- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
マルクスの使いみち みんなのレビュー
- 稲葉 振一郎 (著), 松尾 匡 (著), 吉原 直毅 (著)
- 税込価格:1,980円(18pt)
- 出版社:太田出版
- 発行年月:2006.3
- 発送可能日:購入できません
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |
紙の本
けっこう楽しい、マルクス・オタクの談義
2006/06/15 12:45
10人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:T.コージ - この投稿者のレビュー一覧を見る
マルクス関係のゼミに居ると就職ができない..と言われるようになって久しいとか? でも最近は面白いマルクス関係の書籍がいくつか出版されている。資本主義に対して批判的だがどうしていいかわからない「ヘタレ人文系のひとたち」に向けたのが本書。それにしては専門用語がイッパイでムヅカシイのが残念。既にマルクスに興味がある人には面白いだろうが、この辺、もうちょっと考えてほしかった。1990年代までは世界の半分を占めたイデオロギーが三者三様に自由に論じられ、それぞれのマルクス理解が違うので、そこが面白い。マルクス・オタクの談義なのだ。
まじめにいえば稲葉が主張する新古典派経済学の上でマルクスのヴァージョンアップを略るという戦略はいいと思う。そのかわり新古典派そのものが直面した問題や限界がクリアされなければいけない。オーソドックスな経済学そのものの問題がクローズアップされる。稲葉があとがきで指摘するように<実物経済を金融・貨幣が振り回す>という現象はケインズもケインズを批判するマネタリストもたどりついた問題だ。それは貨幣の問題であり、そこが解明されない以上、それはテロより大きな問題でもあるんじゃないか? その典型が現在最も大きな話題であり問題ともされているグローバルマネーである。今年の1月16日には日本でも関連する事件が社会を揺るがした。先端的な企業あるいは経済人として登場したライヴドアとホリエモン。そして村上ファンド。歴史的にはウオール街の株価大暴落がやがて第二次世界大戦のトリガーとなったという現実もある。
松尾の「企業の運営主権は」「不確実性下でいちばんリスクをこうむる者に主権を配分するのがいい」というミクロ経済学者の分析を評価する主張は現実的だ。欧米(特に米英)では常識だが日本では企業が従業員や社長のものだと思われている(日本の共同体意識の特殊性)。しかし企業に対して最大のリスクを負っているのは現実に資金を提供している株主だ(世界の普遍的な事実)。社員はヒラも管理職も労働の対価として給料をもらっているのに過ぎず、これは赤字経営でも変わらない。つまり株主は多額の出資をしているにもかかわらず配当は低く、株の売買以外では利益が得られにくい。この問題を正面から掲げたのが村上ファンドやホリエモンに代表されるマネーゲーマーたちだった。
ゲームはいつでも現実では扱いにくい問題を正面から取り上げてくれる。せっかくのマルクスをめぐる討論も単なるオタク談義に終わってはもったいない。もっとマルクスゲ−マーとして縦横無尽に語ってほしかった。吉原のような尾崎豊とウルトラマンレオに感動してマルキストになった人はもっと本領を発揮してほしい。
本書では触れていないが<お金で商品を買う>のではなく<お金でお金を買う>株式や為替の世界こそ、ケインズやマネタリストが直面した問題なのだ。これは<お金は商品(の一種)である>と考えれば大きなヒントになる。そういったヒントをいくつか提出してきたのはマルクスだけだった。本書にはそういう視点がないが、次の機会には期待したい。
2 件中 1 件~ 2 件を表示 |