作者の成長振りが手に取るようにわかる作品集。
2006/05/11 01:00
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トラキチ - この投稿者のレビュー一覧を見る
新潮社主催のR-18文学賞の第1回読者賞を受賞しデビューした豊島ミホ。
本作は彼女のデビュー作の文庫版である。
とはいえ、全3編のうち原型をとどめているのは表題作のみ。
実際のところは“デビュー作1編プラス新作2編”。
豊島ミホの“出発点と原点を噛み締めれる”贅沢な作品集と言えるのである。
「ハニィ、空が灼けているよ」は大幅リライトされたもので中編。
現時点で単行本掲載時の作品を読んでないので比較できないのが残念であるが、ひと言で言えばとっても完成度の高い作品。
日本に戦争が起こるというSF的設定となっているが、ハニィ、ダーリン、教授の三者三様の思いやりが心地よい。
女性読者が読まれたらハニィこと麻美ちゃんがいかにしあわせものであるか体感できるのである。
途中足を痛めるシーンは辛くって思わず目を背けたくなりますが、頑張って読み通しましょう。
次は表題作の「青色チェリー」。
予備校の屋上から隣のラブホテルを覗き見する男女を描いた官能的作品。
個人的にはこの作品は“ブレイクタイム的な作品”だと思っている。
うまく官能的な作品を青春小説的に仕上げている点は称えたいと思う。
そしてラスト、私のもっともお気に入りである「誓いじゃないけど僕は思った」。
男主人公である飯田浩介が印象的である。
中学時代クラスメートだったアツコという女の子に恋した2年間をずっと引きずって生きている。
そのアツコとは7年間会っていない。
主人公の想いは下記の言葉に集約されている。
アツコの中で僕は、昔浜辺で拾った小さなガラスのかけらのようなものでしかないのだろう
まさに心の琴線に触れるという言葉であると言えよう。
よくわかるんだ、主人公の気持ち。
この作品に関しては女性読者よりも男性読者の方がより理解できることは間違いのないところ。
もちろん、豊島さんの作品を読む男女比率は2対8ぐらいであろうから、女性読者に対して、男性の本当の優しさを精一杯表現していると言えばそれまでなんだが・・・
腐れ縁的友人の憲の友情も読ませどころとなっているがこれこそ真の男の友情と言ったらいいであろう。
不器用でどんくさいけど自分の信念を持っている主人公にエールを送りたい。
アツコちゃん、しあわせものだよ、きみは・・・
文庫本の裏に“女の子のための三つのストーリー”と書いてあるが、この言葉に物議を醸したい(笑)
女性作家でこれだけ男性の気持ちを描けるのは驚愕物であると言えよう。
全体を通しては表題作と残りの2編との出来栄えの差が顕著に表れている。
もっとも表題作は娯楽作品、残り2編は心を揺さぶる作品ということなんだろうが・・・
敢えて表題作をリライトしなかったのは作者の大いなる自信の表れであると受け取りたい。
逆に言えば「青色チェリー」を書いたから“豊島ミホという作家が前途を誤ることなく進んでくることが出来た”とも言えよう。
それにしても約3年間のあいだにこれほど成長するものなのだろうか。
私の言ってることが間違いじゃないと信じてもらうために、本作を手に取ることを是非オススメする。
豊島ミホ・・・素敵な物語を書く作家である。
活字中毒日記
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豊島ミホさん作品は2冊目。先出の「檸檬のころ」のように爽やかな感性で描かれている。『ハニィ、空が灼けているよ。』『青空チェリー』『誓いじゃないけど僕は思った』の3作。『ハニィ、空が〜』は教授と麻美の小さく切ない恋、そして田舎で再開した同級生ダーリンの優しさがとても温かい。もう1つ戦争と命の重み、捉え方も心にズシンとくる。『誓いじゃないけど〜』は中学の頃大好きだったアツコを大人になった今も忘れられず、記憶をお守りにしているコウスケのお話。分かっているのに、いつだってその記憶のピースを心の奥から引っ張り出してしまう。豊島さんの作品は心の奥にそっとしまい忘れている思い出という宝石をまたキラキラ輝かせてくれるような作品ばかり。大人になって忘れてしまった淡い淡い気持ちの引き出しをそっと開けてくれるような、そして大人になって身についた余分な物をそぎ取ってくれるような気がします。心の中の宝石、輝いてますか?時には無垢なあの頃を思い出してみない?
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3編入っているけど、『ハニィ、空が灼けているよ。』がとてもいい。
じわじわ泣けます。
いさぎよい教授もすてきだけど、わたしはダーリンがすごくいとしい。
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本屋に置いてあって、たまたま手にとった。
「青空チェリー」なんでしょう?
ばっちり私の好きそうな題名じゃございませんか?
最初の一行を読んだだけで買おうと思った。
この人はすごいと思ったね。
作者の人は、私と同い年なんだけど、
そのせいか、近い価値観をもっていて、
最高の言葉でつづられてますよ。
「ハニィ、空が灼けているよ。」
「青空チェリー」
「誓いじゃないけど僕は思った」
と、短編が3つ入っているんだけど、
かわいいこの世界観最高ね。
近く他の本も読んでみたいと思います。
なんだか、ものすごく私好みな感じで、
少しだけ、ももいろハニーの言葉の使い方に、
似てると思ったけど、本人に言ったら、
「おれ、こんなに書けない。才能ない」
と言われちゃいました。
まぁ私は、似てると思ったし、それはそれでいいと思った。
どちらも、私好みということで。
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何考えてるの、と言う間も置かず、ダーリンは私の手にカナヅチをにぎらせた。
「ハニィ。これで俺の脚の骨、潰して」
(「ハニィ、空が灼けているよ。」p.103l.10〜11)
予想外に読み応えのある本で感動している。
収録順を無視して
「青空チェリー(デビュー作)」→
「ハニィ、空が灼けているよ。」
の順で読んだのだが、
とんでもなく文章力を上げている。
「青空チェリー」はデビュー作だけあってイメージで書き進めた印象が強かったのに、「ハニィ、空が灼けているよ。」はきちんと小説に仕上がっていた。
デビュー当時の原稿を加筆修正した作品とはいえ、デビューしてまだ三年ほどしか経っていない。
こんなに進化が目に見える作家も珍しい。
そして同時に、同じ年の生まれだというのが悔しくて嬉しい。
書き下ろし「誓いじゃないけど僕は思った」は、「ハニィ、空が灼けているよ。」「青空チェリー」に比べてどこかぼんやりした読後感。
この方の文章は、男性一人称より女性一人称の方が断然面白い。
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いろんな恋物語が読みたい方にはこれを1冊。
というか、豊島さん作品はどれを読んでいてもスッキリした爽快感が現れています。
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設定が不思議でステキ。
全体的に切ない感じ。文章がなんだか若い!そして読みやすいです。最後の「誓いじゃないけど僕は思った」というのが最高に好き♪
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戦争はいきなり始まって、なのにすんなりと日常に同化したのだった。突然に見えて、ちゃんと前々から準備されていたことだったんだろうと、今になれば思う。
(P.14)
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今しがた完読。
同年代の女性作家であるが、男性目線の文章・シチュエーションもあって素晴らしい。
どんな特徴があるのか?
とても純度の高い部分。
大人の予定調和。あのとき、「あの人は何をおもっていたのだろう?」こんな、すべてを知らなくてもいい!!lって言う所を包み隠さずに表現しているように感じました。
ダメな男像がよく出てくるから、個人的には、現在ボディーを食らっている気分である。
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ハードカバーの青空チェリーの改良版?
あたしはハードカバーのが好きだなと思いました。文とかがストレートだし。
なんかハードカバーを読んでこっちを読むと直したところが結構バレバレでした。
でもこっちもサイドストーリーみたいのもあるし良かったです。
3つ目の「誓いじゃないけど僕は思った。」が好き。
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「檸檬のころ」を読んだ後に読んだデビュー作を含む文庫本。こういう作風だったんだーと意外な一面を発見。
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ユーモアがある。作品の設定にしろ、物語の流れ、言葉選びから。全部ユーモアがあると思った。3編入っているが、ハニィ、空が灼けているよ が印象深い作品。
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青春感たっぷり。
若い作者なのに、熟練の小説家みたい。
でも、ちゃんと若さも滲み出ている。
豊島ミホさんの、他の作品も見てみたい★
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気持ちよく読めた。
三編入ってるけども、”青空チェリー”よりも”ハニィ空が灼けているよ”
”ハニィ空が灼けているよ”よりも”誓いじゃないけど僕は思った”が好き。
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私は「ハニィ、空が灼けているよ。」が好き。
戦争なんてありえない話、と思ったけど身近に感じられる物語ですごく切なくなりました。