紙の本
私の見るところ、今回の直木賞は佐々木穣『警官の血』と、桜庭一樹『私の男』で決まりなんですが、2004年当時の桜庭はまだまだ子どもたちの支持をうけることしか出来なかったんじゃあないか、これもその域はでていない、そう思います。無論、13歳にしたという設定は凄いんですが
2008/01/15 22:59
7人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
カバーにはタイトルの下に
A Lollypop or A Bullet
と書いてあります。同じ意味が通じないなら、案外、この英題のほうがしっくり来るかな、なんて思います。むー のイラストと菊地博徳( BERTH Office )のカバーデザインは、この文庫としては平均的なものでしょう。
カバー折り返しの言葉ですが
大人になんてなりたくなかった。
傲慢で、自分勝手な理屈を振りかざして、くだ
らない言い訳を繰り返す。そして、見え透いた安
い論理で子供を丸め込もうとする。
でも、早く大人になりたかった。
自分はあまりにも弱く、みじめで戦う手段を持
たなかった。このままでは、この小さな町で息が
詰まって死んでしまうと分かっていた。
実弾が欲しかった。
どこにも、行く場所がなく、そしてどこかへ逃
げたいと思っていた。
そんな13歳の二人の少女が出会った。
山田なぎさ――片田舎に暮らし、早く卒業し、
社会に出たいと思っているリアリスト。
海野藻屑――自分ことを人魚だと言い張る
少し不思議な転校生の女の子。
二人は言葉を交わして、ともに同じ空気を吸
い、思いをはせる。全ては生きるために、生き残
っていくために――。これは、そんな二人の小
さな物語。渾身の青春暗黒ミステリー!
とあります。
舞台は鳥取県境港市で、時代は現代です。主な登場人物を書いておきましょう。
山田なぎさ:中学二年生で、主人公です。中一のときからずっとうさぎの飼育係をしています。進路希望は自衛隊員。転校生の海野藻屑に一方的な友情を抱かれるますが、迷惑で仕方がありません。
山田友彦:本来なら高校生ですが、現在はひきこもりの兄、十七歳。中二で引きこもる三年前までは、みなの憧れのまとだったという美少年です。登校しない今も美しさと頭のよさと優しさは少しも変わらず、妹からも慕われています。
母:スーパーのレジで働き、二人の子供を養っています。常識人、というより世にいうオバサンでしょう。
・海野藻屑:片足を引き摺り、いつもミネラルウォーター2Lのペットボトルを持ち歩き、ごくっ、ごくっと飲んでいる転校生美少女です。何故か、なぎさに想いを寄せ、水の入ったペットボトルを投げつけたりします。自分を人魚だというだけあって、2Lの水を簡単に飲み干すのですが、ボトルを捨てたあとでも新たなボトルをすぐ出してきます。一体どこにどうやって何十本ものボトルを隠し持っているのか、最大の謎です。
・海野雅愛:この町でいちばん有名な男。元歌手で、俳優ですが、数年前の大麻事件以来、あまり人前に姿をみせていません。悪魔的な父親です。
・花名島:名前が分りません。もしかして、花 名島で姓名だったりして・・・。教室で隣にいる山田なぎさの想いにも気付かず、藻屑に好意を寄せる坊主頭の野球部員ですが、当然のごとく藻屑は歯牙にもかけていません。
13歳の少女の出会いは、やがて二人を・・・
確かに「青春暗黒ミステリー!」というのが相応しい内容です。13歳ゆえの暴走とでもいうのでしょうか。ただ、名前もそうですが海野藻屑の様子があまりに奇妙なので、悲劇性が伝わってこないきらいがあります。特に、飲んでも飲んでも2Lのペットボトルが出てくるあたり、どうやって何本運んでいるんだろうと気になると、妄想が突っ走り始めます。
ま、ここらは藻屑自ら自宅で消失劇を演じるくらいなので、引田天功並みのマジックはお茶の子なんでしょうが、やっぱり不自然。母親のオバサンぶりも浮いているし。ただ、残りの展開は嫌いではありません。でも、私なんかにとっては13歳という設定が無理。この間、『はじめての文学 桐野夏生』のなかの・リアルワールド「ホリニンナ」を読みながら、やっぱり高校生の犯罪のほうがいいかな、なんて思います。
ま、桜庭の偉さというのは、それを13歳としてしまう現代感覚だとは思うんですが・・・
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(粗筋)母一人の稼ぎと、ほんの少しの生活保護で暮らす少女、山田なぎさ。兄は美形ひきこもりで、なぎさは「生活に打ち込む、本物の力」を得るために中学卒業後は自衛隊入隊を志願をしている。一方、父に虐待を受け、自分を人魚だと言い張る転校生、海野藻屑。藻屑は虐待する父を溺愛している(ストックホルム症候群らしいです)藻屑が辺り構わず打ち続けるのは嘘で塗り固めた砂糖菓子の弾丸だ。なぎさは藻屑とも関わり合いの中で「砂糖菓子の弾丸」を打ち続ける藻屑に興味を抱くようになる。
折り返しの粗筋に銘打たれた「暗黒青春小説」との売り文句と、各所の書評を見る限りではよっぽどど暗い小説なのかと思って期待して読んだが、鬱になるほど暗い小説ではないと思った。引きこもりの兄を抱え、生活保護受ける主人公の家庭はあんまり陰惨には描写されないので、なぜ主人公が「現実にコミットする力=実弾」を求めているのか説得力に欠けると思った。なので「現実からデタッチする力=砂糖菓子の弾丸」との対比が際立たず、全体の印象を薄いものにしている様な気がした。ストックホルム症候群だと言う藻屑の救われなさを結末に至って主人公が「忘れない」の一言で片付けるのも少し納得がいかなかった。救われないなら救われないなりの考察や理屈がそこにあってもよいのではないかと。
「ライトノベルだから」と言う枕詞をつけるのは卑怯なような気もするけれど、この手の救われなさを描いた小説ならベタなところで『こころ』や『人間失格』でも読んだほうがよっぽど鬱になるような気がしないでもないけれども、独特のとりとめの無さや軽く読める内容からして、良く纏まった小説なのではないだろうか。
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ストックホルム症候群の親から虐待される少女と、引きこもりの兄を抱えた戦いたい少女の話。致死力を持たない「砂糖菓子の弾丸」という表現には、ああ、なるほどと思った。
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ほろ苦いチョコレートを背伸びして食べたような後味を残してくれた本。冷めた主人公、山田なぎさの語り口は、饒舌で痛々しい。それによって一層、暗澹とした空気が重みを増している。晴れているのに曇っているような。不穏な。海野藻屑というスケープゴートとの出会い、そしてこの成長物語は、しかしなぎさではなく、兄、友彦のためにこそあった。ゆえに、いわゆる「鬱系」と呼ばれる本書だが、逆に勇気をもらうことになった一冊である。
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桜庭一樹と西尾維新は現代の小説界を引っ張っていく――と、勝手に思っている。胸が焼けそうになる程の甘さで包まれているのだが、甘くなければ生きていけなかった少女のことを思うと心に苦味が走る。撃ち抜けられない弾丸を撃ち続けることで、彼女だちは少しでも救われていたのだろうか?余りにも辛い余韻を、今作は残す。
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設定が設定なだけに割と冒頭はぶっ飛んでて、読んでいて痛い痛いと思う箇所がいくつもありますが、それは読んでいくうちに気にならなくなります。ギャグっぽく思わせておいて、至ってシリアスなお話です。
なんというか、割とぶっ飛んでいる割には話が身近といいますか、若者がぶつかったりする嘘とか友情とか子供とか大人とか、そういう部分が非常に上手く描写されていました。女性作家はやはり自分らと視点が違うのかなとまざまざと思わされつつ、最後の方のなぎさの心の動きが凄い絶妙でした。好きです、こういう話。
と言うわけでちょっと気に入ったので次は「荒野の恋」を買ってみることにします。
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母とひきこもりの兄と暮らす山田なぎさと、元歌手の父と暮らす海野藻屑。
その家庭はギリギリの状態にもかかわらず、それを維持させようと、なぎさは強くあろうと心に決め、藻屑は自分をごまかすために幻想世界をつくり、演じた。
甘ったるそうな表紙の絵とは対局にあるキツイ話でした。
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☆五つつけようか迷った。超迷った。
んでも、やっぱ桜庭節と言うかノリが若干耐え切れず☆四つ。
今回は桜庭節を逆手に取ってきやがった・・・オチが!オチが!!・゚・(ノД`)・゚・
しかし本編中で出てくる『貴族』って表現、最高だなぁ
たしかにやってる事まんま貴族だ・・・見事な風刺です
『好きって、絶望だよね』とか、ゾクリとする一文が稀に挿入されてたり、読み終えた後も延々考えさせられる話。ああ。
素晴らしかったです、いい本でした。
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この題名にはすごく納得。
砂糖菓子のような甘い日々は簡単に崩れていく。脆弱な存在では上位にいる存在を超越できない。それにしても藻屑を電波少女設定にする必要があったのかがちょっち謎。
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人気があるということで読んだんですが、予想以上で驚きました。しょせんは萌え系なのかと思ったらそうでもなく、うまい文章というイメージではないのに、言葉が染みこんでくる感じが不思議。
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本屋さんでかわいい絵柄の表紙とタイトルの「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」という不思議な響きの言葉に惹かれて読んでみました。
ふわふわでかわいくて、でも毒もあるという文章にはまってしまいました。
藻屑も「実弾」を撃てていれば・・・(つД`)
それでも藻屑の放つ悲しいけれど優しい「砂糖菓子の弾丸」もすごくスキです。
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「ぼくはですね、人魚なんです」/
あたしは"実弾"にならないよけいなことにはかかわらないのだ。/
「好きって絶望だよね」/
あれが、自分をバラバラ死体にするためのでかい鉈を自ら背負って歩いている、かわいそうな女の子の後ろ姿だったなんて。/
「なぎさは"ストックホルム症候群"って、聞いたことあるかい?」/
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話題だったので……。
最初から結果は最悪。
切なすぎる容赦のない現実、痛々しくて、無力なもどかしさ。
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「好きって絶望だよね」……。
藻屑ちゃんは幸せだったのかそうでないのか、絶望するほどの「好き」ってなんなのか、これを読んであなたも考えてみませんか????
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表紙とは裏腹な痛い話でした。藻屑の暴力に対する見解がすごく悲しかったです。絵で選ばない方が良いです。