紙の本
第三の生き方、NPO
2005/06/13 07:29
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆうどう - この投稿者のレビュー一覧を見る
「NPOは、ミッションに始まりミッションに終わる」。ミッションこそが、NPOの最大の存在価値である。
そもそも、NPOとは何か? それは、「民間によって自主管理され、利益配分することなく、独自のミッションのために機能している組織」のことだと著者は言う。企業と異なり、利益追求のための組織でないことも必要条件だが、さらに重要なことは、「独自のミッション」を持っていることだ。さらに、組織の目的、使命=ミッションを確立し、ミッションを遂行するためのマネジメントと、ミッションを達成するためのマーケティングが必要であると、著者は説くのである。組織として機能するためのNPO独自のマネジメントと、事業領域を定め、クライアントのニーズに応えながらミッションを実現していくためのマーケティングである。ミッションと同時に、組織としてNPOが機能し、存続していくためには、マネジメントとマーケティングも重要な視点である。
そもそも、NPOの起源は、1844年、ジョージ・ウィリアムズがYMCAを組織したことに求めれらるらしい。YMCAは、宗教的、道徳的信念をもって奉仕活動や生活改善に取り組むための集団としてスタートした。産業革命下の都市社会ロンドンにて過酷な条件で働く労働者階級の青年たちに向けて、人間的な絆のある農村的な共同体、市民によるコミュニティを構築しようとした。
このような歴史をもつNPOの活動領域は、政府・自治体が提供する公共財の場ではなく、企業が供給する私的財の場でもない、準公共財と言われる第三の領域となる。税金によって賄われる政府・自治体の活動は一律・公平が原則となり、多様なニーズに応えるには限界がある。企業活動の原則は経済的利益の追求であり、市場価値の少ない分野にはなかなか手が出せない。その両者の穴を埋めるのが準公共財という領域で、具体的には、医療、福祉、教育、芸術といった分野だ。
また、我々にとって、経済的糧を得る仕事(公)と、生活を安定させてくれる家庭(私)以外に、生きがいを求める場としてのコミュニティ(共)が、生活を豊かなものにする。そういった意味でも、NPOは「第三の生き方」なのである。
電子書籍
著者の主張が強い感があります
2021/08/09 13:21
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投稿者:akihiro - この投稿者のレビュー一覧を見る
哲学の理論や聖書の引用が少なくなく、「我々はこのように生きるべきだと思う」という論調の文章が散見されます。NPOの必要性についての主張は理解できますが、抽象的な概念レベルの話が多く、NPOの設立や運営に関する具体的な手法として参考になるような話は少ないと感じました。
そもそも本書の表題からして、NPOの必要性を感じている人が読者層だと思うので、そこでNPOの必要性を説くことにここまで紙面を割く必要があるのか疑問に感じます。「ヒューマンな絆」など意味がわからない文言もあり、読みづらさも感じました。
著者が言いたいことを書いている箇所が大半、という印象です。YMCAの起源などは知らなかったので勉強になりました。
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NPOの運営や問題点に関する具体的な事例がもっと詳述してあるとよかった。背景や意義などの部分がちょっと長すぎ。
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福祉・学校・国際協力・環境など様々な分野に広がるNPOの活動について書かれた新書。
産業社会の発展と限界、日本的経営、ボランティア、その他様々なことを取り上げ、非営利組織とは何かを書いた1冊です。
大学生は読むべき!!
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数あるNPO本の中ではよくかけていると思う。というのは、社会での役割に照らして、NPOの位置づけを考えているから。ほかの本は大抵、「会社じゃなくてNPO」みたいな安直な導入が多い気がするので。若干ドラッガー礼賛しすぎの気もするが。
さてNPO=非営利組織の定義は利益を分配しない、というそれに尽きるのであって、NPO=社会貢献、会社=利益、というのは必ずしも正しくないと思っている。どちらも何らかの形で社会の貢献しなければ、存続することはできない。
違うのは、会社なら投資家(株主)に分配するために「顧客からサービスの対価として収益を得る」という事業型の枠組みしかとりえないが、NPOの場合は分配はいらないので、「顧客からサービスの対価として収益を得る」以外に、「寄付者から収益を得て、顧客にサービスする」という別の形(非事業型)でニーズへのソリューションを提供することができることだ。
つまり、
会社:受益者=負担者
NPO:受益者=負担者(事業型)or受益者≠負担者(非事業型)
となる。そういう意味でNPOの真の固有性は非事業型にある、というのが私の現在の認識である。
そういう意味でNPOの役割は市場の失敗を解決することにあり、そういう意味で国家とも大きく重なるものだが、国家との違いはマイナス面として資金集めに強制力がないことであり、プラス面としてそれ故に一律性や平等性に拘らず、資金使途が自由になるということがある。この辺は割愛。
しかし、こうした認識でNPOを理解している枠組みは世間ではあまり流布していないのでないか。
つまり世の中のニーズをカタログ化して、それぞれにふさわしいソリューションとしての組織形態を一覧にするのがいいのではなかろうか。これはいつか実現したい。
逆に地域のために、女性のために、子どものために何かすれば、それで社会貢献だというのはリーズナブルではないし(そうした企業はいくらでもある)、古いのではないか。
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NPOマネジメントと企業マネジメントの違い
そして企業家としての要素まで
総合的に描かれている本
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肩肘張りすぎでしょう、古典や学者の名前を羅列しても権威は生まれません。
適正な社会モデルってのが面白かった、以上!
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非営利組織化の理念がよく書かれていた。
単純な、資本=悪、非営利=善。という風な図式化で書かれていず、比較によってNPOの特徴をあげているところにこ好感がもてた。
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2011/4/20読了。
題名からNPOでの個人の振る舞いについての記述を期待していたのだが、内容はNPOの組織論やマネジメント論、ミッションの重要性に関するものが大半であった。
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[ 内容 ]
福祉、環境、国際協力、学校など様々な分野に広がるNPO。
その活動は、企業や行政の限界を克服し、新たな市民社会の原動力となっている。
その一方、机上の理想論、脆弱な組織づくりで失敗するケースも多い。
これからのNPOに何が求められているのか。
独自のミッション(使命)をいかに構築するのか。
さらにマネジメントの視点から、卓越した事業展開、スタッフの人事管理、財務の基盤づくりなど、必要な条件とは―。
著者の豊富な体験から、感動と活力ある世界を描く。
「もう一つの生き方」を提唱する意欲作。
[ 目次 ]
NPOの感動と活力
第1部 現代社会とNPOの役割(私たちはいま、どこにいるのか―経済突出社会の現実;豊かさの再構築)
第2部 成功の原則・失敗の原則―NPOの運営(NPOの成功とその基本原則;NPOの失敗とその予防装置)
「もう一つの生き方」へ踏み出す
[ POP ]
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[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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NPOの社会的な役割や位置付け、現状について論じた本。
NPOは「非営利組織(Non Profit Organization)」の略だが、なぜ注目されるのか。一言で言えば「行政や企業の活動の補完」にあります。行政だけでは非効率的だし、企業だけでは採算の取れない政策は行えない。そこで、両者の活動で満たされない豊かさを追究し、提供するのがNPOの役割。
この本の長所は、単なる綺麗事に終始せず、NPOの現状を捉えている点です。ボランティアも「自己犠牲」、「奉仕」といったイメージから、「肩肘張らず、自分にできることをする」という気楽な参加、というイメージに変わりつつある。
NPOの活動にはボランティアを含めたスタッフによる崇高な使命感に支えられている。この本では、それをNPOはNBO(Mission-Based Organization)と表現するように、使命は重要である。
だが、その活動は、無条件で称賛されるべきものではない。善意の押しつけ、企業や他のNPOとの競争による世俗化などに陥らないよう注意する必要がある。
興味深かったのは、戦後日本の社会の考察。日本的経営は「自由からの逃走(フロム)」の受け皿である、滅私奉公の方向を国から会社に切り替えたものである、という指摘である。日本的経営というものは、冷戦体制下、高度経済成長期という時代性を強く反映したものだったのだ。だから「モーレツ」に働くことが尊ばれたが、それが今になって制度疲労を起こしている。
経営学の勉強にもなる、有益な本であった。
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NPOについての実践論というより、思想・哲学論。
歴史的、社会的、経営論的に見た場合のNPOの可能性を論じている。
内容的には、NPO組織にとっての官僚制の重要性を指摘した点が新鮮だった。
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NPOの位置づけが自分の中で明確になったものがよかった。
行政も企業もできないが、必要とされていることを担っていくのがNPO.
また世界が広がった。
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NPOの役割について知りたくて読書。
経営や社会学の色合いが強い本。大学の講義やゼミの教材に使われそう。
NPO誕生の歴史、日本社会の変化、NPOが今後の社会において果たせるだろう役割など学ばせてもらえる。
より共感してもらい賛同者、協賛企業を増やすために何が必要か。
ボランディア組織を形成し、彼らに自発的に動いてもらうために必要な要件やNPOから彼らに与えること、貢献できることは何かを考える。
読書時間:約45分
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NPOを中心に据えた、日本の社会構造の変化やこれからの生き方・働き方に関する本。仕事と余暇の関係など、哲学・思想のお話もちらほら、かなり広く浅くいろんな話が出てくる。
本書の中ではNPOの基本は"mission based management"、企業はただただ利益を追求するとあるけど、企業でもCSR経営や地域貢献を理念に掲げるところは増えているし、理念が先か利益が先か、卵とニワトリの関係みたいになってきてるんじゃないかなぁと思った。
分かり易いし読みやすい、NPOだけでなく日本的経営の概略について知りたい人にとっても良い本です。