紙の本
読者が若さに擦り寄る必要は全くない、この話のどこにユーモアがある?むしろホラー大賞佳作くらいのほうがピッタリだと思うんだよね、芥川賞の選考委員、何を血迷ったやら
2005/01/30 17:29
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投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』(河出書房新社2004)とともに第41回文藝賞を受賞し、著者が共に20代で、しかも受賞作がそのまま芥川賞候補になり、すわ前回に続き綿谷リサ、金城ヒトミ同様若手ダブル受賞かと世間を騒然とさせた若者文学の一冊。たしか、「笑える」といった選者の評などもあり注目度高し、といった感のある一冊。ちなみに、白岩は1983年生まれだから、受賞時21歳。
で、タイトルにある「野ブタ。」は、ベーブのような本当のブタちゃんではなく、登場人物の一人である小谷信太(コタニ シンタ)のことで、何故、信太がノブタに簡単に読み替えられるようになったかといえば、その風体がズバリ、ブタを思わせるからだという。現代のマッチョブームの対極にいる男ではある。
話の舞台は何処なのだろう、とても都会とはいえない地方の田舎臭い高校としか思えないのは、白岩が学校の描写を全くしないことによる。主人公は桐谷修二、高校二年生。容貌、不明。成績も不明。ただし、本人の弁によれば、頭がいいらしい。その人を見下した自己チューぶりは冒頭で明かされることになる。
で、その彼女、修二と明らかに肉体関係まで結んでしまっていると周囲から思われているのが同じ二年生のマリ子で、かなり美人らしい、勿論、描写は殆どない。また、ちょっと美人でギャル系の同級生というのが美咲で、その友人で重量オーバー女というのが佳苗。勿論、野ブタ。ではない。
修二の取巻き、というかつるんで遊んでいるのが堀内と森川で、これで殆ど主要人物は出揃ったことになる。そんなある意味安定した高校生活に波紋を引き起こしたのが転校生で、さぞかし美女では、という男子生徒諸君の期待を裏切る形で登場したのが、小谷信太、後年の野ブタ。くんということになる。
その現れ方の衝撃たるや中々のもので、勝手な期待を裏切られた男子どころか、女生徒からもその醜さと性格の曖昧さゆえに総スカンを食らうという有様で、それを皮肉混じりに見ているのが、俺、実は偉いんだぜ、と人には見せないながら常に心の奥で思い込んでいる修二ということになる。
ちょっと、晶文社の本ではないかと思わせる装幀は泉沢光雄。写真は上村明彦。写真に協力したのが都立青山高等学校。ちなみに、今時の青山辺りにいる高校生は、この小説にでてくる連中ほど田舎くさくはないので、青山高校の諸君、安心するように。多分、小説に使われたのは白岩の母校京都府立朱雀高等学校で、京都ならばあの鄙びた田舎臭さも納得いこうというもの(うーむ、古都の皆様、ごめんね)。
これがなんで芥川賞の候補になったかは全くわからない。また、この小説を読んで笑い転げたという選者のセンスがどのあたりにあるのか、まったくそのユーモア感覚を疑うのだけれど、こういった不快な小説を読むと、筒井康隆大明神が『笑犬楼の逆襲』のなかで、「某出版社が若い人たちに賞を与えるが、それは疑問(意訳)」といった意味が良くわかる。
文藝賞であればいい、しかし芥川賞である。そこまで時流に媚を売る必要もあるまい。ま、結局は、候補どまりというのは芥川賞だけではなく、出版界のためにもなったはずである。繰り返すが、不快な話である。しかし、読ませる。それは間違いない。しかし、その先は?やはり文藝賞受賞作品と割り切って読むべきだろう。
それにしても、帯の推薦文、綿矢で売った勢いなんでしょうが、ちょっとはしゃぎ過ぎじゃありません、某出版社さん?
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税込み1,050円なら買いですよ、お客さん
2005/02/02 21:46
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投稿者:かつべぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白いには、面白い。一息で読める分量でもあるし、お値段も近頃になくお手頃なので、通勤のお供にはちょうど良い感じ。
その分、お値段分相応の重さしかないというか、何年も読み継がれていくようなことはないだろうなあ、なんて思うところです。主人公の住んでいる街の風景も、通っている高校の佇まいも、さっぱり頭に浮かばないのは、作者の技量の無さなのか、それとも意図的なのかはよくわからないけど、文藝賞を受賞されている(さらに芥川賞候補作!)ということなので、後者なんでしょう、きっと。
でも、中盤以降のだらだらと壊れていく様は、主人公の薄っぺらさと相まって、それなりに読ませてくれるし、このまま、きちんと話を終わらせてくれたら星4つあげれたかも。
惜しいのは、最後の2ページ。なんで、こんな終わり方しかできなかったんだろうか。作者に話を締め括るだけの技量が無かった、ということであって欲しい。意図的にこんな終わり方にしたとすれば、寂しすぎます。
ということは、次作も読んでみるかって気にはなっているわけだから、良い小説なのかな。
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デブで冴えない転校生を人気者にしようとプロデュースするがプロデューサー本人も仮面を被って自分を演出している。最後の結末はあ〜〜という感じで、でもこのプロデューサーは好きになれなかったのでまぁ、いいか。
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ものすごく面白かったです。いじめられっ子を人気者にする話。
現代の「学校生活」を良く出していたと思います。
でも面白いばっかりで、本から伝わってくるメッセージかなんかじはありました。
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わたしは『世界の中心で、愛をさけぶ』は読んでいないのですが、帯の文句を読んで笑える話なのね、と思って軽く読み始めたのです。
でも素直に笑っていいのかな?これ?っていう感じでした。
いじめられっ子をプロデュースしていく過程に笑え、ということなんだろうけど正直悪趣味な話だなあと思わずにはいられなかったです。
それに、主人公の「着ぐるみ」が剥がされていく様子が痛々しかったです。そして結末は、そう来るかー、という感じ。前半と後半の差がありすぎた感が否めない。
ただ、笑える本という観点から見なければ、読みやすくテンポも悪くない文章で、これからの作品が楽しみではあります。たくさん書いていって欲しいと思います。若いんだし。
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フツーに面白かった。クラスの中心の男の子がいじめられっ子の転校生を人気者に仕立て上げるというタイトルまんまの話。
友達付き合いの適度な距離感とか、学校の先生やクラスの女子の描写とかが、「若い、若いな〜」といちいち感傷を呼び起こすものばかり。自分がもう若者とは同列に並べないのだと思い知らされました。
残念なところは、個々のキャラが薄く、幼すぎて魅力的でない点(ひょっとしたら話の内容に合わせて意図的にそうしてるのかもしれないけれど(だったらスゴイ!!)そうは読めなかった)と、ノリのよかった前半〜中盤に比べ終盤失速してしまい、オチに関しては???だった点。
★2ツかな〜と思ったけど、著者が21歳のイケメンだったので★1コおまけ。白岩玄主演で映画化でもなんでもして下さい(笑)。
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タイトルと写真に惹かれて買いました。面白かったですね。軽快なテンポで読めました。
電車の中で笑いそうになりました。人をプロデュースしていたら、作られた自分がほころびを見せて、結局誰もいなくなった、という物語。
適度な愛と適度な楽しさを求めていた「桐谷修二」の気持ちはわからなくはないし、最後の最後で素直になれないのも分からなくはなかったです。
これで続編があっても面白いかな。その後の「桐谷修二」を見たい気もします。
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最後の失速は非常に残念!!青春らしさを貫いてほしかったです…。扱うテーマも、あまり後味のよいものではないという気がしました。テンポは若者っぽくてとてもいいと思うので次に期待!
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一時間ほどでさくさく読めてしまう本。出だしから軽い感じなんですが、おもしろい!読者が若者なら笑えます。で、快調にすすむので油断してると、最後にずどーんとやられます。
新人作家さんみたいですが、これからも読んでみたい人です。
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転校してきた醜いブタをクラスの人気者に仕立て上げようとするエンターテイメント小説。
作者が若いのもあって文体は荒削りな部分もあるんですが、『フッ』と笑ってしまうよなネタが何ページかに1回あって、和みます。
初めとでは勢いが落ちているって言うレビューが多いですが主人公の心が動いてるってのもあるんで、それはそれでいいかなぁと。
ラストの絞め方もわたしは嫌いではないです。
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現代の若者を象徴したような作品。優等生も不良も「真実の自分でない誰か」を演じている。「みんなに好かれるヤツ」を演じている主人公がいじめられ始めた転校生を愛らしいペット的キャラでプロデュース。成功するが、他人に関心のない本当の自分を親しい友人に知られてしまい、最後には野ブタと入れ替わったようになってしまう。昨日まで友達だと思っていても、たったひとつの小さな疑惑からだれにも相手にされなくなる。集団心理というのは、学校というところは怖いところだと思いつつ、その中で脆い仮面をかぶって、それが剥がれないように、少しのほころびも起きないように周りに気を配りながら神経質に過ごすのは相当なストレスだろうと可哀想になる。青春真っ盛りなのに。
まぁ現代の学校生活はさておき、作品自体はというと、結末はシュールだが口語体で気軽に楽しめる仕上がりだ。
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若者ならば共感できる話。少し扉を開ければヘドロのようにどろどろした高校生の微妙な友情の距離感を、軽いコミカルな文体という薄皮を被せて明るく見せているのでさらりと読める。笑える描写も多々。でもその一方で、ちょっと不快な小説だとも思ったり。主人公・・嘘の自分を演じ、近すぎず遠すぎずな「ぬくい場所」を友情に求めている、そして、その彼がいじめられっこを人気者に仕立て上げようとする姿勢は、ある意味とても意地悪な感じ。どこか綿矢りさの「蹴りたい背中」の主人公を思い出させられました。自分はお前らとは違う、みたいな匂いを感じさせるところとか。人への接し方は違えど根本的な部分で、この二人の主人公は似ている感じ。基本的に人を見下している小説だよね。どこを取っても。ただそんな点を、あくまでエンタメの視点から表現しているから、笑い話で終われる部分も多いし、それが「野ブタ。」の最大の強みであり魅力なのかもしれない。ただ、終盤で主人公と野ブタ君の立場が逆転していくところは読んでて痛ましかった。色々言ってはみたけれど、結局この小説の最大の不快点は文章かな。(笑)は頂けないです。こんな文章が、いずれ許容される時代が来てしまうのかなあ。「////」や「・・;」などの表現法が普通に「小説」として括られてしまう未来も遠くないのだろうかと不安になりました。
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おもしろくて1日でさらっと読めちゃう。でも終わりが微妙だった。
オレこれを電車の中で読んで、一人笑ってました。
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文体は軽くてとっつきやすいし、読んでいくのがとっても楽しい。でも、これって少なくともハッピーエンドじゃないはず。オチにちょっとびっくりしました。
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第41回文藝賞受賞作。
一人称語りって、その人の頭の中を読むわけだから主人公がどういう性格かや気持ちの温度とかによって読みやすかったり読みにくかったりしますよね。
修二くんの頭の中は少々読みづらいところもありました。
表現が現代人ならではで精度が高いけど一文が長すぎ!
あたし頭かたいかな?文章中に普通に「(笑)」って多用されてるのにも少しひいてしまいましたよよよ。慣れちゃえば平気でしたが(´ー`)
でも話の運びはすごいと思いました。特に最後らへん。
白岩玄さんて本あまり読まない人で初めて小説書いたらしい。
すごいよー。あたしはすごく巧くできてると思うのだけど。
期待以上に面白かったと思います(´▽`*)
それにしても河出書房は最近若い子いっぱい出してますね。
『黒冷水』の怒りの温度には共感できたなぁ。現代人だからかな。