紙の本
なにからなにまで真っくら闇よ筋のとおらぬことばかり右を向いても左を見ても馬鹿と阿呆のからみあいどこにおとこの夢がある。壮大な男の夢を描いてここに完結。
2005/10/31 23:55
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
不正が世を覆い、悪が巷にはびこる。権力は私利私欲をむさぼり、人民は苛斂誅求に呻吟する。農民は流民や盗賊に群れ、優秀な官吏・軍人は高潔さが疎まれる。天才的技能を持つ商工業者、教育者、医師、薬師、建築家たちもスポイルされた。彼らのやり場のない憤怒のエネルギーは世直し=替天行道の旗の下、新国家建設へと収斂していく。「梁山泊」は軍事ばかりでなく、スペシャリストたちによる政治、経済、外交、民政の基幹を備えた小国家にまで成長していたのである。
「替天行道=天に替わりて道を行う」は彼らの夢であった。
そして夢が潰える時が来る。
数次にわたる宋国との激戦の末に今、宋国最強の軍神・童貫との最終戦が展開される。もはや残された拠点は梁山泊の要塞のみ。歩兵、騎馬、装甲車、戦艦、大砲と軍備を総動員した集団戦闘が重厚に描かれる。勇猛果敢といった華やかさは影もなく、ただじわじわと追い込まれ、次々と武人たちは死んでいく。かれらの怨念を昇華する鎮魂歌が流れるような息苦しくかつ荘重な戦闘シーンが続く。
原典水滸伝は一般には英雄たちの銘々伝から成り、その108人が梁山泊へ集合して終わりとする「七十回本」が知られているのだが、もともとの「百回本」は梁山泊集団の運動と運命、つまり生成、発展、変質、滅亡のプロセスを描いている。高島俊男氏の『水滸伝の世界』によれば
「彼らはただ一場の長いおもしろい夢をみたというだけのことなのだ」
「すべては夢のまた夢でありむなしく無意味なのである」
そして『落花啼鳥総て愁いに関わる』でおわる「この小説に一貫して色濃く流れているのはこうしたいっさいを空の空なりとする世界観である」と解釈している。
北方謙三は梁山泊革命集団の運動と運命を現代的センスで組み替えている。英雄たちの銘々伝もこのプロセスと密接に関わる形でおおいに楽しませてくれた。
そしてラストでは「ああすべてはむなしかったのだ」との感慨をよび、万感の愁いを与えて終結する。そんな読み方も間違いではないだろう。
だが、北方の彼らに求めた夢はまだ潰えていないようだ。
北方謙三はかつて梁山泊ではないだろうが世直しの活動に夢を託した経験をもつ男のようだ。いまとなればそれこそ夢のまた夢でしかなかったろう。しかし、少なくとも彼はその時代を生きた原体験を懐旧し感傷にふけっているなとわたしには感じられる。その印象がこの大河小説のラストをふさわしく飾るものであった。
替天行道という大義を理解していたものはごく限られた人だけだったろう。だから死を直前にして愛すべき殺戮者・李逵はすさまじい大量死を見ながら思う「みんな理屈ってやつを並べすぎる。志がなんだ」「兄弟が、仲間がいればいい」実際のところこの「梁山泊」も革命などとはおこがましい、単なる群れたエネルギーの暴走だったのかもしれない。と北方は述懐しているのではないだろうか。
しかもそれでもいいではないかと哀切の思いがあって………。
旌旗を胸に抱いて楊令は絶叫する。
「この楊令は、鬼になる。魔神になる。そうして、童貫の首を獲る。この国を、踏み潰し、滅ぼす。いつの日か、お前の目の前にこの楊令が立っていると童貫に伝えろ」
「俺は生きてやる。生ききって、この世に光があるのかどうか、この眼でしっかり見届けてやる」
なにやら筋道をなくしちまって右往左往している世の中だなとあきれかえることが多くなって、だからといってこうだぞと思い上がった言い方すらできずに、とりあえず身の回りのことを一生懸命やってはいるものの、結局漫然と生きているに過ぎない。そんな私にとってこの全編をアナクロな浪花節で一貫した大衆娯楽小説のラストの絶叫には、ないものねだりとわかっていても目頭を熱くする余韻嫋々たるものがありました。
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志を胸に集まった男たち。
生き方も格好良いけど死に方も格好いい。
全19巻ですが、読んで損なし。
満足な読書の旅です。
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【評価★★★★★の理由】
○19巻まで一気に読ませる迫力・ストーリー
○主人公たちの活躍ににワクワクしながら、かつ、自分も行動に駆り立てるストーリー展開
○元気がなくなった時は、この『水滸伝』を読み返せば、自然とやる気が沸き立つことであろう
○今まで読んだ歴史小説の中でもトップクラスの作品(2006年3月8日)
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最後まで本当に面白かった。
北方謙三殿に、
感謝。感謝。感謝。感謝。
歴史小説の伝説となります。
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■最終巻の筈なんですが、全然終ってないテイストが不思議です。■世にいう『水滸伝』の最後とゆーのは、とても悲しいもので、勿論こちら版も次々好漢達が逝ってしまうのですが、悲しいだけで終らせてません。今まで通り『待て!次巻』とゆー感じです(実際、楊令を主人公とした続編が出るとの事でした)。■あと、108星は殆ど全滅覚悟で読んでいたので、結構生き残り組がいたので驚きました(あくまで全滅から比べればです)。おそらくテーマは「いかに死ぬか?」でなく、「いかに生きるか?」だったのかと、振り返った今は思います。これからもしぶとく生き残って行くだろう彼らの先も、出来れば読みたいと思いました。
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とうとう簡潔。
と思いきや、揚令伝へ続く。
揚令の視点でみると、北漢と宋の戦いに活躍した揚業から続く物語か。
まずは、揚家将、血涙から予習しなくては。
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宋江の首か?童貫の首か?
双方が敵の総大将を狙い、戦いは混沌と、そして激しくなる。
林冲騎馬隊を引き継いだ楊令は、九紋竜・史進と共に童貫を狙うが、童貫騎馬隊も老練で侮れず。
水軍の戦いも、ついに梁山湖が舞台となり、熾烈を極める。
最後の総力戦の行方は?
生き残るのは誰か?
梁山泊と童貫軍の戦いに決着!
この物語はこの最終巻で完結ではなく、次の『楊令伝』へと続きます。
ニン、トン♪
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ついに終わっちゃった〜。すっごく、すっごく良かったんだけど最後が悲しい・・・。
シンメイもリキもいなくなっちゃうんだもん・・・。
楊令伝に続くんだろうけど・・・。それにしても・・・。
最後の自決は、やめて欲しかった〜。
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(全19巻のレビュー)
まさに“漢(おとこ)”達の物語でした。
1、2巻目あたりまでは様子見状態でしたが、5巻から、ぐん、と面白くなってきて、後は怒涛のように読ませられた感じです。
原典とはかなり違う点があるようですが、エンタテイメントとしては全く問題ないですね。
ラストは、“終”というより、次の話(「楊令伝」)へのスタート、という感じでしたので、壮大な第一章が終わったにすぎないのかも。
※魅力的なキャラ満載の本作ですが、特にお気に入りベスト3を挙げますと・・・
・林冲:何だかんだいうても、やっぱりカッコいい!「豹子頭・林冲見参!」
・楊志:強くて、気高い。永遠の伝説。
・李逵:癒しの野生児。李逵と武松のコンビは最高。
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2巻からのレビューをまとめて記載します。
最初の感想は、「長かった・・・」の一言(^^;)
全巻読破するのに、5ヶ月かかりました。
物語は、中国三大奇書の一つ、水滸伝を舞台にしたアレンジ作。宋時代末期の腐敗政治に苦しめられ、新しい国家を目指す為に立ち上がった男達の物語。
主な登場人物は、全部で100人超。
性格こそ違えど、ハードボイルド色は強い。
「理想をさかなに酒と女を抱く」といった感じのシーンが、多数描かれている。
物語は、多数の登場人物の視点で進められて行く。
個性豊かな各人の活躍により、ストーリーの壮大さを、随所に感じさせる。
また、滅びの美学とも言うべきか。梁山泊側の男達の死に様は圧巻。
最後の旗の下での宋江のシーンは、日本人らしい締めくくりで終わっている。
良作です。
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読み終わりました~ 全19巻。
長かったような、短かったような…。
熱き漢達の物語です。
個人的には宋江が旅をして志を説き、
人が集まってくる辺りが一番好きです。
何せ後半は…ですから…
面白かったです。登場人物一人ひとり立場が違いそれぞれの能力を使い志を持ち、人のため民のためそして自分のために戦う。
続きが…楊令伝…か。…買うかなあ~
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号泣だった。それぞれの生き様に涙が出てきて仕方がない。「水滸伝」は中国でもいじられること無く、ほぼ原形を保った状態で語りそして描かれている。先日読んだものもそんな感じで面白味などまるで感じない。
正直クライマックスは続編に来るような気もするのだが、やはりこの水滸伝はじわじわと近づいてくる禁軍最高の実力者の童貫との最終決戦であろう。
「女を守れない男だといわれたくない」
ような台詞を扈三娘に吐き己の命と引き換えに散った「林沖」やっぱり一番好きですね。6万の軍に包囲された林沖率いる黒騎兵の旗手であった郁保四と共に散る。
この黒騎兵と遊撃隊の中には重要人物である史進、索超、馬麟、扈三娘、徐寧、そして楊令いた。戦の中心はこの騎馬隊になってくるので、それぞれに思い入れは強いが、北方水滸伝が他の作品と違うのはすべての登場人物がタイトルロールであってそれぞれにドラマがある。
例えば軍の人選に当たっても細かな角度からそれぞれを眺め適材適所に振り分けられる。ただ指示がでてるのではなく、なぜかということまで書かれ読者を納得させてくれる。騎馬隊の華やかさに比べ歩兵の地味さはラグビーで言えばFWのように思える。彼らがいるから戦える。そんな思いを誰もが忘れず戦っているシーンはなんともいえない。本当に泣けるのだ、しかも人物に記憶がないと遡ってまた読んだりとそれを流して前に進むことの出来ない名作に感じる。
武人の物語、文人の物語、女性の物語もあれば、凄いのは職人の物語もある。それぞれに命を懸けた壮大な物語です。男なら読め!といった感じです。まさに北方ワールドの集大成のように感じられます!
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19巻読破・・足掛け7か月・長かったなぁ・・・
結果はわかっていたけど、以外に生き残った人も多いと思った。
氏の時代ものには、やはりこの滅びの美学がよく似合う。
死に方の見せ方が秀逸で、そこは日本人の琴線に好まれる要因だと思う。という自分も大好きだ!!
そして今度は『楊令伝』に続いていく。
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こうなったら楊令伝を読むしかないじゃない。 これだけ登場人物が居るのに、実際に私が会った事がある人よりもそれぞれに印象的。 それに騎馬が駆けた後の土煙や、人から上がる湯気が目の前の出来ごとの様に感じられる。 映画を見るより、本で読むほうがリアルでダイナミックな事ってよくある。 お話とは離れるけど。 こういう反乱だとか行動で国は変えられる。 世界は変えられると考える人って、今の日本にどれぐらいいるのだろう? 学生運動をしていた団塊の世代などは、変えられると信じていた様に見える。 今、自分の周りを見まわすとそんな人は殆どいない様に思う。 私自身、国の制度などを変えようなどという気は無いし、 ましてや抵抗や、デモをする気はさらさら無い。 私が宋の民なら以下の様に思う。 内乱が起きたら、それを鎮圧する為の費用として増税されたら困るじゃない。 国のトップを変えたって、何がどう変わるの? トップが民の事を考える人だとしても、その下で動く役人まで全てそうだとは限らない。結局何も変わらない。 いろいろ変わると混乱しない? そんな事を思ったりした。
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図書館で借りた。
途中からレビューが雑になってしまったけど、記録に残すよりも、自分に刻み込んでいったということで。
林冲の最期や、まさかの李きの最期。
若い時に読んでもいいし、年とってから読んでも熱くていいと思う。