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紙の本
野ブタ。をプロデュース
著者 白岩 玄 (著)
【文藝賞(第41回)】舞台は教室。プロデューサーは俺。いじめられっ子転校生(キモチ悪いほどおどおどしたデブ)を人気者にすべく、俺はプロデューサーを買って出た! 『文芸』掲...
野ブタ。をプロデュース
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- 税込価格:14,190円(129pt)
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商品説明
【文藝賞(第41回)】舞台は教室。プロデューサーは俺。いじめられっ子転校生(キモチ悪いほどおどおどしたデブ)を人気者にすべく、俺はプロデューサーを買って出た! 『文芸』掲載を単行本化。第41回文芸賞受賞作。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
白岩 玄
- 略歴
- 〈白岩玄〉1983年京都市生まれ。京都府立朱雀高等学校卒業。イギリス留学を経て、現在、専門学校に在学中。
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この小説、(笑)だけではないです、永遠の青春文学です、まさに、これは
2006/04/16 08:04
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:NKポチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
読み始めてほんの数ページでなんだかとても懐かしい文体に出会ったような。。。
そう、サリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」。
主人公の男の子の頭の中のおしゃべりが細かいつぶやきまでズラズラと綴られているところ、彼が見たこと聞いたことがそのまんまズラズラと綴られているところ、おしゃべりな割には主人公の顔も背格好もいまいち思い浮かべることができないところ、修二の住む町も通っている高校も家庭のことも部分だけが詳しすぎるので読者はちっとも全体像が描けないところ、ほんと、よく似てます。
この小説、(笑)だけではないです、永遠の青春文学です、まさに、これは。
思い返せば、小学校も中学校も高校もすべて「場の計算」(いわゆる「空気読めっ」)が必要に迫れられ「場の計算」で日が暮れていました。地元の公立学校に通っていたので、学校の教室だけでなく近所のおばさんからのチェックまで気にする日々。小学校から受験して地域外の学校に通い、いじめの不安とは無縁の環境でまっすぐ前を見て勉強していれば、そんなくだらない「計算不要」、どんなにかのびのびと育つことができたでしょうに、とうらやましく思い返すこともありますが、こうして社会に出て働く身になってみると、「計算不能」になるより「抜群の計算能力」を持つに越したことはない、というのが実感です。
しかし、桐谷修二クンは「計算間違い」をやってしまいます。そしてそれは単なる「うっかり計算ミス」の減点では済まされずに、致命傷の落第点になるのです。
それはなぜか?
桐谷修二クンはいわゆる「計算バカ」だったのです。自分のために計算することしか出来なくて、他人のために計算することまで頭が回らなかったのです。たとえ「計算ずく」でも他人のためを少しでも思ってのことであれば、相手にその良心は伝わるものです。
おそらくこの本の根深い心理は「空気を読んで場の計算」をしたことのある人にしかわからないと思います。その意識を持ったことのない人は、本書をバカバカしく笑うことだけで閉じ、即、古本屋に売ってしまうことでしょう。評価の分かれるところはそこだと思いました。
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現代の人間関係にひそむ恐怖
2005/11/29 20:42
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:由季 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いやー久々、面白くてぐいぐい一気に読めた本でした。
文の感じは高校生の日記じゃないけど、会話がたくさん使われてるトコや(笑)が盛んに使われてる感じが低ベルの印章を一瞬受けたのですが、㌧でもない!!
本当物語のテンポが良いんです!!凄く計算された文章だという事が分かりました。退屈な場面が全然㈲りません!
軽快でテンポのいいこの作品だからこそ、一見(薄っぺらい?)と思うような語り口が効果的なのだと思いました。
オススメです!ぜひ読んで㊦さいo(^-^)o
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最後まで手を抜けない
2005/06/20 13:10
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kappen - この投稿者のレビュー一覧を見る
若手作家だと思って軽くみていたら、最後の最後で感動してしまった。
面白いとは聞いていたが、文章で笑わすというよりストーリーで感心してしまった。
あのクラスの人気者であった主人公が・・・・・・
そして最後のページでは、「え?こうきたか!」と思わせられ見事予測を裏切られた。
どうであれ、一度読んでみる価値あり◎
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ドラマの影響で・・・
2006/02/03 18:55
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:えりこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
ドラマの影響で買ったんですが、原作面白い!
正直ドラマのほうでは役者メインだったんで小説も期待してなかったけど
こんなに面白いとは思ってなかったです。
1ページ読むと次のぺージが気になって・・・とゆう
魅力にハマってしまいました。
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末は石田か金城か
2004/12/20 21:51
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナカムラマサル - この投稿者のレビュー一覧を見る
主人公のクラスにある日、転入生がやってくる。
デブでワカメヘアーで脂性でブ男の小谷信太は転入一日目にしてクラス全員から気持ち悪がられる。
主人公は信太を「野ブタ」として皆から愛される人気者に仕立て上げることにする。
高校生同士の会話はいきいきしているし、教室の中の喧騒や閉塞感もよくでているし、主人公が野ブタをプロデュースする作戦も、腹を抱えて笑えるほどおかしい。
冒頭の、主人公の朝の身支度場面から、のりつっこみと言うか、目まぐるしく回転する高校生の思考回路がありありと描かれていて引き込まれる。
石田衣良か金城一紀の小説を読んでいるような感じがした。
主人公・桐谷修二は要領がよく、クラスの中心的存在。
仲間の森川や堀内とバカなことを言い合ってクラスを盛り上げている。
こういう輩がクラスに一人くらいはいたなぁ、と思わせるキャラクターなのだが、読み進めていくうちに、修二のキャラクターは着ぐるみショーの着ぐるみを模していることが分かっていく。
彼の考える人間関係はドライだ。たとえば、
「くだらないおしゃべりは仲良いことを証明する一番簡単で効果のある方法だ。『笑い』は人を勘違いさせる。楽しいと思うことが続けば、そのうちそれは『好き』という感情に掏り替わっていき、いつしかいっしょに笑える友だちは親友に成り代わっていく。あとは困っているときにちょっと手を差し伸べてやればいい。自分の手を汚すようなピンチから救わなくたって、一緒に悩んで涙を流さなくたって、こんなにも簡単にインスタント親友が出来上がる。これでとりあえず高校三年間は寂しくもなく、程好い人気を得て安泰に過ごせるというものだ。」
このような友人との距離感について言及している箇所が多くあることから、精一杯つっぱってみても、友人とのつながりの希薄さを彼自身疑問視していると感じられる。
「ストーブと同じだ。近過ぎたら熱いし、離れすぎたら寒い。丁度良いぬくいところ。そこにいたいと思うのはそんなに悪いことか?」
この問いに対していいとも悪いとも本書では明言しておらず、答えは読者に委ねられている。
終盤、トーンががらりと変わっており、少し戸惑いを覚える読者も多いだろう。
あの笑わせ路線のまま終わってくれてもよかったのにという感じがしないでもないが、主人公のそれからを想像させられるラストでもある。
彼はこのまま本音を語ることなく世の中を渡っていくのだろうか、と。
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次は、何を書くのか楽しみ。
2005/01/29 14:51
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:広 - この投稿者のレビュー一覧を見る
始めは笑えたが中盤から笑えなくなる。
野ブタを読んで、高校時代の自分と会ってしまった気がする。
胸の奥の方を槍で突かれてしまった。
読み終えた今、友達に電話を掛け「飲みに行かないか?」と誘っていた。
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笑いあり、シリアスあり
2005/01/17 02:20
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:karasu - この投稿者のレビュー一覧を見る
帯にあった、「野ブタ。」を読んで笑いなさい。有難うございます。笑わせて頂きました。しかし、笑いばかりではない、哀愁もしくは、今の時代の世知辛さまで感じさせて頂きました。
小谷信太こと、野ブタの、人気者への荊の道、その過程。勿論、桐谷修二プロデュースで。笑いあり、涙はあったかしら? 中身は良い人でも、外見だけで認知されないなんてことは、往々にしてあるものなのだ。
それに比べて桐谷修二、彼の着ぐるみの装着っぷりは、いっそ嫌味なほど完成されていたようだ。着ぐるみには努力を惜しまずなのだから、多少驕ってしまっても仕方が無いのではないだろうか。たとえ着ぐるみに裂け目ができていても、中々自分では見つけにくい。円滑そうな人間関係も、着ぐるみ一枚のペラペラなものだなんて気付かず、着ぐるみを着続けてしまうのだ。
修二の、着ぐるみを「着る」、「剥がれる」、そしていかなる時も、死守しようとする心情など、後半部分はシリアスモードでかなり読まされた。
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今回芥川賞候補となったが、直木賞作家の称号も手にして欲しいと思える逸材である。
2005/01/09 14:59
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本作の著者の白岩玄さんは京都市出身の21歳。
第41回文藝賞受賞作であるが、今回芥川賞にもノミネートされた。
発表前に読むのは選考委員になりきって読めるので楽しみである。
ちなみにもし受賞されれば男性としては史上最年少となるらしい。
若い世代の作家らしく言葉が溌剌としている。
どちらかと言えば純文学というより、エンターテイメントの方向を目指して書かれた方が成功するような気がする。
なんといっても描写力に優れた作家である。
たとえば、主人公桐谷修二が人気者になるべくプロデュースする、転校生の野ブタこと小谷信太の登場シーン。
「生理的に受け付けない男に対し、女はとてつもなく残酷だ。その残酷さは出会い頭にいきなり辻斬り無茶苦茶なもので、この太平の世に無情な人斬りがうようよいるかと思うと、世の気持ち悪い要素を持つ男性諸君はいつ斬られるかとビクビクしているだろう。」
物語は序盤は“野ブタ。”のキャラを中心に笑いを適度に交えて進んでいくが、中盤以降は主人公の生き方(作中では“着ぐるみショー”と言う言葉を使っている)を中心に方向転換。
結構リアルな話となっている。
やや内面描写が稀薄な気もするが作者の言いたい事はしっかりと伝わってきた。
「言葉は人を笑わせたり、楽しませたり、時には幸せにすることもできるけれど、同時に人を騙すことも、傷つけることも、つき落とすこともできてしまう。そしてどんな言葉も、一度口から出してしまえば引っ込めることはできない。だからこそ俺は、誰にも嫌われないように薄っぺらい話ばかりしてきた。言葉には意味を、意志を持たさぬように、俺は徹底してきたつもりだった。」
ズバリ本作は“自分探しの物語”なのである。
学生・社会人・主婦に関わらず、読者も必然的に日常の自分の周囲で起きる物事に対して少し考え直しきっかけとなる作品であろう。
少し心に“メスを入れられた”って感じがする作品である。
このあたり作者の非凡な才能を垣間見たのは私だけであろうか…
たとえ今回芥川賞を逃しても、近い将来直木賞の有力候補になる可能性の極めて高いハイポテンシャルな才能を持った作家の誕生を祝福したく思う。
トラキチのブックレビュー
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イケてます。
2004/12/18 17:26
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:のらうさぎ - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校2年の「俺」、桐谷修二は、セルフプロデュース力に長けた、自称学年の中心人物。その修二が、デブでキモくてウザイ転校生、小谷信太=野ブタを、一躍人気者にするべく、つんくばりのプロデュース企画を練り上げる。
クラスメイトはじめ、周囲の人々を「お客様」になぞらえ、作り上げた自分像の「着ぐるみショー」で学校の人間関係を乗り切ってゆく主人公の調子のよさと危うさのバランスが絶妙だ。若者らしい軽快な語り口だが、単に饒舌なだけではないことは、最後のどんでん返しに至る構成力を見ても明らか。
嫌われ者の野ブタをどうやって「キモカワイイ」キャラに変えてゆくかは読んでのお楽しみとして、「作り上げた自分による、他人への影響力を試してみたくて仕方がない高校生男子」、という主人公像にデジャヴを感じ、記憶をたどってみた。思い出した。貴志祐介の「青の炎」だ。ほんとうの自分をひた隠し、ガールフレンドの心を溶かして恋心を誘ってゆく…まあ、完全犯罪をたくらむ少年と、「(笑)」多用少年とはトーンがかなり違うのだが、巧妙なつもりで自壊していくところは共通している。笑えて、ちょっぴり切ない。
人間関係って難しい。高校時代から大して成長していない自分を省みつつ、それでももう少し友達づきあいに真剣だったあのころを思い出した一冊だった。
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ウサギハカメニカナラズマケル?
2005/01/19 22:58
1人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ツキ カオリ - この投稿者のレビュー一覧を見る
糸山秋子の『袋小路の男』に出てきた「あなた」もイヤな男だったが、それを楽々凌ぐ奴が、こんなに急に現われた。
この小説の主人公、俺=桐谷修二(きりたにしゅうじ)である。
この男、高校生なのに、何かと力関係に敏感で(男性はある程度、仕方がないのかもしれないが)、周囲の人の動きと思惑を、かなり正確に計測する術に長けている。勉強もできるようだし、何しろ自信満々で鼻につく。とんでもない奴だ。
なおかつ、自分が一番頭がいいと思っていて、周囲のクラスメートを見下げている。そこに、小谷信太(コタニシンタ)という転校生がやって来た。見るからに冴えない、信太=シンタ=ノブタ=野ブタを、俺=修二は、プロデュースしようと思い立つ。
ソンナニ ヒトヲ ミサゲテバカリ イルト シッペガエシ ヲ クラウ ン ジャナイ ノ?
ジブン ノ ケイサン ハ ヒトニ バレテイナイ ト オモッテイル ノ カモシレナイケド ケイサン ッテ イガイ ニ ヒトノ メ ニハ ミエテ イルモノヨ ヒトッテ サ ソンナ ニ バカ ジャナイ ン ジャナイ?
「バカ」 ガ クチグセ ナノハ ヨクナイ ン ジャナイ ノ?
「バカ」ッテ イイタク ナッタラ クチ ニ ダサズ ニ ココロ ノ ナカ ダケ デ イッタラ?
ドウシテモ 「バカ」ッテ イイタク ナッタラ セメテ カンサイベン ノ 「アホ」 ニ イイカエタ ホウ ガ イイカモネ ソノ ホウ ガ ニュアンス ガ ヤワラカイ ン ジャナイ?
「バカ」「バカ」ッテ ヒトノコト ヲ イウヤツ ホド 「バカ」ッテ ハナシ モ アルカモ ヨ?
読みながら、そんな片仮名・疑問系の台詞が、何度も、ナンドモ、頭を過(よぎ)った。
こんなに「ヤーナ」男が描けているということは、やはり「スゴイ」こと、なのだと思う。
果たして、俺=修二の、野ブタ・プロデュースは成功するのだろうか?
結末の、ある部分が、ある意味予定調和的だったのが、逆に救われたような気がしたと同時に、ラスト部分は、「エ? ソウイウ カイケツ ホウホウ ナノ? ソレ ッテ サ ズルイ ン ジャナイ? イヤ ズルイ ト イウ ヨリ ハ???」と、また片仮名の台詞が頭に浮かんできた。
マエ ジョウホウ カラ ソウゾウ シタ ナイヨウ ヤ ナガレ トハ アル イミ チガッテ イタ カモシレナイ ケド ヨンデ イク ウチニ ヨソウ デキタ ブブン モ アッタ ヨウナ キ ガ シタ ワ デモ ヨソウ デキナカッタ ブブン モ アッタ リ シテ トッテモ ドクゴカン ガ フクザツ。。。
コンナ オトコ ヲ アナタ ハ スキ?
ソレトモ???
ゼヒ ゴ イチドク ヲ バ。
紙の本
読者が若さに擦り寄る必要は全くない、この話のどこにユーモアがある?むしろホラー大賞佳作くらいのほうがピッタリだと思うんだよね、芥川賞の選考委員、何を血迷ったやら
2005/01/30 17:29
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
山崎ナオコーラ『人のセックスを笑うな』(河出書房新社2004)とともに第41回文藝賞を受賞し、著者が共に20代で、しかも受賞作がそのまま芥川賞候補になり、すわ前回に続き綿谷リサ、金城ヒトミ同様若手ダブル受賞かと世間を騒然とさせた若者文学の一冊。たしか、「笑える」といった選者の評などもあり注目度高し、といった感のある一冊。ちなみに、白岩は1983年生まれだから、受賞時21歳。
で、タイトルにある「野ブタ。」は、ベーブのような本当のブタちゃんではなく、登場人物の一人である小谷信太(コタニ シンタ)のことで、何故、信太がノブタに簡単に読み替えられるようになったかといえば、その風体がズバリ、ブタを思わせるからだという。現代のマッチョブームの対極にいる男ではある。
話の舞台は何処なのだろう、とても都会とはいえない地方の田舎臭い高校としか思えないのは、白岩が学校の描写を全くしないことによる。主人公は桐谷修二、高校二年生。容貌、不明。成績も不明。ただし、本人の弁によれば、頭がいいらしい。その人を見下した自己チューぶりは冒頭で明かされることになる。
で、その彼女、修二と明らかに肉体関係まで結んでしまっていると周囲から思われているのが同じ二年生のマリ子で、かなり美人らしい、勿論、描写は殆どない。また、ちょっと美人でギャル系の同級生というのが美咲で、その友人で重量オーバー女というのが佳苗。勿論、野ブタ。ではない。
修二の取巻き、というかつるんで遊んでいるのが堀内と森川で、これで殆ど主要人物は出揃ったことになる。そんなある意味安定した高校生活に波紋を引き起こしたのが転校生で、さぞかし美女では、という男子生徒諸君の期待を裏切る形で登場したのが、小谷信太、後年の野ブタ。くんということになる。
その現れ方の衝撃たるや中々のもので、勝手な期待を裏切られた男子どころか、女生徒からもその醜さと性格の曖昧さゆえに総スカンを食らうという有様で、それを皮肉混じりに見ているのが、俺、実は偉いんだぜ、と人には見せないながら常に心の奥で思い込んでいる修二ということになる。
ちょっと、晶文社の本ではないかと思わせる装幀は泉沢光雄。写真は上村明彦。写真に協力したのが都立青山高等学校。ちなみに、今時の青山辺りにいる高校生は、この小説にでてくる連中ほど田舎くさくはないので、青山高校の諸君、安心するように。多分、小説に使われたのは白岩の母校京都府立朱雀高等学校で、京都ならばあの鄙びた田舎臭さも納得いこうというもの(うーむ、古都の皆様、ごめんね)。
これがなんで芥川賞の候補になったかは全くわからない。また、この小説を読んで笑い転げたという選者のセンスがどのあたりにあるのか、まったくそのユーモア感覚を疑うのだけれど、こういった不快な小説を読むと、筒井康隆大明神が『笑犬楼の逆襲』のなかで、「某出版社が若い人たちに賞を与えるが、それは疑問(意訳)」といった意味が良くわかる。
文藝賞であればいい、しかし芥川賞である。そこまで時流に媚を売る必要もあるまい。ま、結局は、候補どまりというのは芥川賞だけではなく、出版界のためにもなったはずである。繰り返すが、不快な話である。しかし、読ませる。それは間違いない。しかし、その先は?やはり文藝賞受賞作品と割り切って読むべきだろう。
それにしても、帯の推薦文、綿矢で売った勢いなんでしょうが、ちょっとはしゃぎ過ぎじゃありません、某出版社さん?
紙の本
税込み1,050円なら買いですよ、お客さん
2005/02/02 21:46
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつべぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
面白いには、面白い。一息で読める分量でもあるし、お値段も近頃になくお手頃なので、通勤のお供にはちょうど良い感じ。
その分、お値段分相応の重さしかないというか、何年も読み継がれていくようなことはないだろうなあ、なんて思うところです。主人公の住んでいる街の風景も、通っている高校の佇まいも、さっぱり頭に浮かばないのは、作者の技量の無さなのか、それとも意図的なのかはよくわからないけど、文藝賞を受賞されている(さらに芥川賞候補作!)ということなので、後者なんでしょう、きっと。
でも、中盤以降のだらだらと壊れていく様は、主人公の薄っぺらさと相まって、それなりに読ませてくれるし、このまま、きちんと話を終わらせてくれたら星4つあげれたかも。
惜しいのは、最後の2ページ。なんで、こんな終わり方しかできなかったんだろうか。作者に話を締め括るだけの技量が無かった、ということであって欲しい。意図的にこんな終わり方にしたとすれば、寂しすぎます。
ということは、次作も読んでみるかって気にはなっているわけだから、良い小説なのかな。