にも身体的にも。唐突に思い立った彼女はやさしい思い出の詰まった別荘へと籠る。そこで出会ったチェンバロ制作者とその弟子に時に癒され、掻き乱され、帰っていく。
ところで、本編と関係ないようで恐縮ですが、瑠璃子さんは作中ずーっと恋仲となるチェンバロ制作者新田さんを「新田氏」と地の文で語るんですよね……どこのヲタクやねん‼ と終始吹いていました。そういう方、わたしと同志になれます。いませんかね? おかげで読み終えるまでどうにも瑠璃子さんが若干ヲタ系でイメージされていました。むぅ……。
まあ、それはさておき、楽器を女性にたとえる陳腐な文句というのはよくある話なのですが、それが肉体を指すのか心を指すのかは本人たちにしか分からない。瑠璃子さんはまさしく肉体的に触れられたわけだけど、一方チェンバロ制作者新田さんの弟子である薫さんは精神的に新田氏に支えられている。対比関係がいろいろと出てくる小川洋子さんらしい関係だなあ、と思いました。
ただ、わたしが読んできた小川洋子さんの小説は、けっこう独特の色が変わらずにそこにある感触だったのですが、『やさしい訴え』は特色を持ちつつも少し違う手ごたえがありました。正体はわかりませんが……なんだろう? いつもより洗練されていない……というと語弊がありますが、そう、情報量が多い気がしたんです。きっと、チェンバロなど古楽器やその制作、カリグラフィーなど、わたしが知らない世界を多く見せていたからだと思います。視覚訓練士なんて初めて聞きましたしね。別荘なんてまさに「夢」「想像上のもの」です。
いままでわたしが読んで来た小川洋子さんの小説は、実に似ている箇所が多い。
・登場人物が基本的に上品かつリア充
・女が夫の浮気に悩まされがち
・女主人公が何かしらを失う(単数も複数も)
・三角関係が重複
・三角関係の蚊帳の外にいる人物もたいてい存在
・金持ちが多い
・特殊なお仕事に従事する人が多い
・医者率が高い
・犬派(犬派の私は嬉しいですが猫派の方はどうお思いなのでしょうか?)
・ご飯を作ったり食べたりする場面が何度か入る
・フェチっぽい描写が多い
……これくらいでしょうか? もっと固まった型がありそうですが、わたしにはまだまだ読んだ量が足りていません。
いずれにしろ、幻想小説だと言われている(はずでしたが、記憶が曖昧なので不確か)わりに艶めかしいんですよね。「営み(という表現が出てくるたびになんだかほくそ笑んでしまいますが)」が出ちゃいますしね。
だけど、たしかにこの世界は神秘的で触れたいものの、薄い膜でおおわれていて、読者は踏み込めないようになっている。そういうもどかしさが好きな方には小川洋子さんの作品をばんばん読んでいって欲しいですし、尾崎翠さんの作品にも手を出していって欲しいですね。
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愛人がいる上にたびたび暴力をふるってくる夫に愛想を尽かし、東北の山中にある別荘へやってきた主人公。
幼少時から親しんだ別荘で暮らすうちに、近くの作業場でチェンバロを作る男とその弟子と親しくなる。
主人公の瑠璃子はふたりと穏やかな日々を過ごしていたが、だんだんチェンバロ職人の新田に惹かれていく。そしてチェンバロ作りを介して自分より新田と親しい位置にいる弟子の薫に嫉妬心を抱くようになる。
三人が過ごしたいくつかの季節を描いた恋愛小説。
瑠璃子は小川さんの主人公としてはとても女性的というかねっとりヒロイン気質で珍しさがあった。
ただ彼女に感情移入できないとイライラしてしまうかも。
エピソードは激しい物もあるものの、文体のせいか流れる空気はとても穏やかな印象である。
瑠璃子はカリグラファーで新田はチェンバロを作るが、作業を淡々と丁寧に描いていくところが好きだ。
そしてふんだんに出てくる料理の描写が、物語に人間味を与えている気がする。
==ねたばれ==
この家出により瑠璃子の生活は破綻し、最終的に彼女はひとりになる。
新田と薫は変わらずチェンバロを作っている。
主人公の日常に異分子が入り、それが引き起こす変化を描くパターンが物語の基本だけれど、
終わってみるとこの世界で変化の主体となったのは瑠璃子だった。
瑠璃子自身は大きな変化にみまわれ、彼女の動きにより周囲も撹乱させられたが、結局何もかも変わってしまったのは彼女だけかもしれないと思うと、虚しさを感じて妙に切ない読後感。
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