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紙の本
ことばの贈り物
2012/01/31 13:14
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildflower - この投稿者のレビュー一覧を見る
きたむらさとし(喜多村恵)さんの作、ロウラ・ストダート(Laura Stoddart)さんの絵による本書は、お世話になっている方から誕生日に贈られた1冊。
きたむらさとしさん自ら描かれる絵本はユーモラスで漫画的な画風が多いが、本書のロウラさんの絵と逢うとまるで別人の佇まいを見せる。作者たちの住むイギリスの薫りが漂う、淡々と静謐ななかにもふと口元が緩むような豊かな味わいのある詩が3章に分かれて語られる。
<すべての旅は、
引き延ばされた家路である>
という言葉がある。
人はいつも
どこかへ向かって急いでいる。
帰るべきどこかへ向かって
気ぜわしく、また同時に
ゆっくりと。
(1「家」p11)
ひと区切りの地面。
大地のほんのひとかけら。
そんな小さな平面を<<庭>>と呼ぶとき、
尽きない思いが、そこに宿る。
子ども時代に遊んだ場所。
青年時代にはボールゲームに興じた。
年を経て、花や野菜を植え、育てた。
人生の時々を過ごした地面のことが
一冊の本のなかの出来事のように思い出される。
一ページごとの、記憶の庭。
(2「庭」p59)
Every cloud has a sliver lining
(すべての雲には銀色の裏地がついている)
*
地上では曇っていても
雲の上側は太陽に照らされて輝いているということ
空のどこかに仕立て屋がいて
雲にミシンをかけている。
暗い雲の裏地に
輝く希望の光を縫いつけている。
(3「田園の空模様」p72ー73より)
長い引用になったが、目の前にうつる田園の日々やくらしの機微を細やかに掬い取りながら、描かれ語られているのは昇華された結晶のような言葉たちだ。口元で小さく音読しながらロウラさんの絵をたどれば、手仕事や庭仕事にいそしむひとびとが居り、その狭間で見聞きするような光景もある。童話の切れ端のようなものがたりがある。
季節は廻り、風が吹き、ひだまりが生まれ、いのちが時とともに育まれる。その営みは地に足のついた確かなもの。そのなかでふとよぎる想い。警句ほど強くなく、でも含みのある言葉を繰り返し味わううちに、次第に深呼吸するように、からだとこころがすっと楽になる。季節の変わり目さえも忘れるほど慌ただしい毎日のなかに、本一冊分、そうした休息があってもいい。
丁寧に供された上質な紅茶を一杯、戴いたような読後を味わった。
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