紙の本
全世代におすすめ
2022/11/30 23:42
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投稿者:mtym - この投稿者のレビュー一覧を見る
人の心の中に何があるか
人に与えられていない知る力とは何か
人は何によって生きるか
紙の本
あらすじでも改訳でもなく、やさしく読めるトルストイ
2006/08/20 11:10
7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:銀の皿 - この投稿者のレビュー一覧を見る
貧しい靴屋は凍える路上に倒れている裸の男を拾い、自分のコートを着せて家に連れ帰る。。。 晩年のトルストイが書いた民話風の作品のひとつです。この「トルストイの散歩道」シリーズでは、長くない民話を一冊の短編集にまとめるのではなく、各々100ページ足らずの5冊のシリーズに分けています。シリーズの第一巻にあたるこの1冊には「人は何で生きるか」一作だけが収録されています。短編集で続けていくつか読んでしまうよりは、短くてもゆっくり味わう、考えるにはよい工夫かもしれません。表紙の和田誠さんの絵もほんわりとした雰囲気で、本文も一部ルビ付。小学校低学年ぐらいからでも読めるような配慮がされています。もともとあまり高い教育を受けていない人にも読めるように、とわかりやすいお話として書かれた作品ですから、こういう出版の仕方はなかなか作者の意図にも合っているのかもしれません。トルストイは大作ばかりなのでまだ未読、という人もちょっとトルストイに触れてみるには手ごろな一冊。1時間もあれば読めます。
見知らぬ男に最初は腹立たしく思いながらも、乏しい食べ物を分け仕事も教える靴屋の夫婦。立派な靴を注文した帰り道に死んでしまうお金持ち。双子の孤児を自分の子のように育てる女。そこから学べるものはなにか。トルストイはわかりやすく、お話にしたてています。
訳者はトルストイに心酔し、その翻訳を一生の仕事とした北御門二郎さん。「です、ます」調のやさしい言葉の文章も読みやすいものです。裸の男を見つけた場所が「辻堂」となっていて、多分教会のお祈りをするところか像が祀ってある場所なのでしょうが、少々わかりにくい古さもあります。でもそれはこの本が1993年に刊行された「心訳シリーズ・イワンのばか」に収載されたものを再編集した、という事情もあるのでしょう。著者自身2004年に亡くなられています。あとがきの「訳者のことば」も1993年のもので、シリーズ全部に同じものが載っています。その文章も「芸術は一部特権階級の玩弄物であってはならず・・・」とはじまり、少し難しい表現が多いですが、真面目な著者をよく著した文章です。
このシリーズには「解説にかえて」を訳者のお嬢さんが書かれていて、こちらは若い読者層を意識したようなやさしい文章になっています。その中で、訳者が出会った最初のトルストイの作品がこういった民話集であったことも触れられています。その時訳者17歳。そのぐらい、あるいはもっと若くても充分読んで心に残る作品、ということがここにも示されているように思えます。
最後に20ページ余りの長いトルストイ略年表がついています。これも訳者あとがきと同じくシリーズ5巻に共通です。民話を書こうとした動機を書いた「懺悔」からの引用と、最後の家出の経緯やそのときの婦人への手紙の引用の部分がかなり長い、少し変則的な年表です。この二つは特に知って欲しい、と訳者はきっと思ったのでしょう。ぜひここも読み、著者がどのような思いで作品を書いていったかも想像してみてほしいものです。そして、まだ読んでいないなら、いつか「戦争と平和」や「アンナ・カレーニナ」も読み、その心の変化にも思いを馳せてみて欲しいです。
でも、まずはこの一冊で、トルストイのお話の世界をじっくり味わってください。この一作はちょっと宗教的な香りが強いですけれど、ね。
紙の本
難しくありません
2021/02/14 15:49
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投稿者:MR1110 - この投稿者のレビュー一覧を見る
NHK「鶴瓶の家族に乾杯」にて藤井フミヤさんが立ち寄った書店で購入した本書。トルストイと聞くと構えてしまいそうですが、あっという間に読んでしまいました。コロナ禍で読むとより沁みました。
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トルストイの易しく書かれた民話です。
字は大きいし、ふりがな付いてるし、子どもから大人まで読めます。
トルストイ年表なんかもついてて、なんだか嬉しい。
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トルストイ・というと「戦争と平和」「アンナ・カレーニナ」が有名なロシアの文豪として知られていますが、
数多くの民話もたくさん残されています。
この「人間の愛」の描かれている民話は、子供たちにもわかりやすくかかれていてお勧めです。
さて、「人は何で生きるのか」
主人公の靴屋さんは、多くの人と同じように、自分の生活のことで生きるのに精一杯でしたが、道端で寒さに震えている青年と出会い、人生の意味を考えさせられます。
人の中には何があるのか?
人に与えられていないものは何か?
人は何で生きるのか?
みなさんも考えて見ましょう。
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人はなにによって生きるかというトルストイの好きな命題の一つを扱っている。
まずしい靴屋がひろった男は何ものなのか。
そして 男は なぜ笑いもせず黙々とはたらくのか。
平易な文章で書かれたトルストイ後期の特色がよくでている。
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セミヨンは靴屋。貧しい靴屋。
ミハイルは天使。罰を受けた天使。
善なるものって何でしょう?
心静かに読んだ一冊です。
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トルストイ作、題名だけ見ると仰々しいが、中身は民話です。
宗教色強いところもあるが、もともとキリスト教の学校にいたので、抵抗感はありませんでした。考え方を深めるような生真面目な哲学本というより、ふと人生に立ち止まったとき、かるく手にとって、淡々と読むだけで癒されるような、子どもでも読める本。
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あすなろ書房/2006・5・30
人は何で生きるのか
トルストイ
訳:北御門 二郎
装幀:和田 誠
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まぁトルストイなので、民話だけど意味わからないだろうなぁと思っていたけど案の定の展開でした。民話とか童話には昔からいろいろな教育的、宗教的な意図が隠されているけど、これもその一部だと思いました。意味わからなすぎて面白いっていう点で星4つつけたいけど、もう少しメタてきな視点で冷静にみたら星2つくらいなんじゃないかな。
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「トルストイ」なら北御門とどこかで読んで、手にとって見ました。
久々、民話にふれましたが良いものです。若干、宗教観が違うので捉えにくい部分もあるかも知れませんが良いものでした。
でも若いときは読めませんね。バカにしてしまいそうで。純粋な小さき頃にふれているといい糧になりそうです。もちろん歳を重ねてから改めて読むのもいいものです。
もし読むに耐えない人やバカにするような人は何か悲しい人なんだと思ってしまいます。
子どもに読むもよし、自分で読むのもよし。
簡単ですし、考えさせられます。そして何より・・・・何か感じると思います
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愛たしかに他と比較しようがないほど、美しい。
愛万々歳と、僕もそういう人生も歩んでみたいかな。
ただ愛によって起こる争いや、愛が永遠ではないことの前提を加味すれば、なかなかこうも素直に愛を信用することは個人的にはできない。
世界中の人々がこういう価値観で、本当に愛に溢れていれば、理想的な平和な世の中になるであろう。
だが、現実には絶対にあり得ないと思う。これは絶対と言い切れる。
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借りたもの。
トルストイのタイトル通りの民話。
お人好しの貧しい靴職人・セミヨンが、冬の辻堂で助けた男――ミハイルを通して、人間が生きるために必要なことを指し示す。
それはキリスト教における愛――互いに助け合うこと――だった。
去り行くミハイルの言葉と、書籍冒頭の『ヨハネの第一の書』の引用はリンクする。
『何で生きるか』の「何」は“目的”ではなく、精神的な”糧”となるものについてだった。
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貧しい靴屋が、仕事にうまくありつけなかった帰り道に出会う、裸のおとこ、ミハイル。
裸の男など、面倒にしかならないと通り過ぎては見たものの、人が災難にあって、死にかけているのに、おじけづいた通り過ぎようとは!と引き返して男に服を着せ、靴をはかせ、家に連れて帰る。
そこから始まる不思議な寓話。
「人の中には何かあるか?」
「人に与えられていないものは何か?」
「人は何によって生きるか」
小さな子にもまるでわかりやすい、当時の教養のなかったであろう農民、貧しい家の人たちにもわかりやすい愛の物語。誰にもわかりやすい福音書のようなお話だった。
解説によると、トルストイは自分のブログ大作、アンナ・カレーニナや戦争と平和をひていし、これからは民衆とともに生きると民話を書き始めた…とのこと。
自らの贅沢な暮らしに耐えられないと家出をし、列車の中で倒れ小さな駅で天に召されたと。。
和田誠さんのイラストが、大袈裟でなく、可愛らしくて親しみやすさがあってとてもすきだ。
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2018年はトルストイの生誕190周年でもある(少しキリが悪いですが)ということで、何か読んでみようと思っていたところに出会った本です。
『戦争と平和』や『アンナ・カレーニナ』などの傑作長編を手掛けたロシアの大文豪ですが、彼の作品は読んだことが無く、その長大さに圧倒されて手が出ませんでした。
この作品は童話でボリュームも手ごろでした。
他者への思いやり(キリスト教的には「愛」)をもち、「善」を為すことの尊さを訴える作品ですが、ストーリーにも”品格”を感じることができる、決して子供だましで終わらない力を持った作品でした。
キリスト教であれ、仏教であれ、儒教であれ(そしておそらくはイスラム教であれ)、人間が社会を形成して生きている動物である以上、その生き方の理想となるべき姿は同じだ、ということを確認することができます。
人の中には何があるのか
人に与えられていないものは何か
人は何によって生きるか
自らの生き方を見つめる際に、とてもよい「問い」だと感じます。その答えは、それぞれの信仰する宗教や信念によって異なるでしょうが、こういった問いについて考えるという行為そのものが大切であるように思います。