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紙の本

才媛の復活

2004/12/03 22:59

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:すぎやまあつし - この投稿者のレビュー一覧を見る

芥川の最晩年の精神的な恋人として、
アイルランド文学の翻訳家として、
歌人として。

才媛片山広子の集成が、月曜社から刊行された。
その第一巻が本書である。
散文を中心とした編成となっている。

最大の売り物は、「燈火節」の完全収録だろう。
古書でもかなりの高値の本であり、こうした高価な本であった
としても現在の流通に乗せたということだけでも評価されてよい
と思う。

随筆の内容は、多岐に渡る。
日常的な事柄から翻訳のことまで。
興味がつきないものばかりだ。

芥川研究という観点からみても、芥川が「越し人」として思慕するに
至った片山広子という女性への理解への手引きとなるはずだ。

私自身は、片山広子の仕事は、どちらかといえば「松村みね子」としての
翻訳の仕事になじみがある。ダンセイニ、シング。
アイルランド文学の精力的な翻訳。そして名作「かなしき女王」である。
この本の格調高い訳は絶品である。

今、どれだけの人が「片山広子・松村みね子」の仕事を知るだろう。
本書により、片山広子再評価の声が生まれんことを。



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