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紙の本
陳舜臣、待望、珠玉の短編集
2005/07/25 08:19
8人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
陳舜臣は言わずと知れた在日華僑の作家だが、長編でも短編でもたっぷりと楽しませてくれる。在日華僑とはいえ、中国モノではなくとも読み応えがある。推理小説家としての腕前も一流である。『青玉獅子香炉』などは忘れられない名作である。『枯れ草の根』では江戸川乱歩賞を受賞している。
本編は待望、珠玉と題したが、単行本として出版された『集外集』を文庫版にしたもので、けっして新しいものではなさそうだ。卒中で倒れた後、大震災に遭ったが、その健筆ぶりは読者にとってはうれしい限りである。
9作品が収録されているが、標題にもなっている『獅子は死なず』が最も力が入っているようだ。主人公はインド独立の英雄であるスバス・チャンドラ・ボースである。詳細はまだしも、名前くらいは聞いたことのある方が多いであろう。しかし、おそらく半数は誤解しているであろう。すなわち、新宿中村屋で有名なボースはラス・ビハリ・ボースである。もちろん、まったくの別人である
チャンドラ・ボースは独立の父、ガンジーの左腕である。右腕は言わずと知れたネールである。本作品はそのボースの遍歴を語っている。小説というよりは近代アジア史の一部といってもよい。戦後しばらくは財宝がらみで時折名前がマスコミに登場していたボースであるが、台湾で非業の死を遂げたボースの足跡を知るには格好の作品であろう。
その他には『回想死』も気に入った作品である。陳舜臣のミステリー独特の香りがする。1920年代の中国大陸は孫文を始めとする国民党が結集していたころであり、国共合作が図られ始めた頃である。この辺りの歴史的知識になると中国が日本における歴史教育を問題視する理由がよく分かる。日本人は古代中国史には時間をかけているせいもあって、興味を持つ人も知識を持つ人も多い。しかし、近代中国史となるとからきし駄目である。
日本の近代史とくに戦後史については何も教えていない中国であるが、中国の近代史については日本人もほとんど無関心、無教養なのである。ましてや、戦争についての知識においては言うまでもない。
時代背景はさておき、この当時の東アジアでは、留学などの人的交流が盛んに行われていたが、陳舜臣はその関係を巧みに利用して小説に仕立て上げている。大陸の政治情勢が混沌としていた状態にあったので、その混乱にあわせて読者を物語りに誘い込む手腕が時代も感じさせて秀逸である。
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