紙の本
元々は「ドキュメント昭和7・皇帝の密約」
2023/03/24 22:42
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投稿者:オタク。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ドクター・ハック」が「ドキュメント昭和9・ヒトラーのシグナル」が元になっているように、この本は「ドキュメント昭和7・皇帝の密約」だ。まだ当時の関係者がいたので取材していたし、まだ未公刊の「奈良武次日記」に言及している。
「ドキュメント昭和9・ヒトラーのシグナル」には「ドクター・ハック」に書かれている工藤美代子・加藤康男夫妻が「新ネタ」のように繰り返し使っている「スイスの銀行に預けた皇室の隠し財産」なる飛ばしの現実を書いた個所がある程度だが、この本と「ドキュメント昭和7・皇帝の密約」との間に結構、変わっている点がある。特に溥傑について、取材している時に色々と見ていて気がついていても、ここでそれを書いたら取材NGになってしまうからだろうか。例えば公開当時に話題となった張学良のインタビューで溥傑に取材しているし。
「トレイシー」にはNHKが「兵士というもの」に写真が掲載されているウルリヒ・ケスラー将軍を取材した色々な番組について書かれているが、溥傑一家に取材した回数は何回ぐらいだろう?色々な形で何回も製作しているし、これからもあるだろう。
この本の主人公格である林出賢次郎の「扈従訪日恭紀」は昭和10年の皇帝訪日の記録だが、晩餐会で座った個所を記した頁がある。王公族も同席しているが、皇帝はどう思っただろうか。成婚直前なので朴賛珠はいない。この本は皇帝や天皇、皇后、皇室には欠字をしている。皇帝が昭和天皇に大勲位蘭花章頸飾を贈った時に香淳皇后に大勲位蘭花大綬章を贈っているのは「満洲国は香淳皇后に贈る為に女性用の勲章が制定された」と書かれた本が間違いなのだろう。
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満州国皇帝・溥儀の日本語通訳を務め、溥儀の信頼厚かった外交官・林出賢次郎。
彼が残した皇帝と関東軍司令官との膨大な会談記録をもとに、「満州国」の実像に迫る。
強硬路線を進む軍部と、戦火の拡大を阻止しようとする外務省。
清朝復活を願う溥儀と、満州のみの独立を狙う日本。
その余波として皇弟・溥傑を"帝族"と見なすか否か?
満州の扱いを巡って、様々な対立や二律背反が見られます。
関東軍司令官が駐満州国大使を兼任していた状況で、外交官である林出が外務省に送り続けた「厳秘会見録」は、軍部と外務省の暗闘の産物でした。
そしてその暗闘の結果としての林出の解任劇も・・・
この本を読んでもう一つ気が付いたのは、当時の軍部高官、とりわけ陸軍大将たちは、何か問題が起きると潔く責任を取って辞任していましたが、その後は陸軍大臣・参謀総長・教育総監・関東軍司令官・朝鮮軍司令官・台湾軍司令官・朝鮮総督といった高級ポストを転々とするだけで、実際にはなんの処罰にもなってませんね。
中には数年で同じポストに返り咲く人もいたし。
なるほど、こんな無反省な連中が牛耳っていたから、帝国陸軍は無責任にも戦争おっ始めたんだなw
ニン、トン♪
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「阿片王」に続き、満州モノ。ここのところ読み漁っている本は第二次大戦に関するものが多い。まぁ、あきるまで続けます。
さてこの本、溥儀と日本人高官との会談において長年にわたり通訳をされていた林出氏が密かに軍部の動きを外務省に伝えるために作成した会談録をまとめたものである。本書の中でも書かれているが、溥儀は林出が通訳する限り、会談は絶対に漏れないと信じきっていた。しかし、外務省の高官には筒抜けになっていたわけで…林出氏はなかなかのやり手である。
会談録は満州国建国から終戦までの全てがあるわけではない。なぜなら林出氏が途中で解任されてしまったからだ。しかし、満州国にとっての重大事件は数多く載っていた。組閣、2度にわたる溥儀の訪日、関東軍の動き・思考過程・戦略などであるが、自分にとっては初めて知ることばかりであった。
やはり、日本の中国進出は最初から無理があったと改めて考えさせられる。
シビリアンコントロールも重要。
トップの責任の所在を前もって確定することも重要。
それと、本書では溥儀の精神的な弱さも露呈している。
以上、なかなか興味深く読ませてもらった。
星を4つにしたのは、もう少し満州国の実態(特に一般民衆の様子)を掘り下げてもよかったのでないかとの思いから。
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【化かし化かされ,隠し隠され】満州国皇帝・溥儀と要人の会見記録を克明に残した『厳秘会見録』。公にされてこなかったこの第一次資料を基に,溥儀とは,そして満州国とはいったい何だったのかという問いに切り込んだ作品です。著者は,『ドクター・ハック』や『トレイシー』といった昭和史に関する一級の著作を世に送り出している中田整一。
自分にとって,「この人の作品は読んで絶対に間違いがないな」と思う人の一人が中田整一氏なんですが,本作もその(身勝手な)期待をまったく裏切らない作品でした。溥儀と日本関係者の生のやり取りから,満州国政府の運営が,極めて繊細な政治的駆け引きの上に成り立っていたことがよくわかりました。
〜「私たちは,清朝復辟のために関東軍を利用し,関東軍もまた私たちを政治目的のために利用しただけです。そのための仕組みが私たちにとっての『満州国』でした」〜
後半に進むにつれて次第にのめりこんだ一冊☆5つ