紙の本
個人的には、前の巻より今回のほうが楽しめたかな、って思います。それは、なんと云っても芥川・直木賞に話題を絞ったこと、そしてゲストの島田雅彦でしょうね
2006/10/15 21:55
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
カバー。装画 天明屋尚、ブックデザイン 鈴木成一デザイン室とあります。鈴木成一デザイン室については、今までも様々な機会で触れてきましたので、今回は装画の天明屋尚について書きましょう。彼の名前は知らなくても、ついこの間終った2006ドイツWカップの公式ポスター、あの中で鎧兜を身に纏った男性がボールを蹴っている、あれを描いた人、といえば、ああ、と思う人も多いでしょう。
で、実はこの10月、その天明屋尚の個展が中目黒にあるミズマアートという画廊で催され、そこまで追っかけて新作を見てきたのですが、凄かった。大きな作品が多かったのですが、小さなスケッチも含め全てが売約済みか、予約済み。杉かなにかの戸板を利用した大きくて重そうなものも行き先が決まっているから、人気作家というのは凄いものです。
閑話休題、で、目次ですが
はじめに 豊崎由美
ROUND1:文学賞に異変!?[公開トークショー]島田雅彦×大森望×豊崎由美
ROUND2:’04〜’06年、三年分の選評、選考委員を斬る!
ROUND3:UNDER30歳の新人作家、有望株は?
ROUND4:メッタ斬り!隊 活動の記録
ROUND5:決定!第一回「文学賞メッタ斬り!」大賞
おわりに 大森望
索引
巻末特別付録 ’04〜’06年版・文学賞の値打ち
となっています。ちなみに、PARCO出版がbk-1に寄せている案内書評は、目次が実際のものと違います。引用しますと
【目次より】
・座談会:大森望×豊崎由美×島田雅彦
・選評メッタ斬り!
・文学賞を賑わすであろう、これからの作家をメッタ斬り!
・メッタ斬り!隊活動記録
・第0回メッタ斬り!大賞発表!?
・文学賞の値打ち(巻末)
です。ROUNDという言葉も欠けていまが、そりゃないぜ、って思うのが・第0回メッタ斬り!大賞発表!?ですね。実際にはROUND5:決定!第一回「文学賞メッタ斬り!」大賞。第一回と0回では全然違う。bk-1では訂正を受け付けているんですから、書き放しにしておかないでフォローしておけばいいのに・・・
で、今回の特徴は、なんといっても芥川・直木賞に絞って、前巻以上に裏を明かしたことでしょう。そして、それに寄与したのが島田雅彦であることは間違いありません。その鋭い舌鋒は、ROUND1だけではなく、ROUND2にも及び、実作者ならではの切れのいい発言、思わず快哉を叫びたくなるほど。
でも、島田の芥川賞受賞に反対しつづけたというY氏とは誰なんでしょう?Yが頭につく有名作家なんって、いないはずなんですけど。ま、そのレベルの作家が堂々と名を連ねるというのが、政府の有識者会議とか芥川・直木両賞の限界なんですが・・・
ほかに面白かったのは、ROUND2:’04〜’06年、三年分の選評、選考委員を斬る!では、自分の評価とプロとの読み方の違いを楽しみました。中でも最も共感したのが古川日出男『ベルカ、吠えないのか!』の評価です。古川作品を楽しむには本当の文学的修練や、歴史・経済に対する広い視野、或はユーモアを理解する力が求められて、これを落とすっていうことは選考者の無知・無能をさらけ出すわけです。でも、大森、豊崎両氏はここのところをしっかり押え評価していた。古処誠司についての評価もしかり。この二人にはいつか受賞して欲しいものですが、渡辺先生やツモ爺が選考委員やっているうちは無理かな。
ROUND3:UNDER30歳の新人作家、有望株は?です。
金原ひとみ、島本理生、佐藤友哉、青木淳悟、三並夏、水田美意子、森見登美彦、滝本竜彦、綿矢りさ、白岩玄、豊島ミホ、辻村深月、の名前があがっていますが、私が読んでいるのは島本理生、佐藤友哉、青木淳悟、綿矢りさ、白岩玄、豊島ミホと約半分。その中でも楽しめたのは綿矢りさ、豊島ミホでした。
紙の本
文学賞に影響を与え続ける「メッタ斬り!」
2006/09/01 13:45
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投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
ネットのあちこちで芥川賞・直木賞の批評を続けている大森望・豊崎由美。今は日経BP社のサイトですね。
あの即時性はすごい! おふたりとも通常の連載をこなして——ですからね。
その批評を中心に収録。さらに島田雅彦を迎えて、文学賞についての公開トークショーを収録。
島田雅彦っていいわ。芥川賞に落ちまくったハンサムな作家(だから選考委員に嫌われた?)としか記憶していなかったのですが、批判の視線が鋭い。権力に媚びない。
それから独特の言い回し。「この小説にはそれなりにコストはかかっている」。
情報量、取材、言葉選び、そしてマーケティング、さらに文学性も含めて指している。
前後の文脈もあるけれど、「コスト」という経済用語を使ってすべてを言い表してしまう。これがトークショーや対談の中で出てくる。
私好みのセンスです。
一方、全体的に、ここ2、3年の文学賞や受賞作、受賞作家を何度もまな板の上に載せて、批判しているので、パワーダウンの気配は否めません。
が、トヨサキ社長が小説推理新人賞の選考座談会がおもしろい、と書いていて、思い出しました。普通、文学賞の選評を雑誌掲載するのですが、この新人賞は選考座談会が載ります。選考委員は石田衣良・岩井志麻子・戸梶圭太。
石田衣良が最終選考作を褒めているようでいて、結局は自作がいかに優れているかをほのめかす。
岩井志麻子は「もう少しその部分で私を興奮させて欲しかった」とアヤシゲな発言。
戸梶圭太は「僕の言いたいことは石田さんに言われちゃったから」とスネる。
ほんと、一読の価値あり。
「小説推理」8月号に掲載されています。
本書が文学賞に与える影響は計り知れない。なにしろ直木賞選考委員が態度を改めています。
本書では、島田雅彦が「いくつかの新設文学賞の受賞作を読んでみた結果も、これは取り替え可能かな、っていう気がしました」と言っています。読者や書店員など民主的な選考基準、選考方法などから、その賞独特の作品はなく、さらに作品そのものも誰が読んでも感動するもの、涙ものに集約されていきます。
さて、次はどんな文学賞が現れるのか。既存の文学賞はどうなるのか。
興味はつきません。
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やっぱ面白いっすね。ユリイカの対談と芥川・直木賞のやつは既に読んでたけど。これを読んで思うのは、旧来の文学賞と、わけの分からない人たちが作っている新設文学賞があって、で彼らはそのどちらとも違う文学賞を念頭に置いているからこそ、こういう話ができるわけでしょう?じゃあ、その想定された文学賞はできないのかってことですよね。この本が本屋でものすごい平積みになっているのを見ると、できるような気がしないでもないんだけどね。どうかね。その想定された文学賞を支持する読者って多くないの?あんまり読んでないけど世界文学にひれ伏したくなる僕は間違いなくその一人で、そして僕の周りの友人達は皆そうなんだけど、それは変わり者なのかしら?柴田元幸が選考委員の文学賞とか、考えただけで萌え〜じゃね?公募新人賞じゃダメかもなあ、そんな水準の作品がそうそうあるわけねえし。でもなあ、「降りていく選考」になったら柴田ブランドも揺らぎそうだし、難しいよね。いいのがないと、川上弘美エピゴーネンとか小川洋子エピゴーネンとかに受賞させて、いやー予定調和的なだるい賞になりかねない。でも、理想の文学賞の選考委員を考えるのって楽しいよねえ。
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小川洋子 博士の愛した数式
飛浩 隆 象られた力
戸松淳矩 剣と薔薇の夏
橋本治 蝶のゆくえ
辻原登 枯れ葉の中の青い炎
絲山秋子 袋小路の男
?野頼子 金比羅
山田詠美 風味絶佳
堀江敏幸 雪沼とその周辺 彼岸忘日抄
松浦寿輝 半島
矢作俊彦 ららら科学の子
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文学賞メッタ斬りが帰ってきました!前作でなんとなぁく知っていた文学賞の傾向を、楽しく知ることができました。今回は賞の説明がない分、候補作・話題作の書評が多いです。でも、書評って難しいですよね。好みってあるし、好きじゃないジャンルの本を読むのってつらいし〜。大変な作業をありがとうございます!著者お2方&下読み担当の方々!これを読んで、また読みたい本が増えました。楽しみだわ♪
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金原ひとみはそんなに成長しているのか!?
「蛇にピアス」と「アッシュベイビー」しか読んでないから、そうは思わんかった。
これから読んでみようっと。
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舌鋒激しくリターンズ。島田さんの乱入(正式に座談会をしている)が、新しい世界を広げてたかも。文学賞の選考会なんて、実際のところほとんど全然わからないし、信用していいのかなぁと思ってたところもあったから。島田さん、そんなに激しいことを言って大丈夫なのだろうか…。それがおもしろいんだけど。けっこう読んだ本ばかりが取り上げられていて、(そう読むのか、そうか〜)と思って読んだり。それにしても、金原さん絶賛だなぁ。デビュー作しか読んでないんだけど、読んでみ・・・ようかな。
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そしてリターンズを読み終わった。
おかげでまた読みたい本リストが出来た。わ〜い、しばらく本読みたい欲求薄れてたけど、これで復活だー。
この人たちは、バッサバッサと受賞作達を斬り捨てていくけども、とりあえず私の好きな人たちはそれなりに認めてくれてるようで安心(笑)
そして真っ当な本読む人とかからは黙殺されてるようなベストセラー本、例えばセカチューとかもちゃんと俎上に載せてクソミソに貶してくれるので、気持ちがいいです。
読みながら、きっとあの人(書けないよっっ)のあの文章とかもクッソミソに貶してくれるんだろうなあ〜と微笑みながら思いました。
そういえばテルちゃん(私は長いことテルテルと呼んでいた)では「星々の悲しみ」がBLチックで(余計なコメント)好きです。あと「道頓堀川」も結構好き。「春の夢」も結構好きなやつだった気が・・・。
(ひっそり追加)
そういえば豊崎さんが、「人のセックスを笑うな」(これそれなりに好きよ)のとこで、相手の男の子を岡田准一あたりを想定して萌え萌えして読んだらいいよ、と書いてらして、オオー!准ちゃん豊崎さんにもちゃんと認められてる!!という感慨にふけった。っていうか、今更耽るまでもなく准ちゃん大人気押しも押されぬ有名俳優様ではないか。
あと豊崎さんの語尾がやたらと「〜なんですの」となるのはやめて欲しいなーと思ったんですが。ちょっとくどい。
あ、あと直木賞の「空中ブランコ」が大絶賛なんですねえ。私アレ読んで、あのキャラ全然ダメだったんだけどな・・・。元ネタが黒木瞳じゃーん!とかってバレバレ過ぎて、あんまり練れてないように思ったんだけど・・・。いいのかーそうなのかー。まあ、基本的にコメディとかあんま読んでないからなー私。町田康も??だもんなー。
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図書館にて。好きな作家がこき下ろされていたらとどきどきでしたが大変好意的な評になっていて胸を撫で下ろしました。
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リターンズにはなんと座談会という形で島田雅彦が乱入。そこまで言っちゃっていいのかと不安になってしまうくらいに、島田さん激しすぎて面白すぎて、あぁこの本買って良かったな〜と。第一弾は賞の説明が多かったけれど、今回は直木賞・芥川賞の予想と結果に対するコメントの収録が多くを占めていた。うちも135回の文藝春秋祭りには驚いたので、大森・豊崎両氏のお怒りはよくわかる。さすがに三浦しをんの直木賞には違和感が。っていうか、殆どの人が同じようなことを思っていると思いますが。あと、W杯形式で両氏が大賞を決めるっていう企画もあるんですけど・・サッカーに興味がないうちには何がなんやらもうサッパリ。作品を国にまで見立ててしまい、点数の入れ方も滅茶苦茶で、もういったい何をどう勝負しているのかよくわからなくなってしまった。とりあえず第一弾よりはパワーダウンした感は否めないかな。
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芥川賞・直木賞を中心とする各文学賞の候補作品を取り上げ、(かなり毒舌に)批評している本。
各賞の裏側を見れたような気がして面白い本。
あと、自分がこれから読む本の指標にもなる。
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前作に引き続いて文学賞の舞台裏が面白おかしく読める本。
ただ両氏の毒舌トーンが代わり映えしないんで前作ほどの新鮮味はないかな。
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この作家(作品)いまひとつ・・・と思っていたものがちゃんとけなされていると「我が意を得たり」の気分。
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前作は、よくぞ言ってくれましたぁ!という痛快さと驚きとで、涙モノの登場で、今回も、その勢いはやまず。(^o^)丿芥川賞、直木賞では、選考委員の評が読みたさに、文藝春秋、オール讀物を買っていたのですが、その時に感じる、なんか違うんじゃないのぉ・・・が、ばっさばっさと斬られて、もう、最高に気持ちいい!!そもそも、ノミネートされる段階から、???と思うことがあって、でも、私みたいな素人が言うことじゃないんだろうな、というところを、しっかりバックアップしてもらえるのも嬉しいです。取り上げられた作品のうち、既読はごくごく一部で、世の中には、こんなに語るべき!本があるんだ!と思えるのがまた§^。^§ §^。^§。また、数少ない既読のものも、そっかぁ、こういう読み方もあるのね・・・と。^^;しかも、毒舌とは言いながら、悪口じゃないところがいいなぁ。お二人の読み方、好感度が違う点も面白いし。これは、常に本棚に入れておいて、一冊読むたびに、どれどれ・・なんて手にとりたい本ですね。それにしても・・・選考委員の先生方!それぞれのお好みが入るのはわかりますけど、もう少し柔軟な頭で、っていうかせめて、全作読んでから選考の場に臨んでくださいませ!!
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今後の読書の参考にと思って楽しく読みました。豊崎さんは斬新な手法のものに高評価をつける傾向にあるのだなあと。あと、大森さんの本名にびっくり。「大森望」が清原なつのの登場人物からきているとは、びっくりです。清原なつのが読みたくなった。この季節だと金木犀で枕をつくるあの話がいいにちがいない。