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紙の本
溜まっていたエネルギーの浄化。
2009/08/11 23:52
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:wildflower - この投稿者のレビュー一覧を見る
2006年に公開された『かもめ食堂』のための
書きおろし作品、280枚。幻冬舎刊。
映画の世界観がすごく好きだったのに、今頃読み終わりました。
主人公のサチエさん、そしてミドリさん、マサコさんの3人の日本人が
フィンランドはヘルシンキにサチエさんが開いた「かもめ食堂」で出会い
共に働いていくなかで出会ったひとたちとのほっこりしたものがたりである。
あえて、日本人らしい漢字ではないカナ名で3人の名がかたられるのは
何か、理由があってのことなのだろう。
映画のほうでは小林聡美さん、片桐はいりさん、もたいまさこさんが
演じておられたけれど
それぞれの人生もキャラも年齢もとっても個性的。
もっとも
かもめ食堂に出入りするようになるフィンランド人たちもさまざま。
日本贔屓の学生、トンミ・ヒルトネンくんに
夫に逃げられた失意のリーサおばさん
泥棒稼業から足を洗いたいマッティ。
純和風のおにぎり(おかか、梅干し、鮭、昆布)をアレンジなしで
食べてもらう、というのがサチエさんの揺るがない気持ちであって
かもめ食堂には珈琲、紅茶、シナモンロールから現地の強いお酒
コスケンコルヴァまでそろっている。
なのに、どうして「おにぎり」なんだろう、というのが
映画を観ていて、ちょっと理解しにくいところだった。
現地に混じって折り合いをつけつつ
やはりどうしてもノーアレンジ・純和風のシンプルなおにぎりは外せない。
たとえどんなにウケが悪くても。というのがサチエさんの信念なら
日本人でさえ、いろんな味(ツナマヨとか豚コツ七味とかチャーハンとか)
を、最近では目にするおにぎりなのだから
いっそ受けいれてもらいやすいように、地元の味覚に歩み寄ってみては……
というのが、売上を見かねたミドリさんの提案だった。(p106-)
みんなが楽しみにやってきてくれて
楽しく食事をして
楽しく帰ってくれればいい。
……そのサチエさんの思いは、採算度外視としてバカにされても
おかしくはない夢のような願いなのだけれど
だんだんと触れ合うようになっていく現地のひとたちとのかかわりで
その凛としたぶれないサチエさんの気持ちこそが
かもめ食堂そのものを、心地よい居場所にしていっているのだと
読み進めていくうちにわかってきたような気がする。
日本を出て、フィンランドにたどり着いた3人の女性たちに
それぞれに抱えていた葛藤や、不安や不満があるように
フィンランドの人たちにも、こころのなかに溜め込まれたものがある。
古武道家の父に似て凛とした佇まいとぶれない心をもつ
サチエさんのこころは、清流のように澄んでいる。
マサコさんがサチエさんのつくったおむすびを食堂で食べるシーンで
「ああいう人の手で直接にぎるものは、その人が出るのよね。
サチエさんのは、とてもおいしい」
といったのは、象徴的だ。
そのこころが現れる、手で直接むすばれた「おむすび」が
やがて、ゆっくりとリーサおばさんの心も解いていく
その下りが、とても好もしい。
「おにぎりって日本人のソウルフードなのよ。」という
サチエさんの言葉があるのだけれど
この本を読んでいくと
手でむすばれたおにぎりが、差し出す相手のなかに
ひっそりと溜まっていた思いをほぐしていくような
不思議な技を見せられているようで
なんだかほっこり、じーんとしてしまった。
紙の本
空気が澄んだ本
2007/11/25 23:15
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:トマト館 - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画をみてからよみました。
正直いって映画は、
好き嫌いのわかれるところかな、という感想があって、
つぼにはまると何回もみるけど、
はまらないとつまらなくもなるだろう、という印象があった。
原作は、
どちらかというと好きな人が多いだろうな、という感じがあった。
映画だと、
細かい説明がなく、突然日本人がフィンランドで奇特な行動にでている、
という感じだったけど、
原作はそこにいたるプロセスの説明が多いので、わかりやすかった。
映画と原作に共通して言えるのは、
とても空気が澄んでいること。
サチエの思い切った行動や、あゆみかたは、
とてもシンプルで、いい。
わたしはことばのつうじない外国なんて、とんでもない、行きたくない、
というほうですが、
こういう外国ぐらし、ちょっとイイナと思いました。