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紙の本
世にも不幸な物語にして、秀逸なファンタジー
2006/04/09 13:07
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kou - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作『帝王の陰謀』で、王位を狙うリーガルに捕らえられ苛烈な拷問の末、ブリッチとシェイドの協力でなんとか命を取り戻したフィッツ。
けれど巷で忌避される<気>を使っての脱出だったため、フィッツ=シヴァルリとしての生は永久に失われた。誓約を捧げ仕えてきたシュルード王は既に亡く、継ぎの王ヴェリティは六公国の救い手・旧きものの探索に赴いたまま行方不明。フィッツに残されたのは限りない懊悩と拷問によって深く植えつけられた強い恐怖、そして僭王リーガルへの憎悪のみだった。
フィッツは<気>の絆で結ばれた狼・ナイトアイズだけをともに、リーガルへの復讐を果たそうと内陸を目指すが…
<ファーシーアの一族>完結編。三月からずっとこのシリーズを読み続けてきて、ようやく読了しました。
ものすっっっごく面白いです。
寝不足の頭を抱えて寝なきゃと思いつつ夜更かししたこと数回、電車を降りすごしたこと1回。ページをめくる手が止まりませんでした。
とにかく描写がリアル。このお話は<技>と<気>という魔法が重要な地位を占めるので、動物と絆を結ぶ<気>に関連して、犬や狼、物語の後半ではドラゴンなど様々な動物が登場します。しかも今作冒頭では、フィッツは狼ナイトアイズと思考を共有することで生き延びているのです。その動物達の思考の特殊さ、人間とは異なる思考のあり方がとってもリアルです。人間のように思考する動物たちではなく、あくまで人間とは異なる生き物としての思考なのに、どこか親しみも感じられるのです。
動物たち以外にも、内陸を旅する過程で見る世界のありようや、そこに生活する人々の生き様、<技>の夢で見る赤い船団に襲われる地域の悲惨さなども、強い現実感を持って迫ってきます。
それにしてもフィッツの不幸なこと。
これまでも、ここまで追い詰めるかというくらい不幸でしたが、この『真実の帰還』冒頭ではやられました。ナイトアイズと思考を共有したため、狼のようになってしまったフィッツが、人間性を取り戻すまでの過程は、まさに世にも不幸な物語です。そしてその後も、息つく暇もなく様々なことが降りかかってくるのですから、目を離す余裕はありませんでした。
そうして内陸を踏破し、山にいたり、更にその先、ヴェリティのいる旧きものたちへの住処に到ってからの展開は、哀愁を帯びてきます。
その先に悲劇が待ち受けているのが分かりつつ、フィッツだけでなく他の者たち—— ヴェリティも、彼の妃であるケトリッケンも、道化も、ケトルもスターリングも—— 犠牲を払い、それでも愛情と義務を保ち、己の道を進もうとしている。
それを、すべてを終えたフィッツが回想しているのだから、もの悲しくもなろうというもの。
物語が終わった後も、まだ謎や伏線は残されています。
道化に関すること、フィッツの母親、フィッツのその後(このままじゃあまりに不幸すぎる…)、子ども達の先行き……
別シリーズとして続編が出ることは既に決定しているとのこと、楽しみです。早く読みたいなあ。
紙の本
最後まで波乱万丈
2006/03/26 23:50
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Leon - この投稿者のレビュー一覧を見る
ブリッチ達の機転によって辛くも一命を取り留めたフィッツだが、体は回復したものの、結局はモリーを裏切ってまで守ろうとした六公国の実権は完全にリーガルが掌握してしまった。
真の王たるヴェリテイは<技>によって生存していることだけは伝えてきたものの、その行方は洋として知れないまま。
フィッツはリーガルの暗殺を決心し、<絆の友>ナイトアイズのみを道連れに新たに六公国の首府となった内陸の街トレイドフォードへ向かった。
旅の祐筆を装ってはいたが、リーガル配下の術者達の<技>を欺くことは出来ずに生きながらえていることを知られ、追っ手がかけられることに。
厳しい旅の中でナイトアイズとの絆はますます深まり、<気>に関する知識を持つ<古き血族>とも出会って助けられるが、リーガルの居城であるトレイドフォード館を目前にして頼りに出来るのは自分一人。
幼い頃から暗殺者として育てられたフィッツは、習い覚えた知識と技術を用いてリーガルの寝室へと迫るのだが・・・
精神をナイトアイズに移すことによって仮死状態となり、リーガルの目を欺くことに成功はしたが、本巻冒頭のフィッツはその後遺症とも言える状態で、立ち居振る舞いは狼そのもの。
ゆっくりと回復して人間性を取り戻していく様子は、ダウンしたボクシングの選手が、何とか立ち上がって再びファイティング・ポーズを取る様子にも似ている。
普通であれば勝つ為に立ち上がるのだろうが、フィッツの場合は今までが今までなだけに、「嗚呼、また殴られる為に立ち上がるのか・・・」と同情してしまった。
そして、やはりそのとおりになるのだが・・・
<古き血族>や昔の<連>の生き残りによって、<気>と<技>という二種類の魔法がかなり明らかにされたが、どちらも古い時代に比べると先細りのようで、物語の世界は神代から人間の時代へと向かう流れの最終段階にあるのだろう。
それだけに、人によっては御伽噺扱いしていたりもする<旧きもの>が最後の最後になって復活する場面は圧巻だ。
ここに至るまで幻想性を抑え気味にしてきたのも、クライマックスのの効果を高めるためだったのかも知れない。
また、初刊「騎士(シヴァルリ)の息子」では老貴婦人レディ・タイム、次巻「帝王(リーガル)の陰謀」では幼い侍女ローズ・マリーが意外な正体を現して驚かせてくれたが、本巻ではこれまて謎めいた言動をしてきた道化の正体が明らかにされ、伏線の長さと併せて驚かされた。
普通、物語の結末に期待されるハッピーエンドにはなっていないが、特に後味が悪いという印象はなく、無常観を思わせる結末は静かな余韻を残すだろう。
紙の本
孤立無援
2008/02/08 22:21
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:にい - この投稿者のレビュー一覧を見る
死そのものから復帰したフィッツ
しかしそれはすべての絆が断たれることを意味し、圧倒的なまでの孤独に苛まれる
死んだはずのフィッツの存在をもっとも意識していたのは、皮肉にも敵であるリーガルだった
ブリッチにもシェイドにも見放され、フィッツはナイトアイズだけを供にリーガルを殺すための旅に出る
ブリッチによって仮死から蘇ったけれど、それですぐ皆の所に帰れるわけではないところがなんとも厳しい
「気」に対する迷信や恐怖があり、死んだはずの人間が生きていたからと言って「良かった良かった」とはいきません
リーガルが様々な手柄を自分のものにし敵の悪評を流布させたりする事といい、民衆の信じる事こそが「事実」となってしまうという部分に重く厳しい現実味があります
今回はフィッツの一人舞台で、孤立無援の大立ち回りがなんとも痛い痛しいです
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