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へんな子じゃないもん みんなのレビュー
- ノーマ・フィールド (著), 大島 かおり (訳)
- 税込価格:2,640円(24pt)
- 出版社:みすず書房
- 発売日:2006/03/01
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紙の本
歴史の1コマ1コマを連鎖させながら未来へ繋ぐ豊かな想像力
2006/04/10 05:15
11人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:未来自由 - この投稿者のレビュー一覧を見る
こんな構成の本は読んだことがない。日記のようで日記でない。回想録のようで回想録でもない。それでも1コマ1コマが著者の祖母の生と、著者が体験し日々考えた断片が歴史として繋がっている。
「へんな子じゃないもん」というタイトルも奇抜だが、そこには祖母の著者への愛、著者の祖母への愛がこもっている。著者は歴史の断片を振り返りながら、過去から現在、そして未来を見ようとする。そこには自己の信念を確かめ、未来に繋がる人々への愛と未来を再確認しようとする心が詰まっている。
人の生とは何か、死とは何か、そんな問いだけでなく、人間と社会とのかかわりをしっかりと意識した著者の言葉は、現実の社会に対し少々寂しそうでもある。
民族とは何か、民族が強調されたときの愛国心とは何か。そこには、自民族の優劣感や排他的な考えは含まれていないか。著者が違和感を感じる視点は、過去・現在・未来への想像力として繋がっていく。
「世界で唯一の被爆国」日本が、フランスの核実験にどのような反応を示したのか。また、アメリカの核実験には何も言わず、他国の核開発を問題視する日本。
阪神・淡路大震災の時、「家ともども制服を失ってしまった生徒がいるからには、全員に制服の着用を要求するわけにはいかない、ならばだれにも要求すべきじゃない」と言っていたのに、いつの間にか復活した制服。国旗・国歌の強制と制服の強制との想像力には、強制のもつ意味をひしひしと読み取ることができる。
「抗菌殺菌」のラベルのついた商品が増えているが、「放射能の危険にたいして人びとが鈍感なのは」なぜか。「体臭のない、脂肪のない、垢のない身体が、汚れていない環境を夢見る」のに「空気汚染、水汚染、大地汚染と仲良く共生する」という揶揄には、身が縮む思いさえする。
戦争に対する責任問題の曖昧さ。沖縄のレイプ事件への「花火」的行動。人々の怒り、エネルギーが「花火」的でしかないことに対する悲しみが伝わってくる。
それでも、「意味をもとめる渇望が、日常の無関心の表皮の下にとぐろ巻いている」という著者の未来への渇望は確実に伝わってくる。
著者は、あとがきで「個々人の生涯を織りなす愛情とそれが生み出す葛藤と、社会と歴史の大きな流れとの関係を追ってみたかった」と語っている。そこには未来を諦めない希望と渇望がある。
その未来をつくるのは、愛とそこに根ざした想像力をもつことのできる、私たち個々人であり、民衆である。けっして「民族」や「愛国心」ではない。「強制」される「愛」ではいけないことを本書は教えてくれる。豊かな想像力に育まれた愛が未来をつくるのだと。
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