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やはり、警察の目を盗んで中村屋に逃げ込む所が一番手に汗握った。ボースだけでなく、中国から日本に逃れてきた「革命家」の多くも、最後には日本側に取り込まれる運命を辿った。是非は兎も角、もう一度中村屋の「インドカリー」を食べに行こう
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新宿中村屋のインドカリーの源は、日本に亡命してきたインド独立運動の闘志だったとはつゆ知らず。大正期の知識階級の亜細亜主義の潮流を知るにも好適の一冊。今やアジアで一番元気なインドとの交流の歴史にもっと光を当てて良い時期に来ているのでは?
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インド独立運動に一生をささげたボースの生涯を描いたもの。新宿のお菓子屋である中村屋にどうしてカレーもあるのか、という問から始まっているものの、それはほんのエピソードで(しかし、中村屋の娘は父の正義感に感じてかボースに嫁ぎそして夭折する。彼女の心の中がどうであったかはほとんど描かれていないのは不満)、中心は、ボースがいかにアジア主義を掲げる日本に期待し、そして失望していくかを描くことにある。大東亜共栄圏をいかに声高に唱えようと、その本質が欧米にかわる日本による支配の実現にあることはインド革命家の目にもあきらかであった。それにしても、ボースの娘に多くの資料を提供され、本書を完成させるまでのいきさつがほとんど書かれていないのは少々もの足りない。
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日本に亡命し、インド独立運動のオピニオン・リーダーとして活動したラース・ビハーリー・ボースの伝記です。
「中村屋のボース」というのは、彼が新宿の洋菓子店『中村屋』に匿われ、その恩返しとして本場のインドカリーを伝えたことから付いた呼称です。
日本で最初に本格的インドカリーを広めた「中村屋のインドカリー」ですが、その裏には近代日印関係の壮大なドラマが秘められていました。
日露戦争で勝利し、国際社会での地位を高めつつあった日本へのアジア解放の期待。
その一方で、朝鮮・中国を侵略し、英国と同じような帝国主義路線を突き進む日本への失望。
やがてインド独立のため、日本の侵略路線を擁護せざるを得なくなり、不本意ながら同胞たちから日本の傀儡視されたボースの苦悩が描かれています。
・・・正直この本を知るまで、ラース・ビハーリー・ボースという人物の存在をまったく知りませんでした(汗
インド独立運動の指導者で「ボース」という名であれば、「チャンドラ・ボース」を知ってただけです。
ついでに、新宿の中村屋も、単にそういう洋菓子店があるということだけしか知らず、普段新宿を通る時にもまったく意識してなかったので、まさかそのお店で本格的インドカリーを食べられるとも思ってませんでした。
しかしこのラース・ビハーリー・ボースの存在を知ってから、ムチャクチャ食いたくなりましたねw
ニン、トン♪
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『インドの時代』と同じ著者による本。色んな世界が、運命の糸でつながっていることを感じる一冊。巧みな構成は、そこらへんの小説家よりも数段上!
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2009年初読書はこの本。おお面白い!
中村屋にインドカリーを伝えたと言うインド独立の闘士ラース・ビハーリー・ボースの伝記でございます!
インド独立の大義の下、兵士を煽動して反乱をたくらみ英国総督を目論んだ挙げ句指名手配の身となった結果日本に亡命したものの、英国に身柄を引き渡そうとする日本政府に目をつけられたボース。しかし、玄洋社の頭山満や黒龍会の大山周明と言った近代日本の黎明に燦然と名を残す大物アジア主義者たちの庇護を得て、当時一介のパン屋であった中村屋に身を隠すのであった!
・・・ええいったいどこの冒険小説ですか?
いっそ大河ドラマの主人公にしたらものすごく面白いんじゃないかと言う。
プラグマティストが昂じるあまりの後年の立ち居振る舞いも含めて、大変素晴らしゅうございました・・・・!
のっけから本年のプラチナ本。まあ数年前の刊行ではあるんですが☆ 読んで損無し!
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インド独立運動を日本で展開した、中村屋カレーパンの生みの親でもあるボースの記録。
日本史の中では有名な人だったのかな?初めて知った。
著者が30そこそこでこれだけのものを書きあげたのに、感心するとともに、同年代の自分としては若干焦る。
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理想が現実に屈したのだと感じた。そして冷静さを失い周りの状況が見えなくなってきたのではないか。今も昔もそんなに変わらないのが人間の性なのであろう。
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お世話になっているインドの御坊様のお知り合いが書かれている本。
1915年、日本に亡命したインドの闘士。新宿の中村屋に身を隠し、アジア主義のオピニオンリーダーとして、インドの独立を指導したRBボース。
中村屋のカリーの奥深さもあわせて知る本です。
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日本に亡命し、日本からインド独立に最後まで取り組んだ志士とそれを支えた日本の物語。
戦前の日本は孫文を初め海外の独立運動を革命家を支援していた。しかし、一方で日本は、満州国を立て帝国主義に進んでいく。
ボースは、インドの独立を心の底から願いながら、インドから離れた日本で影響力と実行力を持つために日本の帝国主義的な部分を受け入れる。また、日本での支援を得る日本文化を理化する資質を持っていた。
結果的にそれらが、日本に操作されているようにとられ、インドの独立家の不信感を招く。
そして、最終的にそれらが要因となり、日本からももう一人のボースに道を譲ることを打診され、潔くリーダーを譲る。
独立の目的のためとはいい、道を譲るボースをすごいと思う一方で、ボースのつらさも伝わりとても複雑な気分。
自国を理解するものだけをイデオロギーに関係なく受け入れる日本という国の特徴は今も変わらない気がする。
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http://blog.goo.ne.jp/abcde1944/e/417cd8333e4b48e55b485361d4d107ca
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偉業を成し遂げられなかった男の生涯。血沸き肉踊る青年期と無為で焦るばかりの壮年期、その落差が熱涙。
あと、インド近代史は全く不勉強で反省した。
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5年ほど前に図書館で借りて読んだ本。
もう一度読みたい一冊。
中村屋のカリーを見かけるたびに思い出しているw
週間ブックレビューで取り上げられたのが読むきっかけだった。
著者が若いことに驚いた。
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行ったことはないが、新宿中村屋の名前は知っていた。月餅の包装紙にあるロゴも見覚えがある。中村屋を開いた相馬愛蔵と黒光の名前は、安曇野にある碌山美術館を訪ねたときに眼にした。中村屋の敷地内には、碌山荻原守衛のアトリエがあった。碌山は黒光を愛していた。代表作「女」の像は、別の女性をモデルにして制作されたが、完成した作品を見た子どもたちは「カアさんだ!」と叫んだそうである。
まだ武蔵野の名残を残す内藤新宿にあって、中村屋は一つの文化的なサロンとしての役割を果たしていた。高村光太郎をはじめ、芸術家や文化人、政治家が出入りしては、交流の輪を広げる場となった理由の一つに、「中村屋のインドカリー」があった。そのインドカリーの生みの親こそが、本評伝の主人公、中村屋のボースこと、ラース・ビハーリー・ボースであった。
インド統治の責任者であったハーディング総督に爆弾テロを行ったR・B・ボースは、インドにいられなくなり、伝手を頼って日本に渡る。しかし、英国よりの態度をとる日本政府はボースに対し国外退去を命じる。政府の弱腰の態度に業を煮やしたのが頭山満、玄洋社の首魁であった。その頃、新聞でインド独立の闘士の窮地を知った相馬夫妻は、頭山を通じてボースを中村屋敷地内にあったアトリエに匿うことになる。一歩も外に出られないボースは、アトリエにあった炊事場でインドカリーを作って故国を偲んだ。その味が「中村屋のインドカリー」の原点である。
後に黒光の娘俊子を妻にしたボースは、日本に帰化し、日本にいながらインド独立のために奔走することになる。日本語を流暢に話し、独特の魅力を放つボースは、頭山満や大川周明という超国家主義者の領袖を筆頭に、犬養毅、東条英機、広田弘毅という名だたる顔ぶれを知人の列に加えることにより、日本の国策である大東亜共栄圏の宣伝に協力することになる。
ボースの頭にあったのは、ガンジーの非暴力主義では英国の支配からインド独立を勝ち取ることは難しい。だから日本の武力をもって英国を排し、インド独立を果たすというプラグマティックなものであった。だが、当初は日本の韓国、中国に対する差別意識を批判していたボースであったが、日本政府に重用されるうちに批判色を薄め、国策に絡め取られてしまう。
日本の心情的アジア主義者には思想がなかったと筆者はいう。インド独立を焦り、結果的に日本の超国家主義に協力することになってしまうボースもその点では同罪である。しかし、9.11以降、西欧的世界観にも限界があるのも明らかになりつつある。インドや中国というアジアの国々が台頭しはじめている今、アジア的な視座に立つことにより、西洋的世界を見直し、より普遍的な世界を目指す方法もあるのでは、という問いかけが生じる。そこにこそボースの希求した世界像がある。
新宿中村屋の名物「インドカリー」の陰に埋もれていた一人の男の人生を激動の昭和史を背景にくっきり浮かび上がらせて見せた功績が大きい。出生の地インドを訪ね、逃走ルートを実際に走り、体を張った調査で、過去を活き活きと甦らせる。アジトでの潜伏、繰り返される転居という逃��劇は映画を見るようで手に汗を握る。タゴールや、チャンドラ・ボース、『ドグラマグラ』の夢野久作の父親、杉山茂丸をはじめ記者時代の山中峯太郎等、登場人物の顔ぶれも凄い。文学・歴史好きにはこたえられない一作。
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新宿中村屋へは、親子3代でお世話になっている。特に、亡くなった祖母と新宿で買い物をすると帰りに中村屋でカレーを何度もごちそうしてくれた。 インドカリーは中村屋に居候になっていたインド人の留学生が伝授してくれたものというのは聞いていた。 でもこの本を読んで、ボーズはたしかに留学生、でもただの留学生では全くないことを初めて知った。 インド独立運動のリーダー的存在が日本に永住すること自体不思議な運命のめぐりあわせだが、そこに中村屋がからんでいて、インドカリーができて、そしてボーズの独立運動家としての運命があって。。 小説として書かれたものではないので、よけいに「時代」を感じてしまった。