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紙の本
企業経営者の資質とは何か?それを改めて考えさせられるモデル小説。
2007/07/01 21:20
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ドン・キホーテ - この投稿者のレビュー一覧を見る
人の噂も75日とはよく言ったものである。この年とその前後には大型倒産が集中した。山一證券、北海道拓殖銀行など多くの馴染みの大企業が消えてしまった。しかし、我々はもうあの年のことを忘れかけている。
本書は山一證券が含み損失を抱えて、ついに自主解散するまでの物語である。野澤社長が涙ながらに、「社員は悪くありません」と明言した姿は、今も印象に残る。野澤氏は前会長、前社長の後を継いで社長に就任したわけで、すでに含み損失は一千億円を越えており、事実上経営は行き詰まっていた。
そういう意味では後始末を任されて、貧乏籤を引いた一人である。この小説によると含み損失の存在も知らされていなかったそうだ。
主人公は野澤社長をはじめとする経営陣ではなく、総務部長に据えられた一山一マンである。こういう場合の総務部長はけっして良い役回りではない。総務部長だけではなく、自社の株を買っていた社員は、その財産がすべて紙屑となってしまったし、明日からの収入の道が消えてしまったのである。
次々に同僚が、社員が消えていく中で後始末をしなければならない悲哀を描いている。実話に基づいているので真に迫っている。自主解散なので、最大の難関は株主総会を開催してその承認を得なければならない点にあった。
実体のない会社ではあるが、まだ株主は大勢いる。これらを説得して多数に賛成に回ってもらわなければ宙に浮いてしまう。
山一證券といえば、昭和40年代にやはり破綻して、日銀の特融を受けて何とか立ち直ったという履歴がある。そのときに助ける必要がなかったのだという意見もあるようだが、会社の経営とは難しいものだ。経営陣は過去の経験を知識としては知っていても、その教訓を生かせず、損失の膨張を食い止めることができなかったわけである。
株主の損失もさることながら、大勢の社員が財産と夢、希望を奪われて市井に放り出されてしまったのである。拱手傍観していた経営陣は、その責任をどう感じていたのだろうか? 本当にその任にふさわしい人材だったのだろうか? 本書を読みながら、会社経営者に求められる資質について考えさせられてしまった。
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