紙の本
この本についての書評を読むと、北上次郎は主人公が自分の過去に戻る話、それだけで感動するってのがよくわかる。でも、それだけが面白い小説の条件?
2004/12/31 23:10
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
さてさて、読書人としては見過ごすことの出来ない「本の雑誌」、そして北上次郎絶賛の作品の登場である。早速、我が家の長女のご意見は、ということだけれど「だめ男、大きらい、読んでいて面白くない」とバッサリ。おいおい、重松清『いとしのヒナゴン』に続き、これも駄目?ちょっと、反抗期のせいでものの見方、歪んじゃったんじゃあないの、と不安になる。
装画 尾崎仁美、装幀 関口信介。
主人公は毛利圭介、大学の4年生、21歳。学業の傍ら、夜の歌舞伎町のスナック《バンビーナ》でバイトをしている。9月1日、日曜日の午後、のんびり休んでいた彼のもとに見知らぬ男から「今から約一時間後の午後五時四十五分に、地震が起きます。三宅島で震度四、東京では震度一です」という電話がかかってきた。それが発端だった。
そして、予告された時間、それが実際に起きたことを知る。同じ時、予告が現実になったことを知った人間が9人。その予告をした男、風間は「時間を遡れる 過去のある時点に戻って、人生をやり直せる そんな夢みたいなことが現実に出来ると知ったら、誰もがそれを望むとは思いませんか?」と彼らに言う。
風間によって過去に遡る人間として選ばれたのは、池田信高、ゴルフのレッスンプロ。高橋和彦、トラックの運転手。企画会社の社長天童太郎。金融関係の会社員の横沢洋45歳。社会人なのに高校生のように見える篠崎鮎美23歳、会社員。大森雅志、食品科学関係の研究者。建設機械会社の社長郷原俊樹。浪人生の坪井カナメの九人。
彼らが戻ることになるのは今年の1月13日。戻ることが可能になるのは10月のある日。そして、無条件に彼らに手渡された支度金百万。でも圭介の頭にあるのは、彼のことをふり、そして突然、自身の結婚前に会いたいと平然と言ってくる我儘な元の彼女 町田由子、25歳のことである。
この本の中でも触れられているのがケン・グリムウッド『リプレイ』で、北上の絶賛とくれば、北村薫『スキップ』を始めとする『ターン』『リセット』の三部作を思い起こす人も多いはずだ。特にグリムウッド『リプレイ』、北村薫『スキップ』が出たときの北村を始めとする本の雑誌社の熱狂ぶりは凄かった。
私に関していえば、北村薫『スキップ』は衝撃で、少女の健気な決意に、たまたま乗車していた新幹線の車窓の雪景色がグチャグチャになってしまい、30分以上も顔を上げることが出来なかった、そんなことが今でもありありと脳裏に浮かぶ。ま、『リプレイ』に関しては、さほどの想いはないけれど。
とまあ、脱線してしまったけれど、それだけの作品と言える。ただし、悪い意味でだ。毛利圭介の後半での決断が、どう考えても納得できない。そのきっかけになった事件にしても、それは小説の中でしか置き得ない、あまりにもいい加減な話なのだ。そんなことで、人生変えるなよ、と言いたくなる。
たしかに、前半はいい。SFチックな展開は、誰だって楽しむことができる。しかも中盤で、話は連続殺人を軸にしたミステリに変化する。これは予想していなかっただけに、オウオウ、と思うのだ。しかし、そのあとがいけない。ま、感情移入できる人物造形だけがいい話の条件ではないだろうが、ここまでわけのわからない決断となると、勝手にしろである。
同じ絵空事でも、ここまで苦々しい話も珍しい。今になって思うのだ、北上の絶賛の理由を最後まで読んでおけばよかったと。私と同じように苦渋を飲んだような選択だったのではないか。もしかすると、最初に褒めてあとで、ドサッと落とすとか。しかしなあ、これなら乃南アサ『しゃぼん玉』のワルのほうが、はるかにいいぞ。
紙の本
決められたこと
2005/01/26 17:41
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投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
10ヶ月前に戻って人生をやり直しませんか、という電話がかかってきたらどうするか?
そんなバカな、と鼻で嗤ってとりあわなかったとする。
では、予言どおりに、1時間後地震が起きてしまったら?
この、怪しい電話に呼び出されて集まった10人の男女。
共に10ヶ月前にワープすることになるが、戻った先に世界で、一人、また一人と死んでいく。
実は、年齢も職業もバラバラな彼らにはある1つの共通点があった。
それを解くのが本書のポイントなのだろうが、それ以上に、1つの歯車の違いがカオス理論よろしく、1人の人間の人生を全く違うものにしてしまう様子のほうが読ませる。
「はたして運命は変えられるのか?」
この命題にたどり着くために、ラストが駆け足になってしまった感がある。
最後に、著者の恋愛観は、か〜な〜り〜シビアと見た。
じっくり味わいたい方は、是非「イニシエーション・ラブ」も読んでください。
正直、「イニシエーション・ラブ」が面白すぎたので、本書に過剰な期待を抱いてしまった。
というわけで、やや辛い採点★★★☆☆。
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突然大学生の毛利の元へ謎の電話が。“リピートしませんか?”『リピート』というのは、現在の記憶を持ったまま、過去に戻ることによってやり直すことのできる人生。リピーターの特権は《未来の記憶》を有している点にある。競馬で稼いで悠々自適な生活を送るのもよいかも。ただし、戻る日時は決まってる。10ヵ月前にしか戻れない。 SFのようなミステリーのような。 リピートした人々が次々と死んでゆく。謎の男風間の正体、選ばれたリピーターたちの本当の運命。ハラハラドキドキですごく面白かった。
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乾くるみさんが「イニシエーションラブ」に続いて、またまた奇抜な作品を発表されました。
10ヶ月前の世界に戻ることが出来るタイムトラベルだけど、肉体が移動するわけではなく、10月前の世界の自分の肉体に今の意識だけが移動してしまうと言うもの。この状態で、どうなるのか、、さまざまな問題があるのが面白い。しかも、その10ヶ月前に移動することを「リピート」と言うのだけど、10月30日にある場所に行くと1月13日に戻ってしまうのです。
そのリピートを経験した人が次から次へと死んでいく、、、その謎は・・・なるほどって思わせるストーリで、個人的にはこういう話は最高に面白いのだけど、とっても残念ながらラストが平凡だったです。もう少し衝撃のラストがあれば、間違いなく今年最高の最高の殿堂入りでした。
しかし、ここでは多くは語らないけど、10月前にリピートするチャンスが自分にあったら、はたして体験するだろうか?競馬やロト6や株など、思いのまま儲かるかもしれない、、って単純に思うけど、そこにはもっと大きな落とし穴が・・・・そこまで考えるといま生きている世界がどんな世界か、不思議な気分。
2004.11.26
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大学生毛利圭介のもとにかかってきた1本の電話。そこから彼にとって「人生のやり直し」がはじまる。10人の仲間と「リピート」して戻る10ヶ月前。
ところが、「リピート」した先の「やり直しの人生」では仲間たちが次々と命を落とし・・・
まいりました。リピートを境に前後に大きく分けることができるのですが、リピート前の不安と好奇心、葛藤といったものがうまく読者をひきつけ、そしてリピート後は一転して一緒にリピートした仲間たちの死の謎解きミステリへと変貌する・・・まさに『リプレイ』+『そして誰もいなくなった』という言葉がぴったりです。(実際、『リプレイ』は作中にも登場しますし)
以下ネタバレ注意。
まさに思いもよらない真相でした。かなり緻密に伏線が張ってありそうなので、読後にもう一度R9とR10とを比較してみたのですが、正直なところあまりよくわかりませんでした。
ただ、リピートできるのが10ヶ月前へという設定は、おそらく十月十日を意識しているのではなかろうかと。だって、リピートしてから妊娠して、もう一度リピートする前に出産までしてしまったら・・・
ラストは、よくよく考えればR10へリピートしたときの状況から十分にありえること。本来の人生とは違う死に方なんて! 人間の生と死を本当にゲームのように扱っているので、読後感はあまりよくないですね。真相の開示方法と、読後感の2点は前作『イニシエーション・ラブ』のほうがよかったです。
ちなみに、舞台は平成3年のようですね。4横綱で武豊・メジロマックイーン降着事件ですから。
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タイムトラベルものは好きなのでどんな展開になるのかワクワクと一気読み。なるほど〜〜〜。ラストシーンに近づくごとにどんな結末になるのか大体想像できちゃいましたが、それでもおもしろかったです。
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自分だったら信じるだろうか、どの人物の視点に近いだろう…などと考えながら読めた。理論展開に頭がいっぱいになった所もあったが、面白かった。ただ、最後のオチがもう少し予想だにしなかったようなものだともっと良かったと思う。
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ミ、ミステリかしら?どんどん読めた。一気に読めた。つじつま的にはあってて、こういう状況下ではこうなるのかもしれないと思ったけど、やっぱりラストがあーってなってだめだった。
☆☆☆+
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所謂、タイムトラベルもの。自分の過去に行って時間を繰り返してしまう。
大学生の毛利に、1時間後に地震が起きると言う予告の電話があり、その後電話の主はリピーターであると名乗る。しかも毛利を時間旅行に連れて行くと言う。時間旅行の仲間は10人、10月30日に東京湾上をヘリコプターで待機し、黒いオーロラが現れるとその中に突入、すると1月13日まで日にちがもどってしまう。
そこから彼らのやり直し人生が始まる。リピーターにとっては10月30日までの時間は再びリセットが可能なのだ。
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本作は上下組で結構なページ数なのだが、この作者にこれだけの長編は合ってないと思う。無駄なページが多過ぎて、半分くらい読んだところで退屈する。設定がSFっぽいので期待はしていないものの、それを上回る疲労感に襲われた。真相の部分は納得出来るが、キャラの人間性がペラペラなので最後まで「リピート」の世界に入れないまま読了した。
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大学生の毛利の自宅に、ある日不審な電話がかかってくる。風間と名乗るその人物は、一時間後に起こる地震を分単位で正確に予言。実は彼は現在の記憶を保ったまま過去の自分に戻り、同じ一年を何度も繰り返し経験していた。
過去に戻る人生リピート仲間を募る風間についていくことにした毛利。戻れるのはたった一年前で、持っていけるのは記憶だけ。
さまざまな思惑を抱きながら風間とともに過去へむかった毛利ほかリピーター達はその後どうするか・・・?という話。
SFっぽく始まり、しかし過去にもどってから次々起こる不可解な事件によって一気にハラハラどきどきなミステリーに。
話の展開ぶりは文句無く面白かったんだけど、細かいことを言えば主人公の大学生・毛利くんがどうもよくわからないキャラだった。
普通の学生かと思いきや、結構早い段階でただもんでなさが現れてくる。
こういう世間一般の学生が突然事件に巻き込まれ型の小説だったら、主人公はもっと無害というか、共感できるイイヤツ的な存在になると思う・・・そうでなくて何故このようなキャラクターにしたのか。彼のヤな感じの抜け目無さがどこから来るものか、話の中で説明されていればよりよかった。非常に勿体無い。
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偶然、ラストを知ってしまってから読む気をなくしてしまいました。
でも、アイディア的にはおもしろいと思う!
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「リピート」はいわゆる「タイムスリップ」です。でも物質は何も持って行けず、ただ自分の記憶のみが十ヵ月後に戻るだけ、というもの。こういう設定のタイムスリップ物は読んだことが無かったので、なかなか新鮮でした。
記憶のみが十ヵ月後、というのが妙にリアル。登場人物たちも、競馬で一儲けしたり、「未来を予言して注目を浴びたい」などと思ったり、交通事故が起きる場所へ行き、それを間近で見物したり(ひどいですけどね…)と人間の本質のようなものを表に出しています。そういうところもリアルだと思います。
ラストはあっと驚く結末でした。
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タイムスリップがテーマ。
前半は何か読んでて退屈だった。後半は後半で、あっさりし過ぎてる箇所が多々あり。
作品全体を通しては
人間の汚いとこ、醜いとこを、嫌でも見せられた感じ。
自分の生死がこんな風に決められてたら怖いなと思う。
なんか胃が痛い本だわ。長いし。
でも悪くはない、かな。
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おもしろい!
正直あまり期待していなかったのですが、SFタイムトラベルとミステリの融合という好みの設定で、ラストまで一気に読み終えました。
この系統の物語は、ともすると設定説明のためにページの殆どを割きかねないけれど、その構成も見事クリア。
登場人物の書き分けや、動機付けもきちんと書かれていて、久々に勢い良く物語を読めました。