紙の本
人倫にもとる過失を犯した「彼」を、この世の誰が許さなくとも私だけは許そう。私だけが彼の誠意を理解したのだから…と信じ込まされる。脳に関する空想科学さえ到達できない不可能性だから、このように書いたのか。
2005/07/14 00:15
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る
——人の死だけじゃない。どうしようもない愚かしさも僕を傷つける。
自分もその一員だから。しじゅう他人を押しのけようとする人間も僕を
傷つける。てっとり早く金を稼ぐことしか頭にない人間も僕を傷つける。(205P「ニュースの時間です」より)
こう語った「彼」は、いったん社会生活から降りる。そして再び社会復帰を遂げるときに、自分のなかの社会性を降ろす真似をする。永遠に社会生活から降りる結果がおそらくは待っているのだろう。
反社会的な異常心理と呼ばれる傾向のものを扱った短篇が4番目に所収「君微笑めば」から始まり、この5篇めの「ニュースの時間です」につづく。次の「マエストロを殺せ」は文字通り殺人の話なのだが、肉体を滅ぼしても滅びないものがあるという何とも皮肉な事実。それを、殺人事件後の展開で物語るというミステリー。滅びたはずの人間が滅びていないから、気が確かでなくなる「彼」が出てくる。
7番目「ルウェリンの犯罪」は、人命には関わらない。どこかお茶目な犯罪ながら、事件がもたらす結果は廃人の「彼」をひとり生み出すに充分であった。そして最後の表題作「輝く断片」——異常心理を扱ったという点においては、これら一連の短篇のなかで、極めて分かり易いものだ。
異常は通常のものではない。例えば「変わった人」には、誰もが人生においてそこそこの数、行き会うだろうし、かの人の変わり具合は複数の人間よって認知され得る。常軌を逸したいくつもの性質がその人に集中的に盛られて表面に露わだからこそ、「変わった人」のレッテルが貼られる。日常的に観察出来る資質だ。
しかし、異常心理はある時、ある契機を境に、芽生える。これは厄介なことに滅多に他者に気づかれることはない。いけにえになった人間だけが魔の刻に「彼」の異常を認め恐怖する——そういう種類のものだ。
宇宙空間に関する空想科学、地底や海底に関する空想科学、時や空間に関する空想科学などを射程に入れ、こことは異なる別世界に生きる他者の存在を問うことはSF作家には自然な営為であろう。友好か戦闘か、理解か拒絶か。想像力のすべてを消尽させ、魅力的で驚異的、且つ恐怖にもつながる他者を創造することは彼らの楽しい使命なのかな?
/スタージョンという作家は、そこにもうひとつの他者を仮想した。すなわち、個人のなかに眠れる「狂気」という他者である。「狂気」について、あるいは脳の中身については、先ほど紹介した作品が書かれた40年代・50年代から現在に至るまで、すっきり分析する科学を我々人類はいまだ持てずにいる。不可能性の領域である。電脳という概念ほかを用いて、脳をすっきり解析する科学を仮想した小説を書くことも可能だったろうが、どうもスタージョンの興味は、異常者である「彼」の頭の中がどうなっているかということより、99の誠意とわずか1分の異常を人はどう受け止めるべきかという点だったようである。愛と孤独という相反するはずのベクトルが、ふたつ並んで伸びていく先、歪められて生じる「狂気」というもの。
「輝く断片」は、「大好きな小説だ」と書くのがはばかられるファウルズ『コレクター』に似ていた。後者は、監禁した女性と友だちになりたいと願う「彼」が、彼女の下品な言動にぷっちり切れて、取り返しのつかない行為に走る。どうしようもない愚かしさに傷つけられる哀れな犯罪者の純愛であった。どちらも泣ける。「彼」を守ってやれればよかったのに…と。「ニュースの時間です」は表題作より衝撃が強かった。閾を越えて書くとするなら、この文章の冒頭に挙げた絶望感は極めて親しいものに感じられる。たまたま自分には、「彼」に至らない表現や支えがあったというだけのことなのかもしれないと思えるから。
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これなら、日本のエンタメ系大好き読者が喜ぶこと間違いなし。英語表記の名前を別にすれば、もう、そこにあるのは私たちの世界。スタージョンにSF作家の規定は邪魔だけかも
2005/09/19 09:25
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
ショーティとマイクル夫妻に遺産相続のチャンスが転がり込んだ。条件は二人の子育ての様子が伯母さんを満足させること。ただし、二人には子供が、ない・・・「取り替え子」、フリッツは政府機関で要職に就くマッチョタイプの大男。妻のアルマは優秀な24歳の看護婦。二人が公園で出合ったのは、一人の男が八人のチンピラに乱暴されている場面だった「ミドリザルとの情事」、エージェントのクリスが手に入れた原稿は、どこの出版社も手に入れたいと願っているシグ・ワイスの原稿だった。ところがその内容ときたら「旅する巖」。
新聞の日曜版付録に特殊記事を書くようになっていた俺の前に姿を現したのは、いつも学校で俺のことを気に掛けていてくれたヘンリーだった。20年ぶりに再会した昔馴染みに相手が嫌がる酒を飲ませながら男の生き方を教える俺に「君微笑めば」、気さくなマライクルの趣味は新聞をしっかり読むこと。そのマライクルに変調が起きた。活字を認識できなくなった彼は「ニュースの時間です」。
おれはビッグになりかかっているバンドのヴォーカル。難点は容貌。だから、イケメンやろうのラッチを殺した。キーボード担当のフォーンはあいつが居なくなっても、いつまでもラッチ、ラッチと騒ぎまくる。だから「マエストロを殺せ」、病院の無料クリニックの事務手続きを19年も続けるルウェリンは、同棲をしているアイヴィーからは、ルルとよばれていた。その暮らしは秘密だった。世間のことを何も知らない「ルウェリンの犯罪」、今まで女を抱いたこともない彼が自分の部屋に持ち帰ったのは体中から血を流している重傷の女。女の身体を点検しているうちに、死にそうな気配を見つけた彼は「輝く断片」。
各編の位置づけは大森望の解説に譲りましょう。他社から出るであろうスタージョン作品集もふくめて、実に丁寧な紹介がなされていて、今更、素人が何かを言えるようなものではないようです。その大森の言を借りれば、この本はSF作家に分類されるスタージョンの犯罪小説を集めたもの、ということになります。
なかでも、大森は表題作と、「マエストロを殺せ」の二編を傑作と位置づけますが、私は、「君微笑めば」と「ニュースの時間」「ルウェリンの犯罪」が好きです。さほどに評価が分かれるのは、まさにスタージョンの真骨頂でしょう。で、大森がこの小説集を編纂するにあたって、真っ先に収録を決めたのが「輝く断片」。次が、それと表裏一体の関係にある「ルウェリンの犯罪」で、次が「ニュースの時間」だそうです。この三作は異常心理サスペンスらしい。うーん、私って異常好き?
次が「君微笑めば」で、次が「マエストロを殺せ」の順だったようです。「取り替え子」「旅する巖」「君微笑めば」が本邦初訳。で、収録作品の特徴は「真面目すぎるゆえに、正常と異常の境界線をどうしようもなく踏み越えてしまう主人公たち」にある、ということなのですが、そこは読んで味わってください。
大胆なタッチとやさしい色使いの装画 松尾たいこ、装丁 阿部聡です。
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奇想コレクションの新刊! スタージョン第2弾!
『不思議なひと触れ』が様々なジャンルの作品だったのに対して、
こちらはミステリ(というか非SF)作品の短篇集。
今回の表紙は、今迄で一番好きかも。
収録作品
・『取り替え子』Brat
ショーティとマイクル若いカップル。
ショーティの伯母は、遺産を残す条件として、子供をちゃんと育てられる人間と条件を付けてきた。
しかし二人に子供はいない。
ある日、川で拾った赤ん坊は、口の悪い取り替え子だった!
彼は二人に協力してやる、と叔母さんの屋敷に向かう。
・『ミドリザルとの情事』Affair with a Green Monkey
アルマとフリッツの夫婦は暴漢に襲われていた男を助ける。
フリッツは彼をゲイと決めつけ、男らしく振る舞う方法を教えるが……
これ、イマイチ理解できない。
唐突だし、ラストがエロネタなのは判るんだけど……
・『旅する巌』The Traveling Crag
エージェントのが手に入れたクリスの小説は、あらゆる者が感動する傑作だった。
第2作も書いてもらおうとするが、彼は小説からは想像もできないような人格破綻者。
ある日、性格が豹変してしまった人間を捜している女性と出会う。
彼女の話によると……
これはあんまり面白くなかった。
・『君微笑めば』When You're Smiling
傲慢な有能な記者。
彼は無数の未解決事件の中から、共通点を発見する。
ある日、子供の友人ヘンリーと出会う。
彼はいつもにこにこしてて、あまり頭の巡りがよくない。
彼なら大丈夫と、自分の発見した事実を語り出す。
これも実は、イマイチ飲み込めてない。
本当の能力者なのか、それともサイコさんなのか?
・『ニュースの時間です』And Now the News...
ニュースが大好きな男。
我慢できなくなった妻は、テレビやラジオの真空管を外してしまう。
家でニュースが聞けなくなってしまい、彼は家を飛び出してしまう。
SFマガジンで読んだときもぶっ飛んだけど、再読してもやはり凄い。
予想の斜め向こうに飛んでいく展開は、是非読んで欲しい。
ちなみに、ハインラインがネタを提供して書いたとか。
・『マエストロを殺せ』Die, Maestro, Die!
バンドのMC担当のフルーク。
彼は、万能で性格もいいリーダーのラッチの存在がどうしても許せなくなり、
策を巡らして殺し、死体を沈めてしまう。
残されたメンバーは、彼がいつ帰ってきてもいいように演奏を続けるが、
その音楽の中にはいまだにラッチが生き続けており、
なんとかしてラッチを本当に殺そうと考える。
ラッチを殺そうと、狂気に陥るフルーク。
その底流には常に音楽が流れている……
『ぶわん、ばっ!』と同じように、曲が聞こえてきそうな短篇。
・『ルウェリンの犯罪』A Crime for Llewellyn
悪いことはしたことはなく、考えたこともない男、ルウェリン。
彼は19年間、アイヴィと言う女性と暮らしている。
ある日、彼女から打ち明けられた秘密により、彼の中で何かが壊れはじめる……
状況的には孤独でないのに、何か一人きりという感覚を覚える作品
・『輝く断片』Bright Segment
雨の中、血まみれで倒れている女を見つけた男。
家に連れ帰り、看病する。
友達も生きがいもなかった彼だが、
彼女の世話をすることにより、人生の目標を感じるのだが……
『孤独の円盤』『不思議なひと触れ』と同じものを求めながら、
まるで違う方向に進んでいってしまう、胸に詰まるような悲しい物語。
後半の4作品は、本当に面白かった。
個人的には、特に『ニュースの時間です』と『輝く断片』がオススメ。
スタージョンは、仲間がいないのは寂しい、という感覚を描くのが本当に上手いと思う。
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できれば評価したくない。なぜなら、本作品は私にとっての「ミステリ」ではないからだ。そう断定した直後から、読書=忍耐に変わり、あとは事務的にページを繰るだけだった。『取り替え子』『ミドリザルとの情事』が評価5。バラエティに富んだ作品を期待していたが、読めば読むほどつまらなくなっていった。後半の作品は、大まかな部分ですべてワンパターン。各話を読み終えても、「だからどうした?」といった感じで、なんの余韻も感情も涌いてこない。キャラや心理描写等に感情移入できるできない以前の問題で、話そのものが頭の中に入ってこない。よって、読了と同時に記憶の隅っこに押しやられてしまった。世間の評価は高いようだけれども、私は「ミステリ」を読みたいのである。
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この作家の作品に触れるのは今短編集が初めてなのだが、何話か読み終えた時点で気がついた。読後感に独特の癖があるのだ。鮮明さと曖昧さが何度もシンクロする文体が体温にも似た波を生み出し、各作品お約束のように珍妙なクライマックスを迎える。思わず膝を打ってしまうような展開があるわけではない。けれども凡俗ではない後味なのである。
興味が湧いてきたので、別作品も読んでみようと思う。
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うーん、このシリーズのスタージョンの前作「不思議のひと触れ」の方が、まとまりよかったかもしれないなぁ。
今回のは「何ですかソレハ」っつー妙ちくりんな駄作スレスレのもあるんで、それすら彼の余裕(もしくは遊び)と思えないと厳しいかもしれん。
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少し風変わりな短編集。
SFとも少し違うし、そんなに怪奇ものでもない。
でも、驚かされるのが
この小説が書かれたのが50-60年代だということ。
最近、復刻って感じで翻訳され
新しく出版されたものらしい。
が、まったく違和感なく読める。
それだけ、時代を先取りしていたのか。
みたいな。。
読んで損なし。
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スタージョンの文章には破壊力がある。
特に「ニュースの時間です」は良かった。
この主人公が精神異常なのか、それとも
我々の社会のほうがおかしいのか。
もどかしそうに切羽詰まった文章で
つきつけられる純粋。
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どれも良かったなぁー!「取り替え子」は笑っちゃいました。あんな赤子はイヤだよ…(笑)「ミドリザルとの情事」はいまいちオチがよく分かんなくて、「たぶんこういうことなんだろなぁ」と思うんだけど、なんか消化不良で終わっちゃって、残念すぎる…「旅する巌」も好きだなぁ。‘究極兵器’という言葉に対する思い込みをひっくり返されましたなぁ。「マエストロを殺せ」「ルウェリンの犯罪」「輝く断片」は、哀しさが漂っていたなぁ…
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大森望編纂。8篇収録。
何といっても表題作が強烈。誰よりも優しく器用な手と愛に溢れた心をもちながら、その怪異な容貌から愛を受けとることも与えることもできないでいた男の孤独が悲しい。
やることなすこと、思惑から外れていってしまうのが、可笑しくもあり悲しくもある「ルウェリンの犯罪」も忘れ難い印象。秘密にしがみつきたいルウェリンの気持ちには共感する。
「マエストロを殺せ」は、音楽用語が訳のわからないことになっているし、邦題の選び方も含めて小笠原豊樹訳の方が断然良かった。“おいら”ではフルークの複雑さが半減してしまう気がする。
男の中の男に対する揶揄が楽しい「ミドリザルとの情事」。フリッツの妻アルマの最後の捨て台詞が効いている。それにしても大男のフリッツの前腕くらいの大きさって・・・いやはや。
――Bright Segment and Other Stories by Theodore Sturgeon
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まっとうな世界の無神経さになじめない繊細な僕らの話。
嫌いじゃないけど一気に読むと食傷するな。
信じられないくらいヘタな文章が混じってるのはわざとなのか訳者のセンスがないのかどちらなんだろう。今度別の訳で読み直そう。
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ずーーーっと前から気になっていた作家さんの本をようやく。
SFの人だとばかり思っていたけど、これはSFから幻想からミステリぽいのからいろいろ入った短編集でした。
『取り替え子』『君微笑めば』が好きでした。
『取り替え子』はたとえばグリムの初版本に通じる気味の悪さのある大人向け童話。
『君微笑めば』はもちろんあえてそういう書き方をしているんだろうけれど、読んでいる途中で腹が立ってしょうがなかったのが最後ですっきり……と言い切っていいのかなーこれ。そんなサイコパスの話。
『旅する巌』も割りと好きだったけど、SF…なのかな、これ。
何よりインパクトがあったのは最後に載っていた表題作。でもああいう話だと先に注意書きをしてくれていれば……前半はまんまグロというかスプラッタだったので。これもまた最後の数行で息を飲んだ話。私にはちょっとパンチが効きすぎの一品でした。
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初めてのスタージョン。後味の悪い話ばっかりだけどズブズブはまった。これが1番読み応えがあって好きかも。
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雨降る夜に、瀕死の女をひろった男。友達もできず顔も醜い孤独な男は決意する。おれやる、全部やる…。「自分がいままで書いた短篇の中でももっとも力強い作品」と著者みずからが語る表題作「輝く断片」、スタージョン・ミステリの最高傑作「マエストロを殺せ」、先駆的なサイコサスペンス「君微笑めば」ほか、高密度なミステリを5篇、さらに彩り豊かなオードブルとして、コメディ調ファンタジー「取り替え子」、奇妙な味の「ミドリザルとの情事」、愛すべき「旅する巌」の3篇をとりそろえた名作の饗宴。
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全8篇の短篇はどれも奇妙な世界観と捉えきれなさに捉われるような不思議な余韻をもたらす。自分の好みでいえば、前半よりも後半に納められた作品の方が魅力的に感じた。いや、はっきり言うと、前半の作品では正直あまり面白みが分からなかったが、そこで止めずに最後まで読んでみて良かった。【以下ネタバレ含むため未読の方はご注意】それぞれのあらすじ+感想と5段階の個評(★=1、☆=0.5)を。『取り換え子』★★★厳格な叔母の遺産を目当てに赤ん坊を手に入れようとした若いカップルの前に、言葉を話す不思議な赤ん坊が現れ…。取り換え子の設定が奇抜。老女のカチンカチンの心を溶かした子供の魅力。一番ハートウォーミングな話。『ミドリザルとの情事』★☆ある夫婦が半殺しの目にあっている男を救助したが…。???オチが全く不明。ルーリオは女性だったってこと?『旅する巌』★★☆感動の名作を書いた作家の第2作目は最悪。エージェントの主人公が作家の家を訪ねると人格が豹変し粗暴な男がいた…。SFコメディ?『君微笑めば』★★★いつもニコニコしている幼馴染のヘンリーに街で偶然会った男。彼の笑顔の裏には…。意外な胸の内が明らかにされてちょっと唖然。ブラックだ。『ニュースの時間です』★★★☆新聞、TV、ラジオのニュースをこよなく愛する男がそれらを突然取り上げられてしまい、行方不明に…。喪失感を漂わせながら言葉も文字も分からなくなってしまったマクライルの隠遁生活場面ではやるせなくて泣きそうになった。そんな気分にさせておいてまさかのラスト。できれば違うオチの方がよかったなぁ。『マエストロを殺せ』★★★☆カリスマジャズプレイヤーに嫉妬する醜いMCのとった行動とは…。冒頭の三匹のピンク色のナメクジの正体は途中で気付くが、男の劣等感が狂気に変わり犯行を重ねていく語り口が絶妙。『ルウェリンの犯罪』★★★☆生まれてから「いい人」でしかなかった男。自分にだって悪いことができる!と行動に出るが…。何をやっても思うように上手くいかない様が哀れ。だが、実際には悪い事態にならないのだから上手くいってる、というところがちょっとコメディ風にも思える。『輝く断片』★★★★血まみれで歩道に倒れていた女を自宅に連れ帰った男。彼の目的は…。初めの方は男が何をしようとしているのか分からず不気味。やがて治療しているのだと解ったあたりでは、治療シーンの詳細な描写に気分が悪くなり飛ばし読み。だがあまりにも不器用で真面目な男の心の傷が明らかになるにつれ、これは美談で終わるのかとチラッと期待したが、ラストは見事に返された。ラストを飾るだけあって強烈なインパクトだ。