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紙の本
死人に事情聴取したくなるお話でした
2007/08/26 20:15
4人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:hamushi - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙の絵柄やカバーの内容紹介で、どこかさみしい気配の漂う物語なのかなと想像しながら読み始めたのですが、予想外に死の存在感の大きなお話でした。
一応、メインのキャラたちはしあわせな展開を迎えるのですが、途中、なんとも最悪のタイミングであまりにも悲しい出来事が起こり、読んでいて「それはないだろう」的な衝撃を受けます。その出来事に、少しでも作り物めいたわざとらしさがあれば、作品の質はともかく、読む側はもう少し気がラクだったのにと思うのですが、残念ながらというか見事というか、絶妙なリアリティを持って事件は起こり、登場人物たちを悲嘆の淵に突き落とします。
主人公の直希は、幼い頃に父親を亡くして、母の営む下宿屋を手伝いながら高校に通うしっかり者ですが、立て続けに彼にふりかかる精神的試練は、気の毒なほど大きなものです。
幼いころから八年もの間、一途に思い続けた玲司の突然の婚約の知らせに打ちのめされた直希は、失恋の苦しみを祝福の笑顔に隠して、必死で堪え忍ぼうとするのですが、玲司の弟の涼司から突然の告白を受け、慰められるうちになし崩し的に関係を持ってしまいます。涼司は玲司同様、直希の家に長く下宿している大学院生で、昔から直希をからかっていじめるようなそぶりばかりしていながらも思いを寄せ、直希がうちに秘めていた気持ちもすべて見抜いていたのでした。
ところがその翌日、玲司が突然、交通事故死してしまったため、直希の思いも涼司の思いも、けりのつけようのないまま分断されてしまいます。
葬儀のときにも遺品整理のときにも、玲司の死を受け止められず、後悔の中で苦しみつづける直希を見て、涼司は二人の間にあったこともなかったことにしようと告げた上で、直希の心が悲しみに沈み込まないように支え続けます。
そんな涼司の繊細な優しさに触れて、直希も次第に本心から恋心を抱きはじめるのですが、玲司の亡くなる前の晩に、失恋の苦しみを紛らわすためだけに、涼司と心の伴わない関係をもった自分のずるさを許せず、思いを口にすることができずにいます。
あたたかな思いやりに満ちながらも、どこか緊張を孕んだ二人の関係は、やがて、ささいなすれ違いから破綻。お互いに、死んだ玲司を間に挟む形で取り返しのつかないような言葉をぶつけ、深く傷つけ合った上で、涼司は下宿を出て実家に帰り、二人は離ればなれに……。
お話のなかに、誰一人として悪い人間はいないのですが、強いて言えば、立つ鳥あとを濁しまくって逝ってしまった兄の玲司はちょっとどうにかならんものかと思うことしきりでありました。だいたい非の打ち所のない優しい善人というは、恋愛がからむと、ハタ迷惑な存在になりがちです。いい人が亡くなってハタ迷惑と鞭打つのもひどいような気もしますが、婚約パーティの翌日とか、自分に失恋した子が別の恋を見つけそうになった翌日とかを選んで交通事故に遭わなくてもいいのにと思うのです。
その交通事故ですが、物語が高校生の直希視点で語られているからか、実家の近くで車に跳ねられたという以外の詳細が全く分からず、謎に包まれているのが、少し気になりました。玲司は慎重そうな、落ち着いた男性だったのに、慣れているはずの実家近くで、なぜ事故などに遭ってしまったのか。それもほとんど即死に近いようなひどい事故です。何か猛烈に気にかかることでもあって、気もそぞろに歩いていたのか…もしもそうだとすれば、それは案外、自分の婚約を喜んで祝うそぶりをしながらも、どこか様子のおかしかった直希を見ていて、何か察知するものがあったからではないか。そして実のところ玲司のなかにも、直希に対する何らかの思いがあり、そのことに初めて気づいてしまって動揺していたのではないか……などと、つい深読みしてみたくなるのですが、本当のところは、もはや作中の登場人物の誰にも分からないことなのでした。
紙の本
シリアス話
2017/07/31 23:56
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:沢田 - この投稿者のレビュー一覧を見る
タイトル通り優しいイメージで読んでたら、実は人が亡くなる重い話だったという。
「実は受を好きな、兄貴分のからかい攻×叶わぬ片恋中の受」は大好物なので全体的には面白かったです。
ただ、挿絵の受がショタ過ぎるのが気になって気になって内容に集中出来ませんでした。
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