これは面白い!!企業内部からの眼で比較!
2006/05/11 08:25
9人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけくん - この投稿者のレビュー一覧を見る
両社に所属していた著者が企業内部から見た会社について
記載している。
こう言う場合、当然後に勤めている会社の評価、もしくは
現在の段階で業績の良い会社の評価が高くなるのは致し方な
いかもしれない。しかし、そういう心情的な部分を除いても
両社には大きな差があるのだろう。
筆者が両社について述べる自慢は、己の勤めてきた会社と
いプライドもあるのだろう、ややオーバーリアクションであ
る感が否めない。しかし現在の状況はどうあれ、両者は過去
から現在にかけての日本の代表的な企業には間違いない。筆
者が危機感を感じているが、そこにある歴史的な財産や文化
財については、きちんと保護されるべきであろう。今回の分
社、そして花王への買収により散在しないことを日本国民と
して願う次第である。
本書のように、企業に勤務していたものが内側よりえぐる
ということが今までにもあったのかは不勉強のため分からな
いが、これだけ大胆に両社を比較するという切り口は面白く
読ませてもらった。またかつての日本の優良企業の実態とは
こういうものか、という事を理解する上でも楽しく読めた。
お奨めです!
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著者はカネボウに23年、キャノンに10年勤めたサラリーマン。倒産した老舗企業と町工場から世界的企業に成長した企業
。粉飾決算までしたダメ経営者と日々努力する経営者。昼の役員会に社費で5000円の鰻重の企業と毎朝8時から朝会を続ける企業。明暗くっきりの企業比較。当たり前のことが当たり前に出来ない企業に投資価値はない。
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これはすごく勉強になりました。カネボウに23年、キヤノンに10年間務めた現役の社員さんが書いたもの。その変の業界研究本とちがうのは、やはり社員が書いたということで現場の生の声が聞けるということですかね。2時間程度で読み終わります。
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会社に入ったら文系理系の区別も、経済学者も科学者もない。ビジネスマンでなければならない、という言葉が印象に残った。それにしても筆者は、あまりに対照的な2社に勤めたもんですね。(2008-08-19読了)
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現役のキャノン社員が書いた本。カネボウに23年、キャノンに10年というサラリーマン。いわゆる企業評論とは違い、一社員の目線で2社の明暗を書く。読み物としては面白いが、使える情報はあまりない。今キャノンの仕事をしているので、その会話に若干使えるかな、というくらい。
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ふーんっていう感じです。
特に良いも悪いも感想はないですが、大手という甘えはどこの企業も捨てるべきだと再確認しました。
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[ 内容 ]
戦前、日本最大の民間複合企業として君臨し、その後凋落していったカネボウ、町工場から出発して日本を代表する企業に成長、経団連合会長まで出したキャノン。
「感性」で勝負する文系企業と、「知性」による研究開発で発展してきた理系企業。
全く対照的な両社に勤めたサラリーマンが、「内側から見た企業文化」を描き出す。
繊維業界の風習や、発展の原動力となった「キャノンの常識」など、貴重な証言も満載。
[ 目次 ]
第1章 高度成長とともに
第2章 繊維業界は「密林のジャングル」
第3章 化粧品は「金のなる木」
第4章 本当に同じ会社?
第5章 経営者の責任
第6章 キヤノン入社
第7章 ものづくりのDNA
第8章 キヤノンの常識
終わりに企業文化と価値観
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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読みやすくて、半日で読み終わってしまった。でも、得るものは少なかったかな。企業研究には役立つと思う。キヤノンに行きたい学生は読んだ方が良いかも。
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有名な会社の名前が二つもタイトルとして使用されており、二者間の比較でもされているのかと、気になり読んだ本。
本書は元カネボウ、現キャノン(本当の会社名は「キヤノン」なのだが、いちいち打つのが面倒なので「キャノン」とする)の社員によって書かれた、二社間の環境・体質の違いを当事者から見た記録である。
他の方もレビューしているように、この本にはさっと目を通す程度の情報が含まれており、企業研究には一応使えるかという内容しかないように思われる。筆者が現役のキャノンの社員ということもあり、企業のイメージアップともとれるような文章があるのも事実である(個人的にあまり元経団連会長にいいイメージを持っていないというのもあるが)。もっとも、会社の歴史は知ろうとしなければ分からないものなので、日本を代表する企業に興味がある人には十分に価値があるのかもしれない。
第一章は筆者がカネボウに入社した当初に感じたことの記録である。
配属した工場の社員(600人)のうち70%が女子工員(多くが中卒)のうえ、魅力的な環境を提供するためにNHK高校と提携した学院で教師として教えるなど、働きやすい環境をつくるのに必死になったり、「金の卵」と言われた安い労働力の彼女達を充員するために行った家で、『山椒太夫』の世界のような、人買いとも呼べる行為が行われていたことにがっかりしたこと、その一方で所属した軟式野球部や、強豪と言われた硬式野球部、女子バレーボール部があったことを振り返り、全国に「鐘紡町」が三つもあった頃から随分変わってしまったことを残念に思っている。
第二章はカネボウの本社(繊維事業部)に移ってから化粧品部門に移るまでのエピソードである。10万坪という敷地を有し、本社ビルや工場、研究所の他に野球グラウンドと動物園までも置かれていたそうである。
仕事の面でも「カネボウ・消防・泥棒は遅くまで仕事だ」という専務の口癖から伺える熱心さ、近隣の店からも「いくらでも貸します」(質屋)、「十三になど行ってはいけません」(タクシードライバー)という言葉が出るように尊敬を集めていたようである(十三の飲み屋は場末で相応しくないとのこと)。
その一方で、社内では人事部へ行った、かつ慶應卒の人間が派閥を作って理事の選挙シーズンには票集め、式典で失態を犯した総務部のノンキャリアを左遷してしまうという嫌な空気を作っていたことや、商売のスタイルが「買ってくださいではなく、売ってやる」という態度であったことを自己分析している。
繊維業界の雄であったカネボウは当時「十大商社」と呼ばれていた会社とも強い繋がりがあり、決算期に困ったときは在庫の買取りを行ってもらい、その恩義に報いるために次も商売をまかせていたいう。
それだけならばどこの会社にもある話だが、繊維業界は生地を売って製品で買い戻すときに価格を勝手に設定する、商品に利益を乗せて売りを建て相手に利益を上乗せさせて買い戻す事も行う、筆者曰く「密林のジャングル」であり、結果としてこれが実際の在庫がどこにあるのか分からなくなる「宇宙遊泳」となり、斜陽となった業界でにっちもさっちも行かなくなり、今日に至��たのだという。
かつては朝鮮戦争の特需で35か月分のボーナスを出したり(ガチャ万景気)、繊維を取り扱っていたならではのコレクション(テキスタイルプリント・油絵・コプト綴れ織)、山水庵・去来庵を有していた「空前絶後のコンツェルン」がこのような事になってしまうなど、当時の人は想像出来ただろうか。
第三章は、筆者が化粧品部門に移った後の話である。セールスマンとしても働いていたようで、店頭での主力の美容部員達と共にノルマ達成に奮闘し、毎年秋の慰安旅行では疲れを癒したそうだ。同じ会社であるのも関わらず、部署の違いでこんなに差があることに驚き、繊維事業の関係者にこの仕事を経験させていれば、カネボウの未来は違っていたのではないかと推測している。
それ以外には化粧品のチェーン店制度を作ったのはカネボウであることや、化粧品の製造コストは水・脂・香料・化学成分のみでとても低く、美肌のために寒気・感想・紫外線に対策するストーリーを三つのキーワードを織りまぜながら売り込むという商法を明かしている。
第四章は、筆者が再び繊維部門に戻ったときの違和感の記述である。
化粧品部門と繊維部門が組んだ「パンティーストッキング」、「着る化粧品」をコンセプトにした「エステティック繊維シリーズ」が大ヒットするなど良いこともあったものの、繊維部門が赤字続きであるにも関わらず、本当にコストダウンされたのかと疑うような変化の無さ(中国の台頭も関係あり)や、数量単位の統一性の無さで部門ごとの交流が出来ない、しまいには自分の知識の深さに酔った上司と組まされ「技術者には責任は無い」と聞かされ続ける。
筆者はこれらの欠点を述べた後で、「一度会社に入ったら文系理系関係なく、ビジネスマンでなければならない」のに、カネボウの繊維部門には少なかったと思い返している。
それにしても、カネボウが今日のバラエティー番組で特集されるエステの草分け的存在であったこと、日本初のコマーシャルソングを作ったという事に驚いた。
第五章はカネボウの経営者であった伊藤淳二、帆足隆元に焦点をあてた話である。
「愛と正義の人道主義」「科学的合理主義」「社会国家への奉仕」という歴代の社長による崇高な経営理念があったにも関わらず、実際には不合理なリストラ・ボーナスゼロ回答を行なってしまった企業に成り果てた。
伊藤淳二による現実を見据えていない「ペンタゴン経営」(繊維:赤字部門、薬品事業:「葛根湯」などを生むも特殊な医科向け流通を克服できず、食品:「フリスク・甘栗むいちゃいました」を生むも小規模の利益どまり、住宅不動産:一過性に終わる、化粧品:成功するも他部門の赤字を補填できず)、経営難であるにも関わらず日航の経営のトップに立つ(中曽根政権による起用)、『論語』の豊富な知識を自負するも裏目に出ている(筆者に「彼らしい訓辞」と皮肉られている)。
その後にカネボウのトップになった帆足隆元は、ノンキャリア組でありながら、月10万円しか売上が出なかったチェーン店で100万円の売上を達成する、最年少の支店長に抜擢されるという素晴らしい成果をあげるも、経営危機に陥ってから会社を任され、負の遺産を背負わされてしまった悲しい人物である(週刊誌に悪行が取り沙汰されるも、筆者は彼が「親分肌」の持ち主で洞察力の優れた人物であった事を回顧し、彼の行状とは信じられないと弁護している)。
上に立つ人間次第で会社が大きく揺らいでしまうことを具体的に綴った章であった。
第六章は筆者がキャノンに入社した後の話である。
上述したように、キャノンの一員の目線で見たキャノンの姿をこの章から「終わりに」まで綴っているので、どこまで信用して良いのかよく分からないが、参考になりそうなところを取り入れれば良いと思う。
筆者は先輩であるソニーの元社長出井伸之を頼ってカネボウとソニーのトップ会談を設定するも、「仲介人(筆者)は外で待機しろ」と言われ、人格を無視した失礼な態度をとったカネボウに失望し、自らリストラを志願した後にキャノンに入社したそうだ。
入社後に肌で感じた、技術者の会社ならではの「合理的」な仕組み、他部門同士の「ベクトルを合わせる」やり取りに感心したそうである。また、新たに作った新本社棟に環境を配慮した「人口の森」の造営(HPやGEに対抗かという声も聞かれたそうである)など良い事には資金を惜しみなく使うと筆者は述べている。
七章はキャノンの歴史と技術の紹介である。国産初のカメラメーカーとして出発し、複写機市場、プリンタ市場へと部門を拡大してゆくも驕らず「ものづくり」にこだわる、同族経営でなく完全な実力主義の会社であると述べている(持株比率の半数を外国人が所有しているとおり、実績のない世襲は許されないとのこと)。
経営理念は「実力主義・新家族主義・健康第一主義」、社員の心構えは「自発・自治・自覚」、企業理念は「世界人類との「共生」」という姿勢であると説明し、社員一人ひとりを大切にする企業であると伝え(宣伝し)ている。
それにしても、キャノンの社名の由来が創業者、吉田五郎が観音様を信仰していたためというのは面白い話である。
八章はキャノンの社内における常識の紹介である。この章にも宣伝めいていると思える箇所があるのはともかく、役員同士のコミュニケーションを図る役員朝会、赤字事業から全て撤退をした(是非が分かれそうだが、少なくともカネボウのように足を引っ張るよりはましだろう)のは現時点では、いい方向に経営を進めるのに役立っていると思われる。
最後の章はカネボウとキャノンの比較である。
カネボウは理屈や法則に当てはまらない、美術に携わっていることから「感じる」ことに重きを置き、キャノンは科学や技術に立脚した価値観を置き、「知ること」に価値を求める企業である。
この両者に差は無いはずだが、経営幹部と社内官僚だけが得をするシステム、各部門ごとの関連性・連動性の無い事業を推し進めたカネボウは没落し、技術者と現場の人間を大切にして隣接市場(カメラの光学技術を生かしたプリンタ市場への進出など)へと多角化したキャノンが大きく成長した。この違いは経営者にあると考察している。
自分用キーワード
細井和喜蔵『女工哀史』
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カネボウとキヤノンを経営分析ではなく、一社員として内側から描いた本。カネボウといえば化粧品のイメージしかなかったが、戦前は空前絶後の巨大コンツェルンだとは知らなかった。基幹産業である繊維事業が凋落している中で事業転換できずに倒産の憂き目にあったのは、そのプライドが邪魔したのだろう。
キヤノンは町工場から出発して今や日本を代表する優良企業となったが、合理的な理系企業である一方で、創業60周年記念で全社員に浴衣を配るなど、家族的な面もあることに意外性を感じた。
両社の社員であった著者ならではの本であり、両社の企業文化を知る読み物としては面白いが、この本から得られるものは正直あまりなかった。