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文体は少々古臭いが、江戸時代に算数のすばらしいセンスと才能をもつ少女を描いた視点が、他の時代小説と異なり面白かった。ルビがふってあるので小学校高学年なら充分読める。
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先日、テレビで「和算」を外国人に紹介する番組があった。和算は江戸期に発達した日本の数学。テレビによれば、今で言う、懸賞クイズのようなものもたくさんあり、巷では算術指南の看板を掲げるところもたくさんあったようだ。また、新たな問題を創った際には、算額という大きな絵馬のようにして、寺社に奉納することも良く行われていた。勉学の成果を神仏に感謝する、と言うわけだが、実際には「どうだ、スゴイだろう」という自慢だったらしい。
この「算法少女」もこの算額奉納の場面から始まる。
同名の、安永4年に刊行され、今では国会図書館などに僅かに残るだけになってしまった和算書「算法少女」をモチーフにした児童書であるが、当時の様子が生き生きと描かれており、思わず、算額探しの旅に出たくなってしまった。
また、この本は、絶版になったものを、読者と関係者の努力で版元を変えて出版されたもの。そういう成立過程にも感じるところが多々ある、良書です。
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児童向けなのかな?もう少し江戸時代の数学について触れられても良かったなーと思いつつ、とても面白かったです。
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江戸時代の数学のデキる少女の物語。数学嫌いでも問題なく読め、行間が広くあっという間に読めてしまう児童書。物足りない読後感。もっとこの数学少女を堪能したかった。
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「町娘あきは、ある日観音様に奉納された算額に誤りを見つけ声をあげた・・」、書店レジ前に平積みにされるような一般向けの本ではないだろうと思い、目を疑いながら手にとった。
江戸時代、日本人の算数への意欲とレベルは世界一を争うほどの実績だった。子供たちが目にする本の表紙には、「一、十、百、千、・・・京、垓、・・・無量大数」の単位が書かれ、算法の本は多数出回り、算木を用いて、Xの8乗からXを求める難解な計算なども行っていた。そして、難しい問題が解けると、神社にその解答を算額として奉納するという熱狂ぶりだったのだ。この事実はほとんど知られていない。私がこのことを桜井進先生から伺った時には本当に驚き、そして感心してしまった。が、まさか、その算額を扱った本があるとは思わなかった。
本書では、江戸時代に盛んであった和算の話を背景にストーリーが展開される。あきが子どもたちに九九を教えている途中、こんな質問をするシーンがある。「ある長者が下男になんでも望むものを申せといった。下男は米1つぶをついたちからおおみそかまで毎日2ばいにして、くださいといった。これを聞いた長者はおおいにわらった」。---子どもたちも、1つぶ、という響きに笑うが、やがてそろばんをはじいて20日目には524288つぶ!と驚き、「数って、こわいんだねえ」と気づくのである!
おそらく現在、多くの日本の小学校教育ではこの計算は扱わないだろうと思う。電卓なしでは答えが出ないからだ。しかし、「数ってこわいんだねえ」という驚きが出たこんな授業を、ぜひ現在の小学校の教科書にも取り入れてほしいものだとも思ったりするのだ。江戸時代の和算は、どれもパズルのように豊かで柔軟で面白いのだ。日本の重要な歴史遺産である。
本書は、数学の教師などの大いなる声によって絶版から復刻された。算数本のブームもあるだろうが、この思いが、広く日本に届くことを期待する。
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タイトルがイケてないんとちゃうかと思ったが、実在の江戸時代の文書とその著者の一人である少女を題材に書かれた小説とのこと。
今では算数•数学と一括りにしてる教科だが、かつてはいくつもの流派にわかれていた立派な学問だった。
考えてみれば、アルファベットや記号を用いた数式が日本に昔からあるはずがないんだよな。
いつの世にも人が考えつかない事を突き詰める人がいて、まだ日本にもたらされていない数式を日本人なりの表現で解明していた人たちもいた。
正解のない問題に挑み続けるようなものだったのかなと想像してみる。
文体は児童向けだが決して幼稚な内容ではなく、楽しめた。
2012年2月29日
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永和時代に実際に発刊されていたらしい算術の本に着想を得て書かれた、時代物の小説、というか小話くらいのボリューム。
算術が得意な町娘が、ひょんなことからその噂がお殿様の耳に入って、、、っていう筋なのだけど、
考えると深いなってこととか、素直な目線とかが、新鮮に真っ直ぐ存在していて、嫌味が無く、素直。
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作者は元教師で児童向け文学作家、というだけあって
スラスラと読みすすめられる、やさしい文体です。
江戸時代が舞台となっていますが、
文章にはひらがなが多く、難しい言葉は算数用語だけ。
小学生でも分かりやすい作品だと思います。
挿絵がなんとも味があってかわいらしいなぁと思っていたら
挿絵を描いた箕田 源二郎さんは
いわさきちひろさんと縁のある方でした。
ストーリーがとりたててすばらしい、ということはないのですが
江戸時代に「算法少女」という数学の本を出版した女の子がいた、
という事実に基づく話であることが驚きです。
あとがきでは、一度絶版となってしまったこの作品を
復刊させるにあたってのご苦労が述べられています。
数学関係者から、復刊を望む声が多くあったにもかかわらず
当時、出版社がなかなか復刊にGOサインを出さなかったそうですが・・・
私が購入したもので十八刷。
当時の担当者は今頃くやしい思いをしているでしょうね。
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将軍家治時代の江戸を舞台に、和算を巡って少女が活躍する児童文学。
とりあえずタイトルにキュンときますね。そして、随所に挿入されるイラストもまたキュートで好し。
もちろん普通に小説としても面白いですよ。
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うーん。なんとなく面白さがピンとこないな。当時の算学に対する世間の認知度みたいなものは非常によくわかりましたが、その分主人公であるあきの心情みたいなものはえらくさっぱりとしている気がする。
あとがきで知ったんですが実際にあった史実を下敷きにしていたんですね。「算法少女」という本も実際にあった、と。
無理に史実に沿わせようとしているのかちょっと話が無理や知なところがちょっと気になったなあ・・・
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算法について詳しい解説などが載っていると思いきや、算法好き父娘の和やかストーリー。
個人的には思いがけず、いいお話でした。
なんだかんだ算法云々より、主人公の あき は出来た娘だね。
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面白かった!
『算法少女』は、実際に江戸時代(安永4年:1775年)に出版された算法の本の題名。長い間、この本の著者が誰なのかは分からなかったが、昭和初期の研究で、作者は千葉桃三という医師らしいこと、そして娘のあきが父を手伝ったのではないかということが分かってくる。それでも、なお多くの部分が謎として残されている。200年前に出版された『算法少女』を底本として、著者の遠藤寛子さんが謎の部分を想像力豊に埋めるように児童文学に仕上げた。
著者の遠藤寛子さんは三重県出身の児童文学作家。小さい頃にお父様から『算法少女』の話しを聞いたことがきっかけとなり、この本を書くことに至っている。そういう意味で、お父様への気持ちもこの本には込められているのだろう。
九九の歴史を紐解くと万葉集の時代にまで遡ることことか、「長者の米粒の問題」や、円周率を無限級数で求めていたことなどが登場し、日本の算術の歴史も感じられて興味深い。
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(2012.05.24読了)( 2012.02.03購入)
この本の単行本が刊行されたのは、1973年10月です。1974年に、サンケイ児童出版文化賞を受賞しています。その後品切れとなり、復刊が待たれたのですが、なかなか果たせず、2006年になってやっと文庫で出版され、話題となり、よく読まれたようです。
文庫で1000円弱もするのに、すごいことです。
『算法少女』というのは、もともと江戸時代に出版された「和算」の本の題名とのことです。その本の作者は、長い間不明だったのですが、数学史を研究した三上義夫さんによって、千葉桃三という医師とその娘アキではないか、ということに落ち着いた、とのことです。
遠藤寛子さんの『算法少女』は、この千葉アキさんを主人公にした小説です。子供向けに書かれた本ですので、どんどん読めます。
和算についての難しい話も出てきませんので、算数や数学が嫌いな人でも大丈夫です。
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「おあきちゃん、算額だってさ」
「ねえ、こんなへんてこな絵でも、おあきちゃんにわかるの。あたいたちにおしえて」
子どもたちは、仲間のうしろにたった「あき」とよばれる少女を、まえへおしだした。
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【目次】
はじめに
花御堂
壺中の天
手まりうた
九九をしらぬ子
雨の日
縁台ばなし
わざくらべ
まね
オランダの本
わたしの本
決心
あたらしい道
江戸だより
ちくま学芸文庫版あとがき
●男女・身分を超えて(195頁)
女であれ、男であれ、優れた才を持っている人は、だれでも同じように重んじられなければならない。―それを、どうです。今この国では、どんなに優れた才を持っている人でも、身分が低かったり、自分たちの仲間に入っていないと、その才能を認めようとしない人が多いのです。女の人を一段低く見て、男にはとてもかなわないという考え方も、同じことです。
●算法の世界(196頁)
いったい、算法の世界ほど、厳しく正しいものはありますまい。どのように高貴な身分の人の研究でも、正しくない答えは正しくない。実にさわやかな学問です。断じて遊びなどではない。それを、この国では、一方では算法を金銭を数える道につながるとして卑しむかと思えば、また、単なる遊び、実利のないものとして、軽んずる風がある。
☆関連図書(既読)
「円周率を計算した男」鳴海風著、新人物往来社、1998.08.30
「算聖伝 関孝和の生涯」鳴海風著、新人物往来社、2000.10.30
「『塵劫記』初版本」吉田光由著・佐藤健一訳、研成社、2006.04.20
「和算を楽しむ」佐藤健一著、ちくまプリマー新書、2006.10.10
「天地明察」冲方丁著、角川書店、2009.11.30
(2012年6月5日・記)
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少年少女向けの歴史小説で、一気に短時間で読み終わるボリュームですが、かなり楽しめます。
なにより、「算法少女」という同じ題名の和算書が安永四年(1775年)に実際に出版されていたこと、そして著者が町医者とその娘であることを知ることができたのは大きな喜びです。日本では、明治維新前にも女性が数学を学び、本まで出していたのです!
幕末に日本を訪れた西洋人が、日本女性の学識の高さに驚いて「中国女性よりも進んでいる」と言っていたことを思い出しました。
コピー機のない時代に、国立国会図書館で原書の復刻版を薄紙に書き写した著者の情熱と思い入れ。物語りも、読む人にわかりやすく書かれている温かさを感じました。
また、素敵な挿絵が豊富に、ほぼ4ページに一枚の割合で入っていて、イマジネーションが生き生きとできます。
欲を言えば、後半の話の盛り上がりがもう少しあってもよいのでは、と感じました。せっかく魅力的なキャラクターがそろっているので、もう少しからみがあったほうが良いのでは・・・。たとえば、武家と町方の和算勝負がもうちょっとあったら・・・。
でも、総評として、読後感がさわやかで、すてきな本です。
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「天地明察」のず~っと子供向け版。でもこの「算法少女」の題名が200年も前につけられたとはビックリ。桃三さんのセンスに拍手。