紙の本
義理と人情の倫理観があったころの闘争物語。
2008/05/17 10:30
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々木 昇 - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者、火野葦平の両親である玉井金五郎、マンの一代記を若干の脚色はあるだろうが、実録小説として書かれたものである。
明治期、大きな野望を抱いた青年と娘とが出会い、そして、裸一貫で成り上がれる沖仲仕として大成していく物語であるが、読み飽きしない展開についつい引き込まれていってしまう。読売新聞の連載小説として書かれたものだそうだが、好評を博したのも頷ける。
時代は明治のために現代とは異なる背景だが、しかし、人間というものはいつの時代もさして進化はしていない。嫉みや裏切り、強いものに潰される者、擦り寄る者、なんら、現代の人間たちと寸部の違いはない。
そして、色恋沙汰も。
違いがあるとすれば、沖仲仕たちには政治や法律よりも義理と人情と力が政治であり法律であり、倫理観であるということか。
エネルギー転換政策のもとに石炭産業は日本という国から消し去られてしまったが、五木寛之氏の『青春の門』ともども、石炭産業とそれを支えた最下層の人々が生きていた時代を知るには格好の実録小説ではないかと思う。
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久しぶりに小説を読んだからか?面白かった。am1〜am5まで4時間ぶっ通しで読んでしまった。結果、翌日1、2限欠席。
行政法の本もこれぐらい集中して読めたら良いのになぁ。。
早速(下)を注文。
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作者、火野葦平が自らの両親の人生を綴った小説。
任侠ものと聞いて読んだけれど、思ったよりも血生臭さがなくて楽しく読めた。
とにかく主人公がいい男。実話を描いたにしては美化しすぎている感もあるが、読んでいて気持ちがよく、続きが気になる。下巻も楽しみ。
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中村哲さんの生まれ育った時に周囲にいた人たちの雰囲気を知りたくて読んだ。なるほど、こういうところから、中村哲さんのような人が出てくるんだと感じた。下巻も楽しみ。
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著者の父・玉井金五郎と母・マンが出会うまでの、それぞれの半生の記録から物語りが始まる。2人が結婚に至るお互いが「結婚する」という噂を流すというところが特に痛快!キップの良い男女が痛快で、北九州の任侠たちの世界が爽やかに読める。このような中から生まれてきた子の小説家、そして孫の中村哲なんだ。つまり火野葦平の甥が中村哲なのである。
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朝日新聞の文学紀行の博多編である。若松の金五郎が組長になり組合をつくるが襲撃されて瀕死の重傷を負う、というところまでである。現在は北九州市になったが、沖中仕の集まりでのヤクザの成長の物語であり、現在の人も納得させるような火野葦平の小説である。
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他の方と同じように中村哲先生繋がりで読みました。しかし自分が小説家だとして、自分の親を書こうと思うだろうか?すごいなぁと思った。
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劇団文化座が花と龍を上演するというので観る前に読んでおこうと思い読んだ。その舞台のチラシにスタインベックのエデンの東との比較が乗っていたので、先にエデンの東を読み、次に花と龍を読むこととした。エデンの東も映画化されているが、花と龍も映画化されている。どちらも作者の係累や知り合いを登場人物とするノンフィクション色の濃い小説である。
花と龍はヤクザではないものの血の気の多い仲仕たちが主人公で任侠物のような活劇と、なっている。話のテンポも良いし、勧善懲悪のような大衆小説である。スタインベックもそうだから昔はエンタメと言っても、人の本質とは何かとか、行動の規範はどうあるべきかを主人公が思いなやむシーンが出てきて昨今のエンタメとは様相が異なる。小説が今より社会的に影響力があったので、作者も気合いが入っていたのだろうと見受けられる。ネット上の記事で知ったのだが、1957年に日本で初めて国際ペンクラブが開かれたとき、参加したドナルド・キーンが英訳された日本の近代文学作品を探したら火野葦平の麦と兵隊しかなかったというくだりがあった。またその大会にはスタインベックも参加している。スタインベックは麦と兵隊を、読んだのであろか?ひたすら濃い格好の良い金五郎とマンのその後は如何に?で、下巻に続く。