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大体の良書というものは本の内容がタイトルに勝っているのだが、この本は逆で、タイトルが秀逸すぎる。小説を読む際に、なぜそのタイトルをつけたのかというのがオチで判明することがあるが、そのたぐいだ。文明開化、明治維新以前、その次代の文化が死に、西洋文化の上に原稿日本が立っているということをあまり把握している人は少ないと思う。ここに乗っている日本はまるで違う国であり、未だいうところのブータンに近いのかもしれない。
歴史の流れに飲みこれていく日本という国が変貌していってしまうさまを観察した在留外国人の資料を元に書かれている。ひとつ覚えて置かなければいけないと思ったのは、アングロサクソンが西洋文明を持ち込んだだけでなく、日本人がそれを吸収して西洋と張り合える文明を築きあげようと自ら選択したことだ。この選択の上に現行日本はあるのだということを、常に頭に入れておきたい。我々は何処から来て、何処へ行くのかという問題を考える上で、ここでの選択は非常に大きい点だ。ある意味でコレしか選択肢がなかったのかもしれないが、ここでの選択による結果は現代日本の十字架になっているのではないか?歴史のうねりの中で個人ができることはなく、ただ飲み込まれていくしか無いのだと感じさせられる。ある意味歴史のうねりというものはバタフライエフェクトによる自然災害なのかもしれない。
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図書館で借りた。
江戸末期から明治にかけて日本に滞在した外国人の手記をもとに、当時の日本の様子を紹介している。
良い面を紹介されると、そのような面ばかりではなかった、と批難されるそうだが、著者はそんなことは分かりきっていて、なぜ外国人に良く映ったのか、そう映らせる何かがあったはずだということについて関心を持っていた。
本書の立場は、過去の日本は良かったという感情を呼び起こすものではない。著者は近代が到来する前の状態に興味を持っているようだった。
外国人は日本という異国に来たというよりも、近代になる前に来たと感じていた。そこに近代を押し付けることにより、当時生きていた人々の幸福を壊してしまうことも自覚していた。
文化と文明の違いについて、冒頭で定義している。文化は形を変えて生き続けるが、文明は生活総体のありようだという。何となく了解して読み続け、終盤に差し掛かると納得がいった。おそらく、文明はぴったり収まる枠組みのようなもので、内部のある要素が肥大化したり、外圧で枠自体が破壊されたら2度ともとには戻れないものなのだと思う。そのため文明は滅びると表現していた。
今、この本を読み、確かに当時の日本には良い点がたくさんあり、取り入れたいとも思う。しかし、1つの要素を取り入れたとして、現代においてその様子を想像すると、失敗した状態しか想像できない。例えば子育てで、道路で遊んでいたとか、人力車の方が避けたとか、子どもの泣き声が聞こえなかったとか、書いてあるが、今の道路は車のものだし、何かあったら子どもは怒鳴りつけられる方だから泣き声は必ずするだろう。個々の要素がいろいろな所につながり、社会全体として、そういうものだと認識されていたから個々の要素がそのように存在できたのだと思う。
確かに滅びたら2度と復活しない。
日本の娘はかわいらしいけど、20代後半にもなれば皺が出て醜くなるという外国人の記述があったけれど、異民族の女性に対して誰でもこんなことを思うのだと知って、人間の変わらなさを笑いたくなる。
現代の自分の先祖が持っていて、今失ってしまったものは何だったのかに興味がある人にはお勧めできる。
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江戸時代あたりの日本は外国(西洋)から どう見えていたのか という本。
自分達には当たり前の事でも 違う捉え方があって面白い。
今 日本はどんな風に見られているんだろうか…
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江戸時代後期から明治時代にかけての日本を訪れた西洋人の日本に関しての著作をもとに、当時の日本がどういう国であったのかを解き明かそうという意図の本。
まず、この本を書くのはほとんど信じられないくらいの労力が必要だったであろうことが分かる。当時の西洋人の日本に関する著作を読み解き、それをカテゴリー別に分類し(本書は14の章だてとなっている。1つは全体のまとめなので、13のカテゴリーに分けて書かれていると読める)、そこから当時の日本の様子を浮かび上がらせる、という構成の本になっている。書けば簡単に思えるかもしれないけれども、とんでもない力業だと思う。
書名が秀逸だ。当時の日本というのは「1回かぎりの有機的な個性としての文明」を持った国であり、その文明は「明治末期にその滅亡がほぼ確認されていたことは確実」なものである。同じ日本であるが、現代の日本とは全く違う文明を持った国であったわけで、その姿を「逝きし世の面影」という詩的な書名に集約させている。読み終わってから、なんと秀逸な書名なのだろう、と感づく。
久しぶりに面白い本を読んだ、という感想。
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日本の歴史について著した本は数あれど、このように江戸時代に日本を訪れた外国人の感想を通じての日本考察は面白い。
当時の日本人の美しさと、それをもう取り戻すことが不可能であることに憧憬を抱いた。「逝きし世」はまさに秀逸なタイトル。本当に、亡くなってしまったものはもう二度と生き返ることはないのだ。それが人でも世でも。
反面、好奇心旺盛で無邪気な日本人の変わらぬ気質も感じた。
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【目次】
第1章:ある文明の幻影 9
第2章:陽気な人びと 73
第3章:簡素とゆたかさ 99
第4章:親和と礼節 145
第5章:雑多と充溢 205
第6章:労働と身体 235
第7章:自由と身分 261
第8章:裸体と性 295
第9章:女の位相 341
第10章:子どもの楽園 387
第11章:風景とコスモス 427
第12章:生類とコスモス 481
第13章:信仰と祭 525
第14章:心の垣根 557
あとがき 581
平凡社ライブラリー版 あとがき 585
解説「共感は理解の最良の方法である」(平川祐弘) 591
参考文献 [601-595]
人名索引 [604-602]
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分厚いし、タイトルも表紙の絵のせいか、なんだかちょっと不気味(ごめんなさい)に感じるし・・・でもでも、騙されたと思ってご一読ください。日本人必読。
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ある文明の幻影
陽気な人びと
簡素とゆたかさ
親和と礼節
雑多と充溢
労働と身体
自由と身分
裸体と性
女の位相
子どもの楽園
風景とコスモス
生類とコスモス
信仰と祭
心の垣根
第12回和辻哲郎文化賞
著者:渡辺京二(1930-、京都市伏見区、思想史)
解説:平川祐弘(1931-、北区、比較文学)
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幕末から明治維新の日本人の、風俗を外国人から見た内容。価値観が世代によって大きく変化している。また当時が、今までのイメージと違う視点が持てる。
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分厚すぎて、全部読めず…興味のある章だけ読んだ。
思ったのは、日本人ってほんとにそんなんだったの⁉ってこと。平気で裸になり、笑いが大好きで、外国人に興味津々でついて行く。今とは違いすぎて、ほんとかどうか疑ってしまう。
今までの概念を壊された。
じゃあ、いつから今みたいな日本人に変わっていったのだろう?その辺がとても気になる。
あと、宗教についてはもっと知りたい!
書き方が単調でつらいけど、内容はめちゃおもしろい!
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自分のことをもの凄く褒められているようで、何だかこそば痒い気がしてきました。自分もただ同じ日本人である、ということだけなのですが。昔の日本人のちょっと可愛いエピソードを見ると、ほっこりした気持ちになると共に、当時の人と同じように謙虚で慎み深く、朗らかである様に心がけようと思います。
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日本が西洋化し近代化する過程で失った明治末年以前の文明の姿が描かれています。
主に幕末から明治にかけて日本を訪れた外国人の記録からの引用をもとに書かれているのですが、その量と質に圧倒されました。
最近流行りの日本礼賛本のようなナルシシズムでもなく、
学校で習ったような自虐史観でもない、
当時の庶民の暮らしや風土が事細かに描写されていて、
目から鱗の連続でした。
確かに当時の日本人の心性というのは、今の我々にも受け継がれている気もするのですが、
読み進めるうちに、「やっぱりこれは滅びてるな」という諦念に行き着きます。
このように考えている自分の思考の枠組み自体が、西洋(キリスト教)文明の影響を大きく受けていることに気づくと同時に、
その影響下に世界中が置かれる現代において、心苦しい思いをしているであろうイスラム世界の人々に思いを馳せてしまうのでした。
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圧巻だった。在野の思想家が膨大な資料を用いて復元させた、外国人から観た江戸の庶民の生活の風景。それは清貧と勤勉さによる幸福があり、権力といえど簡単に侵害できない開放的な生活形態がもたらす共同体の相互扶助が機能していた。老若男女の暮らしは清濁併せ持ち、都市と田舎の境界が曖昧な風景はヒューマニズムとは真逆の、人間という存在を吹けば飛ぶようなものとする感覚によって逆説的に人間性への寛容さを生み出した。著者の言う通り本書は安易な日本論や日本人論ではない、過去と切り離された現代だからこそ異邦人の視点が必要なのだ。
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江戸幕末の開国後から明治初期にかけて日本を訪れた数々の外国人の来訪記をまとめたものです。
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スミスの本棚特別編 コメンテーターが薦める「旅先で読みたい本」
http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/special.html#book09
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一種独特の日本文化論である。幕末から明治に日本に来た外国人の記録を中心に書いたものである。かわら版やメディアについてはほとんど書かれていないが読むのには面白い。ただ600ページを超える長編なので皆がこれを本当に読む時間があるのであろうか?