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ジーンズをはいた女神たち みんなのレビュー

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みんなのレビュー2件

みんなの評価5.0

評価内訳

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紙の本

内容紹介

2006/03/05 00:54

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:アートン - この投稿者のレビュー一覧を見る

「時が過ぎるのではない。人が過ぎるのだ」
と、ある詩人は教えてくれた。
それにならえばこの本に描かれた11人の女性たちは、
たしかに作者の胸を訪れ、そして去っていった。
いまはただ、彼女たちのうちのひとりでもいい、
あなたの胸にとどまってくれることを願うのみである。
——凪沢了

 年齢も境遇も異なる11人の女性の世界を、男性作家である凪沢了がそのほとんどを女性の視点や語り口で描いた、12章から成る短篇小説集。女性たちの心の奥底に眠る、闇、孤独、秘密を描いている。
 恋人から言われた思いがけない一言に、ひとつの恋が終わったことを知るエツコ。永遠にも思える孤独と向き合いながら、まるで深海魚のように静かに身を潜めてひとり生きるユウコ。家族の問題も、友だちとの関係も、小さな胸に必死で受け止めながら、クラスメイトの少年への、恋と呼ぶには幼すぎる想いを抱く、少女・カノ。若かりし頃、情熱のすべてを注ぎ込んだ恋愛を、恋に悩む青年に静かに語る、Y〈イグレック〉。愛しい人なのに、一緒にいても心が見えない、二人の未来が見えないことに、言い知れぬ不安を抱くトモヨ。夫の浮気を知った時、幼い頃見た両親の諍いの場面が甦り、それが脳裏から離れられなくなる、エリカ。ある時、互いにそれぞれ小さな秘密を持ってしまった夫婦、弘一とカヲル。そして、サチエ、リサ、ヨソコ、のぞみ…。
 傍目には平凡と思われるその日常の中で、さまざまな問題に直面するが、時に拮抗し、時に身をまかせながら生きていく女たち。そんな女性の心の不思議さを、決して誰も汚すことのできない領域があることを、凪沢了は繊細に、丁寧に、綴っている。女性にとっては、どこか必ず共感できる一文に出会える、そして、自分の生きてきた道をゆっくりと見つめなおすことができる小説集といえるだろう。

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紙の本

孤独という魅力

2006/03/05 00:48

0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:角田光代 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 たとえば男性作家が女性の視点で小説を書いたとき、「女の心情がよくわかっている」というような評価を目にする。もちろんその反対もある。私も男性視点で小説を書き、「男の気持ちがなぜこんなにわかるのか」と言われたことがあり、それはそれで心からうれしかったのだが、はて、考えてみれば、その評価自体、なんだかナンセンスに思われる。だって本当に女の心情を読みたいのであれば女性が女性視点で書いたものを読めばよろしい、ということになる。
 と、そんなことを考えたのは、この『ジーンズをはいた女神たち』を読んだからである。作者は男性である。おさめられた十二の短編にはすべて女性の名前がつけられ、そのほとんどが、彼女たちの視点で語られている。作者はおそらく、女性の心情をていねいになぞろうとしたのではなく、理解できないものとしての女性をこそ、書こうとしたのではないか、と私は思った。
 男性を主人公にして小説を書いたとき、どうしてもわからない、どうしても触れられない一点がある。それは具体で言えば(下品な物言いで申し訳ないが)ちんちんの有無である。ちんちんがある、ということが私には感覚として絶対にわからない。おそろしいほどの絶対である。もちろんちんちんというのは単なる具体例であって、精神肉体両面に、異性にはどうも不可侵の一面がある。そのことを悟られたくないがために、作家はときに異性をデフォルメして書く(成功すると「男なのによく女性の心情が…」と褒められ、失敗すると「こんな女はいねえよ」と呆れられる)。そうして凪沢了という作家は、この、触れられない一点、わかりようのない一点に、じつに敬意を持って小説を書いている。たぶん、この作者には女性は理解不能ないきものなのだ。女という奇妙ないきものが、どのように恋に落ち、どのように恋を失い、どのように日常に頼り、どのように過去をふりかえり、どのようにささやかなものごとをいつくしみ、どのように前に足を踏み出すのか、作家は理解するのではなく、その輪郭をなぞるようにスケッチする。線は太すぎず、潔く簡略化されているが、それがまた、短編というかたちに絶妙に合っている。
 そうして不思議なことに、点描のようなスケッチの先に、肉体を持ち声音を持ちにおいを持った女性たちの横顔が、ふっとあらわれる。どの短編を読んでいても、タイトルの名を持った女性がすっと私の目の前を通り過ぎる。そこには何やら生々しさがある。友人の家にいって、たとえば毛の絡まったブラシとか、枕元に置いてある古いぬいぐるみとか、そういうものを目にしたとき、見てはいけないものを見たような生々しさを感じるが、それと同種の「見てしまった」生々しさを、小説のすべての女性が感じさせる。それは、ときに、女性の孤独な心の産物だったのかもしれない。
 それで私は気づくのだ。女性の孤独というものは、こんなにも男性のそれとは異なるのかと。ふわふわと曖昧で、かと思うと突き抜けるような潔さがあり、ときに激しく、ときに静謐な、女の人の孤独。それがどんなに魅力的であるかを、本書はあざやかに伝えてくる。作者が女性をわからないものとしてとらえているからこそ、その魅力はくっきり浮かび上がるのだと思う。
 蛇足だけれど、最後に。飲み食いする場面が、こんなに魅惑的に書かれた小説は、久しぶりに読んだ気がする。作者は女性の理解不能さに敬意を払いつつ、飲み、食らうことで百八十度気分を変えてしまう女性の本質は見抜いていて、そうしてそんなところを、きっと愛してやまないんだろう。
(アートンHPより転用)

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