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みんなのレビュー9件

みんなの評価3.5

評価内訳

9 件中 1 件~ 9 件を表示

紙の本

「喪失」しつづけるアメリカ、そして「喪失」しつづける作家——両者の欲望と虚無をパラレルに描く。「魔」を祓う幻視力の可能性を信じ、作家の原点に立ち返る力強い作品。

2005/09/25 00:23

7人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 「ガキはお呼びじゃない」という気配が漂っている感じがしますね、この小説。ガキというのは、年若だとか経験が浅いという意味ではなく、あらゆること、特に非道徳的なことに対する耐性がない人とでも言うか。それがないと、作者が用意した次の段階に進めない気がする。
 主人公が勤める新聞社の話や仕事の話も出てくるけれども、3分の1ぐらいまでは、彼の女性遍歴が内容のほとんど。相手はことごとくセクシーで素敵なカリフォルニア・ガールズであり、あまりにセクシーすぎて「淫売」(失礼)とも呼ばれかねない人種たち。容姿やコスチューム、欲望のぶつけてき方などの表現にくらくら眩暈を覚える。
 それでも、過去に何冊も読んだ、性的満足を叶え追求していくことが主軸となった小説に比べると、麻痺したりだれてきたりする感じがない。女性のタイプやプレイの様子がヴァリエーションに富んでいるからということではなく、淫蕩な性のあり方を書くこと自体が主眼ではないからなのだろう。
 物語は最後に至るまで、「喪失感」に覆われている。書き出しに「震災以来」という言葉が見つけられる通り、主人公が暮らすロサンゼルス
は大きな地震に見舞われたあとらしく、街は至るところ廃墟と化し、人びとの人生の残骸と灰に覆われている。復興の槌音はほとんど、いや、まるで聞こえてこない。「大震災」のあとという虚無的な空気が、そこにいる男や女を「官能」を通してだけ得られる実存へと向かわせているかのようだ。
 震災前後からの様々な女性たちとの関係が、記憶喪失(アムニジア)を伴った記憶として想起されながら、主人公の進行していく今の生活に絡みついてくる。
——「でも僕らはもう、死んだ都市を魂に抱えて車でうろついてるぜ」と私は答える。いまだロサンゼルスに残っている我々は、自分たちが外の世界から笑い物(野暮注:「者」という字の方がしっくりくるような)にされていることを知っている。(34P)
 死に体の街ロサンゼルスとともに、新聞社勤めのかたわら物を書く死に体の作家、彼の意識と行動がパラレルに書き進められていく。そして、「喪失感」は「水害」「盗難」「火災」なども経巡る構成となり、一体どういうカタストロフィを迎える破目になるかと、読み手の性的ドキドキ感をいつのまにかそちらへのドキドキ感に転化させていく。
 この「喪失感」を引き摺る流れのなか、『黒い時計の旅』しかまだ読んでいない者には、エリクソンとはこういう作家なのか、あるいは、5つの作品を出したあとで、書くことの「壁」や「堕落」を実感したからこそ、ここまで真摯に対象に向かうのかと驚かされる内省的、思索的記述が数箇所登場する。
 それは、20世紀を手からすりぬけさせてしまうアメリカの後退的な歴史に対する指摘であり、この物語のなかで死に行くロサンゼルスを「美」の夢につなぎとめる人びとへのどこか自虐的な賛美であり、文学の仮面を作り上げた書き手に切望される叡智の到来であったりする。
「9・11以前」「9・11以降」という、ある種図式化された物の見方がマスコミや言論にたずさわる人びとの間では便利に使われている。その指標に沿うなかで、この小説は「早くから予言的内容だった」「翻訳がもっと早くされるべきだった」と評価されるのかもしれないが、できればそこに落とし込むべきではないだろう。ロスからアメリカ中に、そしてその先に伸びる断層線を「彼」は想定している。現実を突き破っていく強靭な幻視の持つ「可能性」を信じる結び部分の叫びは、図式を遥か地表に見下ろし、力強く天駆けて行くようであるから。

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紙の本

圧倒的な存在感があるが、きれいに整理された形で我々の前に立ち現れてはくれない

2005/10/04 21:50

3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:yama-a - この投稿者のレビュー一覧を見る

 ドン・デリーロとリチャード・パワーズとスティーヴ・エリクソン──この3人の米国の作家は僕にとってはどれを読んでも頭がクラクラするという共通点がある。と言ってもエリクソンについてはまだこの本が2冊目なのだが。
 誤解を恐れずに書けば、これは恋愛小説である。250ページほどの小説の大半は、現在の恋人であるヴィヴとの暮らしを中心に、主人公の女性遍歴の話で占められている。いろんな女が登場するので、読んでいて誰が誰だったかすぐに解らなくなる。「どう考えてもこれは一度は登場した女だ」と気づいてページを遡ったことが何度もあった。
 一人称で語られる主人公はS。かつて作家であり、今は新聞に映画評を書いている。時代と場所は大地震直後のLAである。
 彼の頭の中でも心の中でも、あるいは時として肉体の関係においても、彼の女性遍歴は「あの女の次はこの女、その後がこの女」という風に整然と並んではおらず非常に入り乱れているのである。この辺りは記憶喪失(アムニジア)と記憶の意義と弊害を語るこの小説にふさわしい舞台装置になっていると言える。
 そして、早くも前言を翻すのだが、これは恋愛小説ではない。恋愛小説と呼んでしまうには余りにも広いフィールドをカバーしているから。
 一見本筋とは関係のないエピソード風に展開される話が非常に多岐にわたり、意味深長で、しかも、いちいち面白い。──冒頭からして、主人公がヴィヴと2人でストリッパーのサハラを誘拐するところから始まる。そして新聞社の人間関係と権力闘争が語られる。主人公と、彼の親友で同僚のヴェンチュラたちは「陰謀団」と名づけられる。続いて主人公は記事を書きあぐねてありもしない映画をでっち上げて架空の映画評を新聞に発表するのだが、後になってその映画が存在してくる。ヴィヴと2人でケーブルTV用のポルノ番組を制作することになった主人公は、酒場で出会った女ジャスパーをモデルに脚本を書く。撮影現場に本物のジャスパーが現れて主演女優となる。そして、何枚にもわたって書き綴った絵葉書をバラバラに送りつけてくる読者の女性Kの登場。次に、洪水に流されそうになっているところを主人公が助けた娼婦が、主人公の家に住み着いてしまい、それをヴェンチュラと押しつけあいする滑稽なエピソード。オランダに旅立つヴィヴ。ヴェンチュラたちと一緒に新聞社に辞表を叩きつける主人公。車を盗まれ、やがて見つかった車で暴走する主人公。そんな話が次々と織り成されて行く。
彼は書く。「記憶喪失は(中略)街で手に入る一番純粋なドラッグであ」る(81ページ)と。「自由を解放と感じるよりもむしろ重荷と感じてしまうアメリカ」(145ページ)と。「私を自由にしてくれるのは魂の記憶喪失だ」(167ページ)と。「永遠の思春期に私はうんざりしている」(227ページ)と。「自分の内に見出せる、言うに値するかもしれぬことすべてを言おうとしてみる」「それ以上何も言う必要がないということを見出すかもしれない」(256ページ)にもかかわらず。
 結構難しい小説である。圧倒的な存在感があるが、きれいに整理された形で我々の前に立ち現れてはくれない。我々はそれを自分の頭で解きほぐして行くことになるのである。巻末に柴田元幸の解りやすいあとがきがあって助かった。
by yama-a 賢い言葉のWeb

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2006/02/17 12:34

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2006/04/09 14:27

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2007/05/06 22:00

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2007/08/15 16:49

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2009/07/26 14:24

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2010/12/20 16:30

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2017/03/17 16:30

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