紙の本
熱き男たちの「滅びの美学」
2010/01/10 16:52
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:yjisan - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国では京劇やTVドラマの定番として「三国志」や「水滸伝」に匹敵するほど有名だが、日本では全く知られていなかった歴史浪漫「楊家将演技」を北方謙三が大胆に翻案、原作の妖術・仙術色を払拭して血生臭くも骨太な大河小説として現代に再生させた。従容として死地に赴く男たちの覺悟は哀切を誘う。
舞台は10世紀末のシナ。宋に帰順した名将・楊業は最前線である代州に配置され、中原を狙う遼と対峙していた。精強な騎馬兵を擁する遊牧民族国家たる遼に対抗すべく、息子たちと共に兵を鍛え上げる楊業は、卓越した指揮によって何度も遼軍を打ち負かす。苦戦する遼は白き狼と呼ばれる堯将・耶律休哥を起用し、楊家にぶつける。楊業は前方の遼軍と戦う一方、戦争に無理解な文官や楊業の軍功に嫉妬する宋生え抜きの将軍たちといった後方の味方に煩わされ、思うように兵を動かすことができない。それでも根っからの軍人である楊業は黙々と眼前の敵を破っていく。凡将と弱兵ばかりの文治国家・宋にあって、楊一族は文字通りの孤軍奮闘を強いられていた。
そして宋の皇帝・太宗が兄・太祖以来の悲願である燕雲十六州の奪回を目指し、ついに親征の軍を起こす。いよいよ運命の決戦が行われようとしていた・・・・・・
緻密な戦略・戦術が駆使される合戦模様はまさに血湧き肉躍る、というやつだ。英雄の超人的武勇が極端に強調される活劇テイストは一切無く、兵種ごとの役割を弁えて現実的・論理的に戦闘が展開される。「戦争」に対するリアルな眼差しは、軍事調練の場面に多くの紙幅を割いている点に象徴的である。
また多くの人物を登場させつつも、1人1人の個性を丁寧に描き、内面を浮き彫りにすることに成功している。北方の無駄を削ぎ落とした簡潔な文章が、茫漠とした荒野で馬を疾駆させる無骨な男たちの不器用な生き方に良く合致しており、魅力的である。
真骨頂は、主要人物が死んでいくシーンで、実に淡々と描かれる。過度なドラマ性を排すことで、かえって悲劇性が増し、言いようのない寂寥感と、見事な死に様が強調されるのである。この辺りはハードボイルド出身ならではの手腕と言えよう。
電子書籍
無念、ただそれだけ。
2020/03/19 21:20
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投稿者:とりこま - この投稿者のレビュー一覧を見る
宋軍(楊家軍)と遼の総力戦、合戦シーンは圧巻で手に汗握る。楊家軍の武将たちだけではなく、遼の耶律休哥が誇り高く魅力的で物語をより高めている。だからこそ、宋軍の惰弱さ、小ささが際立ち、ラストシーンは無念さ、悔しさ、喪失感が押し寄せてくる。
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北方謙三さんの本を一度は読んでみたいと思っていた時に出会った本。
一発で惚れました。
登場人物がかっこよすぎる。
一人一人にとても個性があり、立っていてこの上なく素敵でした。父、長男、四男、六男、七男が主軸として書かれているのですが、できれば他の兄弟達ももっと見て見たかった。
中国ではメジャーな話のようですが、日本ではあまり知られていない。それってとてももったいないと思う。
続編も今年出るようなので、是非是非読もうと思っています。
とてもワクワクして読めた作品でした
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北方水滸伝好きは必読の楊家将です。最後は涙なしでは読めません。見方に裏切られても死に際まで鮮やかです。この後「血涙」に続きます。
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「楊家将 下」北方謙三:PHP文庫
宋建国の英雄楊業率いる楊家の活躍を描く「楊家将」の下巻。
攻めても守っても常に闘いの中心には楊家軍がいた。
宋主悲願の燕雲一六州奪還のため再度親征が行われる。
苦境の中で楊業は孤立した宋主を六郎に託し
起死回生の策で耶律休哥を罠に誘い込むが…
楊家軍が半壊したところで物語は終わる。
…。
そしてこのタイミングにハードカバーの
『血涙−楊家将後伝−』が出版。
…。
買うさ。
買いますともさ。
…。
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遼との戦いで、次々に死んでいく息子たち。
北方謙三の「死の描写」と「戦いの臨場感」は天下一品。
吉川英治文学賞作品。
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敵国の遼の名将耶律休哥と楊家との戦いのシーンは圧巻。最後の戦いは楊業とともに悔し泣きしました。味方に裏切られても最後まで戦い抜く姿。最高です。ひとり遼に取り込まれた四郎がどうなったのか・・気になるので血涙も読みたいと思います。
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そんな終わり方かよ・・・って感じです。
不満というわけではないけど、無念です。と思ったら、続編があるんですね。
どうなるのか楽しみです。
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戦でのかけひきや、めまぐるしく変わる戦況への記述が多く、戦の様子を臨場感たっぷりに表現している。
楊業の武人っぷりは上巻に続き変わらず。子供達は成長し、楊家の武人らしく戦に臨んでいる。
また、楊家以外の登場人物の多くも生き生きと描かれ、作者の愛情が殆どの人物に込められているように思える。
未解決の話があったが、それは『血涙』に続くらしい。
良い話だったが、個人的には男くささがやや濃すぎる気がする。
作者は、元々、こういう雰囲気の話を書く人だとは思うけれど。
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中国では『水滸伝』並みに人気のある物語なんだって。日本では紹介すらろくにされていなかったこの話を、北方謙三が小説の題材として選んで書いたのが本作。
オトコを描かせたら右に出るものはいない(個人的感想)著者が書いたのだから、これには眩いほどのオトコが満載で萌えます。
この一族をずっと追いかけて欲しいくらい。
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文庫で上下巻というコンパクトさながら、なかなか読み応えがありました。キャラクター性を抑え気味にした感じで、三國志とは別の意味で燃える。ただ、最後が悔しくて悔しくて…(苦笑) 本来の楊家将からはだいぶ離れた「北方オリジナル」な部分が多いものの、物語として成功していると感じました。余談。私は京劇・楊家将の「三岔口」が好きですが、北方だとそんな時期まで書いていませんね。
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楊家・・・。すごいです。もう男の中の男って感じ!!
それなのに、ハンジンビ!最低です!!もう許せないです(><)
最後がすごく悲しい終わりかただったんだけど、読んでよかった。
それにしても・・・四郎はどうなるんだ???
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2010.1.22読了。
次第に白熱していくのが面白かったけど、最後がちょっと。
原作は続編があるらしい。
そっちの方が面白そう。私好みかも。
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まさに漢。死に様が最高でした。漢とはとかくあるべきか。学ばせてもらいました。ラストに賛否両論ですが、私はこれでよかったかなと。個人的に延平が好きです。
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【なぜだ、なぜいない。われら楊家軍、死以上の苦しみで闘い抜き、遼軍のすべてを陳家谷に引きこんだというのに。】
名言というよりも物語の流れから最後はかなりぐっときた。
宋と遼の大きな合戦。一枚も二枚も上手を行く遼。そして起死回生の一打を楊家軍がうつ。結末はいかに。
上・下巻と水滸伝に比べて短いけれど話が無駄な描写がなく話が凝縮されていてかなりおもしろかった。