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紙の本
尊敬はします。昔の児童文学者はこうだったんだ、と感心もします。その上で、私は楽しめなかったことを素直に書いておきます。大上段に構えた児童文学の世界、貴方はお好き?
2006/11/10 23:44
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者のことを全く知りません。この本を手にしたのは、ただこれが晶文社から出されたものである、それだけです。でも、それって大切なことですね。私にとって、晶文社本というのは、ブランドなんです。講談社や新潮社といった大手とは違います。大手のブランド力は、出版物の中身を保証しません。だから、私はそこの本を選ぶ時は、著者名や広告で判断します。
自然と有名な作家、既に読んだことのある作家、或は噂に聞いていた作家と、要するに何らかの形で情報がインプットされている作家のものを選ぶことになります。ところが晶文社のものとなると、全く知らない作家でも、選んだからといって失敗しない、という気がします。まさにブランド力で、そういった読書のよさは、未知の世界に触れることができることです、
ま、読み終わってから神沢の著者略歴などをみれば、私は読んでこそいませんが、児童書の世界ではかなり有名な人で、作品なども図書館で見かけた記憶があります。ただし、その書名に魅力を感じたか、といえば一冊も手にしていなかったことでもお分かりのように、現代受けするかどうかは疑問ではあります。カバー折返しの内容案内は
「童話や絵本、詩など幅広い創作活動を行い、気がつけば半世紀がたちました。80歳を越えましたが、創作意欲が衰えることはありません そんな神沢利子さんが、折々に綴ってきた創作、エッセイを一冊の本にまとめました。書き下ろし二本(「守護霊さま」「同じうたをうたい続けて」)を含めた21本の小品が並んでいます。神沢さんが描いた絵本も顔をのぞかせています。神沢さんの足音が、ページのあちこちから聞こえてきます。生きていることの喜びが伝わってきます。」
で、カバー写真・本文写真は坂本真典、ブックデザインは坂川事務所です。
目次と簡単な内容を書いておけば
Ⅰ 川のうた :1973〜81年にかけて書かれた小品四篇。うち三篇が雑誌『アルプ』発表
Ⅱ 草・虫・人生 :四十代に書かれたものから書下ろしまで、11篇のエッセイ。
Ⅲ ほそ道のうた :1975年に雑誌『母の友』に連載された絵本。カラーで、絵も神沢が描き、字も本人のものが使われている
Ⅳ 同じうたをうたい続けて:六篇のエッセイで、主に自分の家のことが描かれる。特に古書店での祖父、曽祖父の名前の書かれた本との出会いは、縁(えにし)というものを感じる
補筆
あとがき
となっています。一見して特長的なのは、Ⅲ ほそ道のうた、という絵本の部分でしょう。絵もなかなか達者で、思わず手書の字も読んでしまいます。ともに神沢の手になるものだそうですが、トールキンやバーカーのイラストを思い浮かべてしまいます。ただし、字が色つきなので、結構読みにくいといった感がありますが。
小説部分は、神沢が1924年生まれであることを納得させる、いかにも児童文学といった香りのもので、愛らしいとか、楽しいといったものであるよりは、人とは何か、を考えさせるものです。今の子供がこれを喜ぶかどうか、私には全くわかりませんが、たしかに、こういうお話が児童小説だった時代があったことは理解できます。
でも、個人的に面白かったのは、Ⅳ 同じうたをうたい続けて、です。故郷と遠くはなれた場所で、曽祖父、祖父の思い出の品と出会う、それも時間をおいて何度か、というのは奇蹟に近いことではないでしょうか。ウソ、って思わず呟いてしまいます。他には、奥付の前頁に(本文写真は、神沢利子さんの日々をいろどる小物たちです)の言葉とともに掲載された二葉の写真が好きです。
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