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スマイル
2017/05/22 15:38
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投稿者:KKキング - この投稿者のレビュー一覧を見る
ビーチボーイズの未発表アルバム「スマイル」。お蔵入りとなったことでブライアンウィルソンの精神は崩壊し、以降長い混迷の時期に入った。2004年に「完成」した感動のスマイルについての手記。
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世界一有名な幻のアルバムと呼ばれるBeach Boys『SMiLE』
最大の理解者であり最強のライバルであったBeatles(特にPaul)に触発されBrian Wilsonは理想の音楽を具現化すべくスタジオに向かう・・・
当時の関係者の証言を織り交ぜつつ、SMiLE製作時(1966〜67)Brianの周辺に流れていた空気を感じることができる、ありそうで無かった一冊ではないだろうか。
2004にBrian Wilsonのソロとして完成し、とりあえず日の目を見ることになった訳だが、『SMiLE』に対しトラウマを感じていたBrianが、ツアー・メンバーや共作者Van Dyke Parks、そして妻のMelindaの助けを得ながら完成に向かうドキュメンタリーは泣けますナァ。
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2004年に聴いたときは正直いってよくわからなかったんですよ。
どうしたらこんな音楽が生まれてくるのか? っていう変わった音楽のオンパレードで。
しかしその後その断片をスマイリースマイル、サンフラワーやサーフズアップなどで聴いて(順序が普通と逆ですね)、まとまった形できちんと聴いたとき、この豊潤な世界にどっぷりはまりました。
とくに出だしの1→4の流れが好き。アメリカを現代から過去から描いてる。6キャビン・エッセンス~10サーフズアップまでももちろん素晴らしい。ジエレメンツ一群、12ベガ・テーブルズ~イン・ブルーハワイもいいし、最後はグッド・バイブレーション!というわけで、普通のアルバムの何倍も楽しめる作品だと思う。
さて本作について。67年にデビューしたドアーズは、「ビートルズよりもドアーズのほうが好きだ」と言ったとか(P223)
「アルバム『20/20』)の最後を締めるのはブライアン・ウィルソンとヴァン・ダイク・パークス作「キャビン・エッセンス」という美しいバロック調ナンバー。ゆっくりとしたピアノとバンジョーのバックにのって、ハイトーンのヴォーカルで静かに始まり、やがて一気に風が吹き込むようにヴォーカルの渦が巻きあがる。この突風のようなサウンドをつくり上げているのは、言葉を持たない人の声、同じフレーズの繰り返し、その中で時折聴こえてくる声、言葉。言葉は不明瞭だ。何を言おうとしているのか聴き取ろうと、何度も曲を止めてみたりした。ひとつの声、そしていくつもの声が交互に行き交い、圧倒されるような感情に満たされる。アルバムとしては一貫性がなく、A面はたいしたことがない曲でうめられている」(P233)
ブライアンは「スマイル」アルバム制作にとりかかる前に、コンサートを行った。「人と一対一のレベルで何かを分かち合えた喜びを知ったブライアンは、本来の気さくで素朴な顔を時折のぞかせていた。ヴァン・ダイク・パークスにしても、『スマイル』の一連の楽曲がたたえる〔平和と愛と環境〕というメッセージを広められたことにある種の安堵感を覚えたという。」(P310)
そっか、スマイルのテーマは「平和と愛と環境」なのだ!そうなのだ!
「彼はチャックベリーというよりはホーギー・カーマイケルに近い。「スマイル」でブライアンが僕に求めたのは、彼の経験外にあるものを持ち込むことだった。でもより深い部分では、彼も、僕も、二人ともガーシュインとかそういう部分を経験として持っているんだ。僕らには同じものが見えていた。byヴァン・ダイク・パークス」(P311)
以下、ショーケンさんの解説。
「やがて66年、傑作アルバム『ペット・サウンズ』を経て、本書のメイン・テーマである幻のアルバム『スマイル』の制作に取りかかったブライアンは、彼自身がビーチ・ボーイズの一員としてデビュー依頼4年の間に確立した巨大なサーファーズ・ドリームとの厳しい戦いに直面することになった『ペット・サウンズ』は既成のロックンロールの枠組みを大きく逸脱した、流麗で美しいアルバムとして、今や誰もが名盤に挙げる一枚だ。ブライアンはこの時点で世界のポップ・シーンの頂点に立ってもいいはずだった。が、まだまだ時代が彼に追いついていなか��た。続く『スマイル』の空中分解を受け、ブライアンは結局、才能を政党に評価されることなく迷走の日々へ。ドラッグ漬けとなり、一時は廃人同様の状態に追い込まれてしまった。サーフィンとサンドバギーと女のコの代わりに、彼が手に入れたのはノイローゼとパラノイアとドラッグ。以降、ブライアンは隠遁しているようなものだった。(略)20年の歳月を経て、長いトンネルを抜け、88年、初のソロ「ブライアン・ウィルソン」は、彼の才能が長い歳月を経てもまったく衰えていないことをぼくたちに重い知らせてくれる感動的な一枚だった。(P324~325)
「ビートルズを生んだイギリスに、(略)熱いまなざしを向けていた時代。しかし、そんな時代にブライアンは、あえて自分が生まれ育ったアメリカに、しかも「過去」に目を向けた。そうすることによって、当時の浮き足立ったアメリカに何か大切なものを思い出させようとした切実かつ美しい問いかけ。それが「スマイル」だった。当時は結局お蔵入りしてしまったのだが。当時のアレンジをほぼそのまま再現する形で21世紀に蘇ったブライアン版「スマイル」を聞くと、ここでは、ロックンロールの誕生を契機によりヴィヴィッドな形で発展してきたアメリカン・ポップ・ミュージックが、ブライアンとヴァン・ダイクという希代のクリエーターの感性を媒介に、たとえばウッディ・ガスリーやレッドベリー、フォスター、あるいはクラシックの文脈で語られるゴットシャルク、フライ、コープランド、ガーシュイン、アイヴス、バーバー、ケイジらにも通じる、抗いようのないアメリカン・
ノスタルジアと有機的な脈絡を結ぼうとしていることがよくわかる。