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吉田秀和全集 24 ディスク再説 みんなのレビュー

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紙の本

吉田秀和と同じ会場で音楽を聴いた、吉田の褒めるCDを聴いた、同じ時代を生きる喜びを実感させてくれる評論家の最新の成果。長命であれ、知性よ

2005/06/10 22:19

13人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る

吉田秀和全集の最終巻である。前の23巻『音楽の時間5』で、奥様を亡くされて文章を書く気がしなくなってしまったような一文があって、そうなると最終巻はどうなるのだろう、時間的に2004年の文章はないだろうに、と思っていたら、2001〜2003年に音楽雑誌に連載されたディスクを中心に、古くは1959年、最新では2004年の詩があるけれど、どちらかと言うと1980年代の文が多くて、安心したというか納得。
読んでいて思わず23巻のことを思い出してしまうのは1977年に書かれた『冬の朝』。夫婦二人きりの暮らし、どちらが早く目をさましても、相手のことを気遣い、床の中で本を読んだりしながら、のんびりしている。そんな或る朝、奥様がさきに目をさまし、枕もとにある眼鏡をとって・・・
わずか2頁の小文だけれど、老夫婦の優しい気遣いと、吉田の短気、そして老いたら私たちもこうありたいと思わず願いたくなるような穏やかな朝。笑い声が聞えてくる、ああ、でももう今の吉田には、思い出の中にしかこういう時間はないのか、と思うと、やはり人間の死というものの残酷さと、それが誰にとっても避けることのできないものなのだと思い、なんともいえない気持ちになる。
それは、巻末の水戸芸術館に関する文章でも、この芸術館を建設、吉田を招いていわゆる箱物行政とは一味違う、水戸を芸術のある意味発信地としようとした佐川一信の早すぎる死を偲ぶ文章を読みながら、結局、そこに行く機会もないままに、開館こそ知ってはいたものの、その後の状況も知らぬままにいた自分の不明を恥じるばかりだ。
しかし、この本を読んでいて吉田の考え方をよく理解できたのは、ピアニストの中村紘子の発言から、日本のあるべき姿を語る『時の流れのなかで』だろう。外国人演奏家や指揮者が日本の音楽会を席巻する様を憂える中村に対し、吉田は優しく彼女をかばいながら、しかし断固として、経済でも文化でも日本が自国の産物で世界を満たすことを拒否する。そして一人のショパンを生んだ、そのことだけでもポーランドを立派な音楽国と思い、日本も今のままで十分に立派な音楽国だと宣言する。
こういう吉田の世界観は、この全集を第一巻から読み通せば、殆ど変わることなく一本の線として彼の文章のどこにでも見ることができる。そして、それが彼の戦時中の情報局の仕事に携わり、少しでも音楽家の手助けをしようとすることにつながる。それは巻末の小池民男「解説にかえて」に詳しい。
もう一つ私が感心したのがリヒャルト・シュトラウスのルートヴィヒ・トゥレイ宛の書簡集を紹介する「友情の手紙」で、そこには
「それにしても、シュトラウスは、すごく耳のよい少年だったにちがいない。このころの彼の手紙には、演奏会へいったりして何か曲をきき、それについての印象をのべる際に、さかんに楽譜が書きこまれている。一度きくと、すぐ、譜面にとれるらしいのである。少なくとも自分のうけた印象は、管弦楽曲であろうと、オペラであろうと(!!)、楽譜で具体的に書きしるす力をもっているのだ。」
結婚する前、東京文化会館で何度、吉田の小柄な白髪姿を遠目に見て、それだけで十分に音楽を聞いた気になったことだろう。小池の解説に吉田の批評のあり方に触れた文がある。「音楽が生まれてくるプロセスを言葉で描く。気分ではなく、〈形をなしたもの〉になっていく過程を叙述する。読む人は音楽の手応えを感じ、音楽を聴いている気分になる。」そんな書き方をこころがけている、という一文を読んだ瞬間、自分のやっていることは一体なんなのか、思わず身がすくんだ。
小池のことば「完結した全集を眺めながら、音楽の導き手として、吉田秀和という稀有の人が同時代にいたという幸運に、あらためて感謝の念を深くする」で終えよう。

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