紙の本
城春ニシテ騒動多シ
2006/01/20 23:26
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:星落秋風五丈原 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ロード・エムズワース、第九代エムズワーズ伯爵クラレンス=スリープウッドは、ブランディングス城に住んでいる。美しい城には、忠実な執事や腕の良い庭師がいる。そんな彼の人生は、傍目から見れば、何不自由ないものと思われる。ところが現実は、そんなドルチェ・ヴィータ(甘い人生)ではなかった。やっぱり息子はパラサイト体質で、姪達はなぜか親に反対される相手とばかり結婚したがる。親達は、若者達の修行の場として子供達を城に送り込み、一方若者達は、親からの小言を避ける駆け込み寺代わりに城にやって来る。「他人の侵入を容易に許さない」という意味で「An Englishman’s house is his castle(イギリス人の家はその城である)」という諺がイギリスにあるが、エムズワーズ伯爵の城は千客万来だ。だが、氏の作品『ジーヴズの事件簿』と違い、今回の主人公は、一家の主だ。裕福な叔父にパラサイトする貴族バーティ=ウースターが主人公ならば、年若く事態収拾が困難だろう。だが彼等を扶養する立場ならば、豊かな経験から、瞬く間に事態をおさめられるのではないか。ところがその予想は大きく覆される。伯爵サマは、『豚、よォほほほほーいー!』では品評会に出す豚の体調に心を痛めて、姪の恋愛事件には馬耳東風。『伯爵とガールフレンド』では、庭についての意見を庭師に言う事もできず「喉から振られた白旗(見、見てみたい…)」みたいな回答しかできない。おまけに城に招待した子供には、ご自慢のシルクハットを駄目にされてしまう。つまりは、パラサイトする側もされる側も、ちーっとも頼りにならない訳だ(ああ、イギリスの未来は暗い…)。しかし「ダメダメじゃん」と切り捨てるには、伯爵サマは惜しいキャラだ。『豚…』では、興奮のあまり由緒あるクラブで伝授された豚へのかけ声を連呼し、『セールスマンの誕生』では、息子に負けじとセールスマンに挑戦。勇敢なんだか、大胆なんだか、脳天気なんだか。つかみどころのないファジーなお方が巻き起こす騒動は、いつも城を明るくしてくれる。生まれもっての鷹揚さから来るのか、ちゃっかりした子供や、がみがみ言う親戚にいいように使われても、根に持たない所も好印象だ。「そうか、伯爵みたいな鷹揚貴族ばかりだったから、イギリスは、開拓精神に溢れるアメリカに盟主の座を譲ったのだな…」という歴史の真相(?)まで垣間見せるこの短編集、あなどりがたし。興味を持った貴方、ウッドハウスがユーモアとナンセンスで作り上げたお城を、一度訪問してみませんか?
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世界中にファンがいるというユーモア小説の大家ウッドハウス、代表作はジーヴス物の次に人気があるのがこのエムズワース卿物だとか。
これが面白い!
訳文が生き生きしていて素晴らしいんです〜水を得た魚のよう?
主人公は第9代エムズワース伯爵クラレンス・スリープウッド。
脳みそは綿菓子のようで性格はおっとり、願いは美しいブランディングス城でのんびり平和に暮らすこと。
末っ子のフレディはトラブルメーカーですが、ほかの子供達は巣立ち、奥方は既になく、最強の妹レディ・コンスタンスに脅されながら貴族の義務を果たそうとしています。
最大の関心事は品評会に出すカボチャや見事な豚のことで、弱いおつむはほとんどいっぱい。
頑固者の庭師に気を遣う有様も面白おかしく語られます。
フレディはバーティにちょっと似ていますが、アメリカの富豪の娘と結婚後はセールスに才能を発揮するという意外な展開に。
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●いやーんピンクの装丁が超可愛いーんvv (v_v) このピンクのベリキュー☆な装丁は、エムズワース卿の綿菓子の如くぼよよんとした脳にジャストフィット☆ まさにお見立てどおり♪ ●舞台は、19世紀あたりのふるきよきイギリスの片田舎。ふわふわと夢みるお殿様♪ エムズワース卿の脳は、約95%がじぶんとこの農作物によって常に占拠☆
しかし、彼の平穏な生活は、ボンクラ息子・口やかましい妹(※「鉄血」と言う説明は完璧だと思う)・スコッチの庭師およびよくわからん親戚筋によって、今日もきょうとてかき乱されるのでした・・・・・しかし5秒で忘れる鳥頭=ロード・エムズワース。
すごいぞ?
ガミガミと喋り終わった相手が部屋を出て行くかどうかって間に、すでに記憶がうっすらボンヤリしてくんだぞ??
・・・・・・・・て。
そーれーはー、やまいじゃないのかあ!? 頭の中の消しゴムがはりきって活動中じゃないんかーー!!? ●・・・にも関わらず。なぜか事態はいいように解決してしまうんであった。なぜだ。
ものっそいいきあたりばったりなのに。
おかげでこれのあと新喜劇を見ると、たいへん理論的に構築されてるように思えます。
とはいえ誤解ないように。
強調しておきますが、素晴らしい小説ですよ?
こんなにほんわかv な読後感は、正直ひさびさ。ここんとこ読んだ中でベストに推して悔いなし! ながら読みにも最適! ●まったく同じ装丁で、そのまま文庫本になったら、おりぼんかけてプレゼントしたい一冊。うわほめたなあ自分(笑)
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毎晩楽しみに読んだのが、P・G・ウッドハウスの『エムズワース卿の受難録』(文藝春秋)。登場人物全員、頭のねじがかなりゆるんでいて、それが破壊的・芸術的なレベルの高さにあるのが素晴らしい。なのに、ジーブスシリーズのようなハイテンションなドタバタにならず、癒し系とでもいうべきトーンになっているのは、ブランディングス城という美しい荘園が舞台だからか。現実を思い切りひねり回したコメディ(モンティパイソンとか)って、イギリスの得意技だけど、ブランディングス城シリーズは、いまや存在しない桃源郷みたいなところが舞台になってる、荘園シットコム。うーん、もろにバカ殿ですね。ぼおっとしたお殿様って、もしかして万国共通の愛されキャラなのか。
ウッドハウスの語り口調も、ジーブスの時よりも登場人物全員を激しく喜劇的に見せている。ここまでとぼけた文章を書けること自体に感心してしまいます。
中でも、「豚、よォほほほほーいー!(Pig-hoo-o-o-o-ey!)」は最高傑作。本当にふざけてる。完全に落語的。
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ちょっと間抜けな英国貴族のエムズワース卿が、
息子や親戚に振り回される面白おかしいお話。
ほっと楽しい気分になりたい時に、ぜひ。
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いやーん。だいすきーーー!と叫びたくなるほど、面白い。さすがユーモア小説の大家、ウッドハウス。
一度に読み切るのが勿体なくて、毎晩寝る前に1編ずつ読んで、眠りに落ちるまで、その余韻を「うふふ…」と楽しんでました。
とてもイギリス的で良い。訳文も素晴らしいです。
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エムズワース卿と彼を悩ます次男坊フレディをめぐる短編集。「エムズワース卿とガールフレンド」と「セールスマンの誕生」が良かった
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綿菓子のような頭脳の持ち主、エムズワース卿の受難の日々。やっぱり果てしなく笑える。
田舎の荘園が舞台のためか、ジーヴスシリーズよりはのんびりまったりした雰囲気。ツッコミ役不在のため、登場人物全員が繰り出す怒涛のボケを誰も止められない状態に・・・でも最終的にはめでたしめでたし。
『ブランディングス城を襲う無法の嵐』は特によかった。
毎晩一話ずつ、ゆっくりと楽しみたい一冊。
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ウッドハウスのジーブスものじゃないシリーズ。主役は綿菓子のような脳みその第九代エムズワース伯爵。いつものごとくいろいろな災難に巻き込まれるが、シリーズではジーブスも、バック-U-アッポもなし、ただひたすら事件を混乱させた挙句、いつの間にやら、ハッピーエンド、というのがこのシリーズの一般的なパターンです。
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昔のイギリスの伯爵とかそういう時代の話。
まだ翻訳ものは慣れてないから、あんまりたくさんの人が出てくると誰が誰か思い出すのが大変。
息子のフレディだっけ?か誰かが一番好きだったな。
空気銃の話が本当に面白くて涙が出るくらい笑った。
あと、ロンドンから来た女の子の話も、エムズワース卿のことが好きになってしまいそうなくらいなごむお話だった。
なにより、やっぱりフレディ(?)の話だけど、好きになった人を追いかけて船に乗る話も本当に一番面白くて大好きだった。
新しい作者の本を読み始める時は、その人の癖というか、波に乗り始めるまで結構苦労するなっていうのを顕著に感じた。もはや本のレビューじゃない笑
最後には読み終わるのが惜しくなるくらい、面白い本でした。
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以前ブックオフオンラインで入手した積読の山から取り出した一冊。
先日読んだエムズワース卿ものが面白かったので、いまのマイブーム。
こちらは短編集。
恐るべき叔母達に悩まされるバーティ・ウースターと同じく、エムズワース卿は恐るべき妹たち、姪たちに悩まされる。
感想というよりまだ半分なのでメモです。