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紙の本
言葉に対する深い愛情とセンスのよさに脱帽
2009/03/06 10:35
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:きゃべつちょうちょ - この投稿者のレビュー一覧を見る
「蛇にピアス」で芥川賞を受賞した金原ひとみのお父さま。
アレックス・シアラーの「青空のむこう」など、ヤングアダルトものを
訳している金原瑞人氏のエッセイである。
弟とその彼女(嫁だったかも。)を巻き込んで本当にカレー屋を
ひらこうとしていたことや、初めて訳したハーレクインロマンスの
苦労話(ページ数が決まっているため、妙訳を避けられないとか)や
創作ゼミの講師のお話など、内容はもりだくさん。
童話を多数訳している江国香織氏との対談もおもしろい。
翻訳をしている人のエッセイは、いままで読んできた経験上ではずれがない。
やはり、「ことば」のセンスに長けており、常に格闘している人たちだからだろうか。
本の帯には金原氏の「翻訳家とは立場無き人々である」というフレーズが。
原文を読めない読者サイドからみたら、翻訳家という職業があるからこそ
外国のすばらしい本にめぐりあえるチャンスをもらえるのであって。
尊敬のまなざしとありがたみひとしきり、なんですけど・・・・・・。
紙の本
文芸翻訳家の年収が216万円というくだりには絶句した
2006/12/25 09:25
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yukkiebeer - この投稿者のレビュー一覧を見る
デイヴィッド・ソズノウスキ作「大吸血時代」を読みましたが、原作小説の確かな面白さもさることながら、その翻訳の見事さにも大いに魅了されました。そこでその小説を翻訳した金原瑞人氏の他の仕事を探したところ、本書に行き当たったというわけです。
翻訳家のエッセイ集というのは、ハズレがないというのが私の長年の経験知です。言葉と常に格闘する人たちの文章は、言葉に対する深い洞察と、小気味良いテンポとが常にあって、読んでいて心地よいのです。いくつか類書を挙げると:
佐藤良明・柴田元幸「佐藤君と柴田君」(新潮社)
青山南「ピーターとペーターの狭間で」(筑摩書房)
岸本佐知子「気になる部分」(白水社)
深町真理子「翻訳者の仕事部屋」(筑摩書房)
本書「翻訳家じゃなくて…」は、著者が大学卒業後、屋台のカレー屋を始めようとしていた時期からの翻訳事始事情や、翻訳に伴う興味深い苦労話などが盛り込まれた200頁ちょっとの小品です。
私自身は一介のサラリーマンですが、英語が常にそばにいる生活を送っています。そんな私にとって次の一節は大いに心重なるものでした。
「かつて異物であった英語が、やっと親しめる愛犬のようになっていたのに、最近いきなり野獣の一面を見せたわけで、これはかなりショックだった。結局、死ぬまで英語を異物と感じながら生きていくしかないのだろうか…という寂しい気持ちは現在、かなり強い。」(60頁)
中学一年から数えると私の英語歴も今年ちょうど30年。いつまでたっても異物を胸に抱えながら生きるというのは確かに息苦しくままならぬ思いを抱かせます。それでも、言葉がやっぱり好きな人にとってそれは、より広い世界を見る上で背負わざるを得ないものなのでしょう。著者は上のように書きながらも、他人が思うほどには寂しく思っていないのではないか、そんな気が私にはするのです。