紙の本
美しいものの名は恐怖
2007/06/09 18:48
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
英米編の最後の第3巻で、落穂拾い的な雑多なチョイスだが、何がなんでも紹介されるべき作品群ということでもある。
ナサニエル・ホーソーン「ラパチーニの娘」間違いなき稀代の傑作。アレキサンダー大王遠征におけるインド美女の故事が、19世紀の南イタリアに、恋の悲劇としてベアトリーチェという名の少女とともに甦る。
A.ビアス「怪物」ビアスらしく見事に人間の認識力の虚を突いた作品。ある意味、会心の一撃。その「怪物」とは一体なにものなのか。
H.P.ラヴクラフト「ダンヴィッチの怪」この作者によるクトゥルゥー神話ものとしては著名な作品と思うが、現代においては恐怖、怪奇というよりも、人類が無惨に駆逐されるであろう予感に痛快さがあるように思う。さらにニューイングランド地方において「地球」の先住者を幻視するとき、「アメリカ大陸」の先住者の影がだぶって見える。だからこそこの神話には恐怖があるのかもしれないが、僕にはそれはピンと来ないし、最初の印象を覆すこともない。そいつらが強大で暴虐であるほど、復讐が凄惨であるほどに、血を沸き立たせ恍惚を呼び寄せる。
ウィルキー・コリンズ「夢の中の女」ある種の因果ものというんですか、どういう理由か分からないけどどんどん話が転がっていく、という怖さはたしかにある。日本の円朝なんかの怪談にありそうな、曖昧な無気味さ。
この他には、ディケンズ、キップリングなどの有名作家による怪奇譚など、さすがに達者で迫力があるが、上に挙げた作品ほどにはインパクトないかな。年代的にも19世紀から20世紀まで広くまたがっていて、この100年の覚え書き的意味合いもあるが、「ラパチーニの娘」を手元に置いておくためだけでもこの1冊には価値がある。これはガチ。
投稿元:
レビューを見る
収録作は以下の通り。
「ラパチーニの娘」ナサニエル・ホーソーン
「信号手」チャールズ・ディケンズ
「あとになって」イーディス・ワートン
「あれは何だったか?」フィッツジェイムズ・オブライエン
「イムレイの帰還」R・キップリング
「アダムとイヴ」A・E・コッパード
「夢のなかの女」ウィルキー・コリンズ
「ダンウィッチの怪」H・P・ラヴクラフト
「怪物」A・ビアース
「シートンのおばさん」ウォルター・デ・ラ・メア
このシリーズは巻末の作品紹介が丁寧。3巻では1巻収録作の翻訳を手がけた平井呈一氏が解説。怪奇ジャンルの歴史語りとしても面白く、ここからまた検索して読む範囲を広げる足がかりに多いに役立つ感じです。
投稿元:
レビューを見る
ラヴクラフトの章だけ。
怪奇小説集が怪物とか文字通り怪奇現象を扱うっていうのとわりかしグロテスクな表現になり易いという印象なんで避けがちだったんだけど、「ラヴクラフト」の書く文章には背景の深さを感じさせる謎とか読ませる技術が凄い。
一貫して続く道のりが重々しい表現なのに、続きを気にさせるし怪奇の面を一番効果的に使ってる気がした。
ちょっとこの本とは外れるけどクトゥルー神話とかはこの人のかいたものをまとめたそうで、そんな最近の人が書いてるのとは知らなかった。
投稿元:
レビューを見る
「ラパチーニの娘」ナサニエル・ホーソーン
「信号手」チャールズ・ディケンズ
「あとになって」イーディス・ウォートン
「あれは何だったか?」フィッツ・ジェイムズ・オブライエン
「イムレイの帰還 ラドヤード・キプリング
「アダムとイヴ」アルフレッド・エドガー・コッパード
「夢のなかの女」ウィルキー・コリンズ
「ダンウィッチの怪」H・P・ラヴクラフト
「怪物」アンブローズ・ビアス
「シートンのおばさん」ウォルター・デ・ラ・メア
投稿元:
レビューを見る
「ラパチーニの娘」目当てで読んだ。
というかラパチーニの娘と信号手しか読んでない。
「魔女の恋」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4861823838「毒の園」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4003264126「ラパチーニの娘」と読んでみて、これが一番好きだ。
これが一番ひどいけど、ひどさがひどさとして描かれているのが良い。
話としてもまとまっている。文章の美しさがくどいのは国と時代かなあ。
なにが怖いってマッドサイエンティストの父でも身勝手な恋人でもなく、バグリオーニの邪悪さが怖すぎる。
「信号手」は選集の常連らしい。
「憑かれた鏡」http://booklog.jp/users/melancholidea/archives/1/4309204651に入ってたんだっけ。
古い訳は雰囲気の良さと読みにくさのどちらともいいがたい。
投稿元:
レビューを見る
ラパチーニの娘」 Rappaccini's Daughter ナサニエル・ホーソーン 橋本福夫訳
「信号手」 The Signalman チャールズ・ディケンズ 橋本福夫訳
「あとになって」 Afterward イーディス・ウォートン 橋本福夫訳
「あれは何だったか?」What was it? フィッツ・ジェイムズ・オブライエン 橋本福夫訳
「イムレイの帰還 THe Return of Imray ラドヤード・キプリング 橋本福夫訳
「アダムとイヴ」Adam and Eve and Pinch Me アルフレッド・エドガー・コッパード 橋本福夫訳
「夢のなかの女」The Dream Woman ウィルキー・コリンズ 橋本福夫訳
「ダンウィッチの怪」The Dunwich Horro H・P・ラヴクラフト 大西尹明訳
「怪物」The Damned Thing アンブローズ・ビアス 大西尹明訳
「シートンのおばさん」Seaton's Aunt ウォルター・デ・ラ・メア大西尹明訳
あとになって、イムレイの帰還、夢の中の女、ダンウィッチの怪、怪物、シートンのおばさんが良かった。
投稿元:
レビューを見る
毒草奇談「ラパチーニの娘」を読もうと手にとったのだが、他も面白くすべて読み通した。
ジャンルには系譜というものが確かにあるのだな。
選集に評価の星をつけるのは難しい。
投稿元:
レビューを見る
1、2巻と比べると読みにくいものが多かった気がする(単に好みの問題か?)。
「信号手」チャールズ・ディケンズ
呼ばれてる時の情景を想像するとゾッとする。やはり名作だと思う。
「イムレイの帰還」ラドヤード・キップリング
怪奇現象かと思いきや…の意外なオチが面白かった。
「ダンウィッチの怪」H・P・ラブクラフト
今まで読んだ彼の作品では一番読みやすかった。情景が浮かびやすい。
心に残ったのは以上の作品位かなぁ。私はすでに読みなれてるけれど、1800年代の作品もあったりするので、古典の文章の運びに慣れない人には辛いものがあるかもしれない。
投稿元:
レビューを見る
シチュエーションが美しいと思った。映像で見てみたい。
マッドサイエンティストの父親に毒の体にされたベアトリーチェとジョバンニの悲恋を描いた作品。
最近、「緋文字」のナサニエル・ホーンソンの作品だと知った。「ラパチーニの娘」
悲劇というのは後になってから気付くもの。気づいていないうちが華。「あとになって」
目に見えない不思議な生物の正体とは、結局なんだったのか?見ても感じてもいない私たちにはわからない。「あれは何だったか?」
あの夢は予言でもあり、悪い未来を引き寄せてしまったのだと思う。最後に彼は狂ってしまったのだろうか。「夢の中の女」
今回も興味深い作品が多かった。
投稿元:
レビューを見る
「ラパチーニの娘」
ナサニエル・ホーソーン
「信号手」
チャールズ・ディケンズ
「あとになって」
イーディス・ワートン
「あれは何だったか?」
フィッツジェイムズ・オブライエン
「イムレイの帰還」
R・キップリング
「アダムとイヴ」
A・E・コッパード
「夢のなかの女」
ウィルキー・コリンズ
「ダンウィッチの怪」
H・P・ラヴクラフト
「怪物」
A・ピアース
「シートンのおばさん」
ウォルター・デ・ラ・メア
投稿元:
レビューを見る
英米編の3巻目。
幽霊や怪物や、人間心理やイロイロな怖い系詰め合わせ。
信号手は読み終わった後にジワジワ来る怖さがある。