紙の本
憲法の本質を考える
2022/04/23 16:15
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投稿者:かずさん - この投稿者のレビュー一覧を見る
総選挙等で勝利を得た政党が多数を背景に必ず論じてくるのが憲法改正。改めて日本国憲法を考えるとき条文の解釈だけを考えて改憲するのか、国としての形(原理)を変えるために改憲するのかを考えるとき、現役の学者が薦める一冊。憲法とは何か、その本質はなにかを考えさせられる。立憲民主主義から生じた近代憲法。憲法によって国民は権力から自由と権利が守られている。改憲によって九条を改ることは、今までの国の在り方が変わり国際社会からどのように見られるか。国家間の紛争を防ぐためにも憲法は必要と論ずる。予期もしない国家間紛争が起きている今だからこそ憲法改正については国民は真剣に考えるべきではないだろうか。
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そもそも憲法って何のためにあるのか、そして憲法を「変えること」には、どのような意味があるのか。
彼は「価値観・世界観の多様化」という観点から、立憲主義を再定義しようとしているようだ。その点に人間らしさを感じるし、そして今までの憲法議論にはない論点を提示しているように思える。今マイブームの憲法学者の1冊。
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立憲主義の考え方を説明し、憲法改正論議を考える本。
立憲主義とは何かに始まり、権力分立のあり方から憲法改正の手続の話など、法律学(政治学?)的なものの見方を勉強中の私にとってとてもためになりました。
でも憲法を学んだことがないとちょっと難しいかも。
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1月?
「憲法とは何か」という題名に似合うほど、全体は首尾一貫した内容にはなっていなかったが、各章ごととても面白かった。憲法は、各種試験のために勉強する機会が幾度かあったが、判例中心の学習であったので、本の内容は新鮮な印象がした。
本書によると、立憲主義とは、多様な考え方を抱く人々の公平な共存を図るために、生活領域を公と私の2つに区分しようとするものである。私的領域では、各自がそれぞれ信奉する価値観・世界観に沿って生きる自由が保障され、一方で公的な領域では、社会のメンバーに共通する利益を発見し、それを実現する方途を冷静に話し合い、決定することが必要になるという。現代憲法にある、思想の自由、信条の自由、政教分離の規定などは私的領域と公的領域とを区分する境界線を定める規定であるという。本書で指摘されているように、この仕組みは、人々に無理を強いる仕組みである。では、なぜこのような仕組みが必要なのであるか。それは、人々の価値観・世界観が近代社会では多元化し、お互いが比較不能である。そのためもし、それら相互が、社会において各自の世界観の実現しようとすると、まさに血みどろの紛争を再現することになってしまうからである。そして、立憲主義に基づき憲法の役目は、政治プロセスが本来の領域を超えて個々人の良心に任されるべき領域に入り込んだり、政治プロセスの働き自体を損ないかねない危険な選択をしないようにあらかじめ選択の幅を制限する役目にあるという。そのような観点から、筆者は昨今、行われている憲法改正議論に対して批判的であるようである。
全体を通し、憲法にかかわる話題を、法学、時には政治学の観点から考察であったが、立憲主義の考え方、憲法改正議論に関する問題など多く考えるきっかけになった。筆者が主張していたが、憲法改正以前に、その前提をしっかり確認すべきだと私も感じた。戦略と憲法とは密接な相互関係にある。だから、第一に日本の基本秩序たる憲法とは何なのかを見定める必要があり、それに加え第二に、冷戦後の世界において、日本がいかなる目標を持つ、どのような憲法原理に立つ国家になろうとしているのかを決定する必要性などを挙げている。
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憲法改正論議の前に、そもそも憲法とは何かを考える必要がある。近代国家の権力を制約する、立憲主義という思想について理解しなくてはならない。憲法を改正する根拠に時代が変わったから、古いから、なんて理由は通用せず、ましてや社会のニーズに合っていないから改正しましょうなんて意見は全くもっておかしい。読みやすいからおすすめ。
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なるほど、いわゆる「戦後民主主義」を信奉する人達はこういう発想をするのかな、という思いで読んだ。極めてリベラルな理想主義者である。悪く言えばリアリティに欠ける。社会の仕組みというには「人間」が作りだすものである以上、「人間」に関する考察、即ちより社会科学的側面からの考察が必要であるが、その視点が欠けていることが、リアリティを感じられない理由ではないかという気がした。
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憲法を護持しようと考えている人にも、改正すべきと思っている人も、日常生活で憲法と自身の関係性を見いだせていない人にも、参考になる指摘の多い本だと思います。憲法学者としてメディアへの登場も昔に比べれば増えてきた感のする著者ですが、その思考や発想の基礎を知る上でも良いと思います。
憲法そのものへの問いかけではなくて、立憲主義という思想を理解してそれを現代の日本国憲法(正確には憲法典)が掲げる主義・思想とのバランスに議論の焦点がさだめられているところが特徴と言えます。立憲主義が前提する「違い」を当然視して受容し、相違を前提とした社会形成が実現するまでの途方もなく長い旅路を想起させる内容にはなっていますが、その長く平坦ではない道を進みだせてもいない、むしろ諦めて背中を向けているともいえる今の憲法論議を学問的視点から理解するきっかけを与えてくれると思います。
さらにこの本が面白いと感じられる点は、各章の末尾に記載されている『文献解題』であると個人的に感じています。大学のゼミ生向けに書かれたことを意識させて、そこからさらに憲法論の古典や現代の世界的な憲法論議への扉を開いている意味でも、この本が出色であると思わせます。また、単なる紹介だけにとどまらず著者自身が推挙する本の重要性や感想、そしてこの『憲法とは何か』という書籍との貢献部分にまで触れられている点も憲法論への招待的位置づけを意識した構成と言えるかもしれません。
変えるのか、変えないのか。「変化」そのものへの視点ばかりが強調される日本の憲法改正論議に足りないものが何かを知らしめてくれます。著者の長谷部氏は、NHKで放送されている『爆笑問題のにっぽんの教養』で最近出演していたのを見ていました。そのときに太田氏とかわしていた長谷部氏の憲法論が勉強になったところもこの本を読む事になったポイントだと思い返しています。
いずれにせよ、これから先も政局において憲法論を展開されていくでしょう。その中で、一人一人が改正論議に声を発し、投票行動を通じて意志を表明する場に直面したとしても、大切な点は著者が本書冒頭で引用しているニーチェの言葉に帰結するのです。読み終わって、また最初にこの文章を読めば、その真たる意味に近づける気になるのです。
「怪物と戦う者は、そのため自身が怪物とならぬよう気をつけるべきである」
フリードリッヒ・ニーチェ『善悪の彼岸』
『文献解題』から派生して、私は長谷部氏の『憲法と平和を問い直す』を買いました。あと、いまさらながらルソーを読んでいないことに気づき、『社会契約論』にも読み進みたいと思います。だんだん国家と国民の関係性について考える方向に進んでいるような気がしますが、仕事におわれて自分のありようと法的に社会的に定義づけることについて考えを巡らすのも良いでしょう。
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憲法改正については慎重にすべし、というのが著者の基本的な立場であるが、その理由は、ありがちな「護憲派」の主張のように、憲法の価値観を礼讃し、すばらしい憲法だから守るべき、というのとは少し違う。むしろ、立憲主義というものの危うさや、憲法という存在の特質にかんがみて、安易な改正をすべきではない、というのが著者の考えのようである。憲法の内容の善し悪しではなく、憲法や立憲主義というものの性質、本質から憲法改正を考えるという点で、著者の主張は一般の憲法論とは異なる水準にあると思われる。
http://d.hatena.ne.jp/hachiro86/20061215#p1
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長谷部先生の本です。
とても読みやすく内容もしっかりしていると思います。
立憲主義の成立から冷戦の終結、民主主義の台頭と順を追って述べてあります。
章ごとに著者の書きたい内容や目的などが明確にまとめられており、読んでいて
流れるように頭に入ってくるような気がします。
ですが、読みやすくても書かれている内容は深く内容も濃いので繰り返し読むのが
一番よいと思われます。
憲法の本の中でも比較的よい本だと思います
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憲法は危険物です。取扱い要注意!
って岩波新書も思い切った帯付けますね。
内容も凄く読みやすい。
憲法9条の解釈論はともかくだけど。
最近の憲法改正論議って、何か怪しいとは感じつつ、まあ変わるのが世の流れか、新しい人権とか書き加えるくらいは、と思っていた自分のアホさを痛感。
最近発表された自民党案は、なぜ思ったほど復古調ではなかったのか?という疑問にも納得いく答えがあたえられました(わかって無かったのは私だけ?)。
成る程、憲法は取扱い要注意です。
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憲法については、左右どちらかの立場から感情的に論じられることが多く、左の立場からは、憲法改正は絶対に認めない、まして9条改正などもっての他、右の立場からは、アメリカが短期間で書き殴った憲法など改正するのが当然、軍隊の存在を認めない9条など真っ先に改正すべき、という論議になりがちです。
この本は、左右どちらの立場にも偏らず、きわめて冷静に、論理的に憲法改正の無意味さ、大統領制よりも、議院内閣制がいかに優れている制度か、を論じています。
9条に関しては、「たしかに自衛のための実力の保持を認めていないかに見えるが、同様に、「一切の表現の自由」を保障する21条も表現活動に対する制約は全く認められていないかに見える。それでも、わいせつ表現や名誉毀損を禁止することが許されないとする非常識な議論は存在しない。 21条は特定の問題に対する答えを一義的に決める「準則(rule)ではなく、答えを一定の方向に導こうとする「原理(principle)」にすぎないからである。9条が「原理」ではなく「準則」であるとする解釈は、立憲主義とは相容れない解釈である。」との一文に目を開かれる思いがしました。
単なる感情で改憲を主張する人達(実を言うとこの本を読むまでは、私もその一員でした)に是非一読してもらいたい本です。
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とても分かりやすく憲法や政治制度について書かれている。
主に憲法改正論議の矛盾を突く内容。
日本の統治構造、という中公新書の本を読んだ後だったので議院内閣制がなぜ大統領制より優れているかと言った問題については非常に興味深かった。
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メモ
憲法が国家の、属する人々の在り方そのものである。故に戦争とは相手国の憲法の否定である。
立憲主義が「公」と「私」の区別によって、価値観・文化の違いを内包させつつ国家を成立させている。故に本来的に、人間としては受け入れ難い。
憲法典を変えたからといって憲法が変わるとはかぎらない。
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http://d.hatena.ne.jp/heitarosato/20101003/1286076533
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[ 内容 ]
憲法は何のためにあるのか。
立憲主義とはどういう考えなのか。
憲法はわれわれに明るい未来を保障するどころか、ときに人々の生活や生命をも左右する「危険」な存在になりうる。
改憲論議が高まりつつある現在、憲法にまつわる様々な誤解や幻想を指摘しながら、その本質についての冷静な考察をうながす「憲法再入門」。
[ 目次 ]
第1章 立憲主義の成立
第2章 冷戦の終結とリベラル・デモクラシーの勝利
第3章 立憲主義と民主主義
第4章 新しい権力分立?
第5章 憲法典の変化と憲法の変化
第6章 憲法改正の手続
終章 国境はなぜあるのか
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[ 参考となる書評 ]