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本書は、「製造業の空洞化」が世の中騒がせる中での「中小企業論」であるが、その内容は「ポジテブ」であり、その立論の軸は「データ」よりも「「現場主義」であると感じた。
「先端技術を支える中小企業」や「地域間協力」の実態等々、それなりの説得力はあるのだが、一般的に語られる全体的傾向とはやや違う本書の視点と結論は、まだまだ検証の必要があると思った。
「中小企業」に視点をあてた分析の書は、他にあまりないように思えるので、本書の「中小企業の素晴らしさ」や「ポジテブ」な結論がすぐに正しいとはいえないとは思うが、本書は著者の「日本の製造業の中小企業はこうあってほしい」とのバイアスがあるのではないのかとの思いももった。それは、読者としてはむしろ快いものではあるが、「技術立国論」としてはどうだろうか。
著者の経歴を見ると、高校卒業後に郵便局に勤務。その後45歳で立教大学法学部入学、現在兵庫県立大学教授とある。まさに努力の人なのであろう。本書を読んで、ひょっとしたら著者ご本人の経歴も一冊の本としてもよいような「坂の上の雲」のドラマのような素晴らしいものなのかもしれないとの思いをもった。