紙の本
税金で行う環境保護は失敗する
2006/03/08 20:59
12人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:GTO - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者は、生物学者で山梨大学教育人間科学部教授である。養老孟司、奥本大三郎と『三人寄れば虫の知恵』を出すなど昆虫大好き学者である。
この本では、
地球温暖化
ダイオキシン
外来種問題
自然保護のウソ
の4つの問題が俎上に上げられている。
第1章では、竹内薫の『99.9%は仮説』ではないが、地球温暖化の原因が二酸化炭素の人為的放出による温室効果の結果だというのは、かなり怪しい仮説であることが分かる。著者が言うように京都議定書のために莫大な予算が使われていることは、無駄だと思う。しかし、「どう考えても地球温暖化なんて大した問題じゃない。」(p.51)と著者は結論づけているが、私は地球の気温変化の原因究明は引き続き進められるべきだと思う。
次のダイオキシン問題は、理系の知識に疎い日本のマスコミ人や政治家の愚かさがよく分かる事例だ。
「我々はだれでも一回呼吸するたびにダイオキシン分子を一億個ほど吸い込んでいる」この一億個にどう反応するかで騙されやすい人かどうか分かる。呼吸を止めたくなるような人はやばい。「が、一億個という数字に驚いてはいけない。分子一億個なんてほとんどゼロに等しいのだ。」(p.59)と続くのである。それに、大規模な高級焼却炉のほうが一度事故が起こると、大きな被害をもたらすことは明らか。だから、槌田敦が『環境保護運動はどこが間違っているのか?』で書いていたように、燃やすよりも海や山に棄てるべきだと思う。
3番目の外来種についての議論は、さすが生物学者、いちばん力が入っている。「環境をムチャクチャに破壊した責任を隠蔽するために、外来種に責任を押しつけ、さらに外来種の駆除費用として多額の税金をかすめ取るのは二重の詐欺である。」(p.115)その通りである。私は諫早湾干拓と長良川河口堰は、20世紀最大の愚行だったと思っている。
最後の章では、これらの事象にあらわれてくる原理主義を猛烈に摘発している。里山を守るべきか、里山が消えていくのも自然な流れだと考えるかは、意見が分かれるだろうが、税金で行う環境保護は失敗することは明らかだ。
もっと問題なのは「省庁の決定は無謬なのだという。省庁が無謬というのは誤りを認めない」(p.134)ことである。日本の官僚は優秀だと思うが、誤りを認めない、つまり責任を取らない心性がはびこっているので、取り返しのつかないほどの失策を犯してしまう。「ゆとり教育」しかり「先の大戦」しかりである。
誤りを認めて補償に税金が投入されるほうが、誤りを認めず利権者のために税金を垂れ流され続けるよりましだと考える納税者は私だけだろうか。
紙の本
税金の使い方の正当性という論点
2011/07/11 22:58
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Genpyon - この投稿者のレビュー一覧を見る
本著は、地球温暖化・ダイオキシン・外来種駆除・生態系保護の4つの環境問題を例にあげ、それらの問題に科学的に迫っていく体裁をとりながら、実は、税金の使い方の正当性を問う政治的な著作となっている。
それぞれの環境問題について、科学的には、賛成反対の立場に立つ科学者の間で多くの議論があり、著者の科学的議論には問題が多いとする見解もあるようだが、著者が提示する税金の使い方の正当性という論点は、著者の科学的立場もそれに基づく議論をも超えて成立している。
著者の見解は、税金の投入はコストパフォーマンスを考えて、という至極もっともなものだ。
しかし、残念ながら、例えば、温暖化にCO2がどの程度関与し、温暖化によってどの程度の影響がでるかについての科学的議論とは無関係に、いったんCO2削減に税金が投入されれば、CO2削減は自己目的化され、コストパフォーマンスを無視して税金が投入されていくのが現実だろう。
そのような現実があるかぎり、著者の提示する論点は、意味を持ち続けると思う。
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ちょっとタイトルに騙されたかなと言う感想。
報道されている事をそのまま信じるんじゃないよ〜を言いたいのでしょうな。
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著者の物事の考え方の基本的なスタンスに親近感を覚える。本書で取り上げられている問題の本質は犬連れ登山批判にも通じると思う。
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前半の地球温暖化やダイオキシン、外来種の問題はそこそこまとまっている。リスク論の考え方を基本にロンボルク本からデータを援用するなどして議論を進めていく。ただ援用の域を超え焼き直しに成り下がっているのは残念(そのくせ妙な解釈で大口を叩きつつ議論は進む)。この手の本を既に読んでる人間には無用の本。ただ新書だし、薄く読みやすいのでここから著者も紹介している本にすすむ為の踏み台として考えれば有り難みを多少は絞り出せるかもしれない。後半は、著者の個人的な観点から自然保護の話が進み急速に議論を裏付けるデータがなくなる。そのためにただの感情論に走りっているようでハナシが粗雑になっていく。前半部で著者が批判していた議論の進め方が後半は進められていく形で、蛇尾。
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<07/1/29読了>「地球温暖化」には兼ねてからずっと疑問を持っていました◆そもそも地球は実際に温暖化しているのか? 実際に温暖化しているとしてそれは本当にCO2の増加によるものなのか? そうではなくて、地球としての大きな気候サイクルによるものではないか? さらに言えば「地球温暖化」を含む「環境問題」は本当に「問題」なのか?◆そうした疑問に、豊富なデータをもとに的確に答えてくれる本◆著者の主張にうなずくかどうかは別として「健全な懐疑心」を育てるためにも本書は一読の価値がある
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わたしが若い人たちに言いたいのは、世間で流通している正義の物語を信じるのは、墓にないってからでも遅くないってことだな。正義というのはあなたの頭を破壊する麻薬である。麻薬中毒になる前に、たとえごくわずかでもいい。抵抗せよ。
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読破した翌朝から、新聞やテレビの言っていることが信じられなくなってしまった。
同時に、このようなウソを大々的に報道している報道機関に対し、憤りとともになんだかかわいそうにさえ感じられた。情報過多かつ氾濫している世の中では、人間がどんなに賢くなろうとも、あるひとつの論文が正しいか、信憑性に欠けるのか判断するのには人間の手を介さなければならない。そこで、今思い出したのだが、マイクロソフトを筆頭としたIT産業の人々のやり方は賢いと思う。というのも、アイデアを全社員で掲示板上に公表し、料理し甲斐のある内容については掲示板上でどんどん更新され、そうでない内容については検索数が少ないために淘汰されていく。このやり方、賢い!メディアは365日24時間情報を提供し続けなくてはならないから、日々時間に追われて内容の吟味といったことが難しい環境なのかもしれない。
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生物学者の著者が、環境問題について世間で流れている情報は「かなり
いかがわしい」と指摘する。取り上げるのは、地球温暖化、ダイオキシン、
外来種、自然保護の4つの問題。マスコミが大騒ぎする環境問題を冷静に
さぐってみると、ウソやデタラメが隠れている。科学的見地からその構造を
暴く。
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データを実際に調べてない人間にとってはどっちもどっちなんじゃないか。
確かに、官庁にとって都合の良いように踊らされてるって面は大いにあるとおもうけど。
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地球温暖化・ダイオキシン・外来種・自然保護の”ウソ”(一般的に知られている事実とは、別の見方をした考え)について、筆者が解説した本。二酸化炭素が増える=必ずしも地球温暖化に繋がらない可能性があるなど、今まで自分の持っていた知識を考え直すきっかけになる本でした。(2008.3.16)
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地球温暖化問題、ダイオキシン問題、外来種問題、自然保護、これら4点のウソ、ホントについて著者自身の考えが書かれてある。内容の多くは世間一般的な環境問題に対する常識を疑ってみようという感じ。
正直、環境問題は分からない事ばかり。本書の内容に納得しそうな部分もあるし、この本自体がウソなんじゃないかとも疑ってしまうところもある。
悪いニュースは良いニュースという考えをマスコミは性質として持っている。そのため、環境問題も専門的で目には見えない問題であるからして、マスコミの視聴率・売り上げアップのために利用されてるのではないかと危機感を感じる。
自然保護のために。といった正論は人々の思考を停止させる。1つの説に限定した狭い見方より、本書のような批判的な見方も必要で、様々な考えが飛び交う事で、皆が考え環境問題の解決へ向ける一歩につながるのかなと思う。
ただ、文章の中に「バカ」とか連発するのはいただけない。活字という、相手の顔、声、雰囲気が感じられないメディアにおいて、そういった言葉を連発すのは、不信感を抱かれます。
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ほんとに「知る」ということの大切さを実感。
無知なくせに「環境、環境」「エコ、エコ」なんていわないことだな。
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地球温暖化、ダイオキシン、外来種、自然保護・・・マスコミで取り上げられることも多いテーマについて、別の視点から論じている一冊です。
私は、環境問題に対して強い関心があるわけでもなく、詳しくもありませんが、読んでいて少し違和感を感じました。
対象読者層に合わせているのかもしれませんが、重要なテーマを論じている割には、文章が軽すぎますし、専門家ではない方(あとがきで著者本人が書いています)が、ここまで断定的な書き方していることにも、疑問が残ります。
環境問題を論じるよりも、環境問題をテーマにして、「マスコミ(に限らず)の一方的な論調を信じてはいけない」ということを語りたかったのかもしれません。
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温暖化・ダイオキシン・外来種などの問題について、コドモ向けな口調で懐疑的な見解を述べている一冊。この中で著者が専門としているのは外来種問題だけという事もあり、この章が一番面白い。
本書を通じて展開される著者の主張には賛同したいが、各論レベルでは素人にも指摘できる問題点が散見される。例えば、普通のメシに含まれるダイオキシンがこれ位で、致死量に達するには30万日分食わなきゃいけないから、全く問題無いだろうみたいな論理を展開させている個所がある。これは、普通のメシに含まれるダイオキシン量(濃度?)がなんかの拍子に30万倍になる可能性がゼロ(に近い)という事も立証しないと、論理的な説明にはなってない。30万倍っつーとすげぇデカい気がするからありえないでしょ、っていうのはまさに数字のトリックでしかない。
100円。